交渉じゃなくて脅迫なんだ。
「さて、後は報酬受け取って終わりだな」
ゴブリン討伐を終え、全員の息が整った所でリゼルはレシア達の元へ戻りながら呟いた。
「報酬渡してくれますかね?」
ヒイロが言葉を返した。リゼルの活躍からすっかり敬語になってしまっているがお互い気にしない。なんなら誰も気にしない。気になるのはこの後の事だけ。
「それは問題ない。そっちはそっちで手を打ってあるからな」
「そうなんですか?」
「というわけでレシア、手筈通りよろしく。1時間後ね」
「リゼルは?」
「俺はちょっとこいつに用事があるから」
「わかった。じゃあ後で」
イレギュラーはあったものの、2人は事前にこの状況を予想しており手を打っていたという。指示を受けたレシアは鎌をキューブ体へ戻し、先に1人で国のほうへ戻って行った。
残ったリゼルは、治療を終えた髭男に近寄る。尻餅をつき、未だに脅えているその様はとてもギルド1番の冒険者とは思えない。惨めにすら見えるその男もリゼルはしっかり利用する。
「おっさん、元気?」
「げ、元気なわけねーだろ! お、俺は腕を吹き飛ばされてんだぞ!」
「元気そうで良かった。じゃあ早速本題な」
「聞けよ!!」
二の腕から下が綺麗に無くなった右腕を見せながら髭男が叫ぶが、そこまで騒げるなら元気だろうと、リゼルは気にせず話を続ける。
「俺らこの後ゴブリン討伐の報酬貰いに行くんだけど、おっさんも一緒に来て、俺らがゴブリン倒したって証言してくれよ」
「しょ、証言? なんだそんなことを......」
「あれはギルドが出した依頼だろ? あんたらとグルで。だったら報酬をちょろまかす可能性もあるし、逆にあんたがこっちにつけば後押しにはなるだろ?」
「だ、だったとして、俺がお前らに着く理由はねぇだろ! なんでこの俺が! お前の言うことを聞かなきゃ行けねぇんだ!!」
「怪我治してもらったじゃん」
「関係ねぇ!」
「あっそ」
プライドなのかなんなのか、先程までゴブリン相手にビビり散らかしていた様子は何処へ今までの通りの態度を張り出した。それも今になっては虚勢ていどにしかみえないが。ヒイロ達すらビビらない。
ただそれで反抗されると話が進まないので、リゼルは軽く指を振るい、小さな氷柱の出現させ髭男の太腿に突き刺した。
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
「シスター治してあげて」
「あの、もう魔力が残ってません」
「じゃいいや。俺が治すよ」
絶叫する髭男を横目にシスターに今つけた怪我を治すように頼むリゼル。だが、シスターの方は髭男の治療に魔力を使いすぎたらしく余力がないとのこと。しょうがないとリゼルが治癒魔法をかけるとこに。
「おっさん、勘違いしてるみたいだけど、これは交渉じゃなくて脅迫なんだ。あんたにメリットなんか当然ない。なんなら生きてるだけ儲けものだ」
少し前に髭男の仲間に言われたことをそのまま言葉にして返す。今まで散々初心者に行ってきた行為が自分へと帰ってくる。因果応報とまでは言わないが、これは髭男達の言葉を借りるならば、奪われる側が悪いというものだろう。
「あんたの選択肢はどっちかだ。ここで死ぬか、俺らにつくか。悪いがタイムリミットがあるからゆっくり待つつもりはないぞ」
仲間全員が死んでしまい、精神的にも余裕がない部分もあるかもしれない。だがそれは髭男の問題で、冒険者ならば当然の自己責任で、この事件を引き起こした要因だとするならただの自業自得なのだ。リゼルには関係ない。同情はせれどそれを理由に引くつもりは毛頭なかった。
諦めたかのようにこくりと頷き頷いた髭男を見て、リゼルは微笑みながら立ち上がった。
「よろしい。じゃ行こうか」
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髭男との話もつけて、リゼル達はゴブリン討伐の依頼は報酬を受け取りにギルドまで戻ってきていた。
「という訳で、依頼完了したんで報酬ください。死体も残ってるんで気になるんだったらどうぞ。串刺しだからわかりやすいと思うんで」
リゼルの発言に職員の人は目を見開いた。受付だけではない。ギルドの他の従業員やその場にいた冒険者が驚いていた。行きより人数が少ない事と、髭男が腕が欠損している事も衝撃度合いを増している要因だろう。職員の視線が髭男に向いていることに気づいたリゼルは付け加える。
「こっちにも被害が出てな。まあ、冒険者は自己責任だろ? 気にすんな」
「そ、そうですか......」
信じられないのか職員が確かめるように視線を送るが、髭男が諦めたかのようなリアクションを返した。
「それより、報酬を頼むわ。用意してあるだろ?」
「えっと、その、少々お待ちください」
「なるはやでね」
未だ受け入れられてないようで、上司と話すため奥へと逃げるように戻った。それから少ししてジャラジャラと硬貨が擦れる音を鳴らしながら布袋を持ってきた。
「ど、どうぞ」
「......これ、硬貨違くない? 間違えちゃった感じ?」
「え、あ、申し訳ございません。すぐに取り換えます」
差し出された布袋を下から支えるように持ち、中身を確かめると、入っていたのは銅貨20枚。依頼用紙に書かれていた額と違っていた。一応見た目は魔法で銀貨のように見せているが、リゼルの目は誤魔化せない。依頼完了時の対策でどんな手を打ってくるのかと思えば、中身の硬貨を入れ替え魔法で誤魔化すという雑な方法にリゼルは呆れながら布袋を突き返した。
更に数分して、再び布袋を持ってきた職員。渋そうな顔をしながら渡し、リゼルは同じ方法で即座に中身を確認する。今度はしっかり銀貨40枚で正しい金額のようで、リゼルは満足したように「ありがとね」と踵を返した。
「じゃ、俺は行くわ。ビビり勇者、後はお前次第だからな」
去り際、そんなことを残しながらリゼルはギルドを後にする。他の冒険者達が後を追うようにギルドを出たが既にそこにリゼルの姿はなかった。




