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旅する彼女に一目惚れしたので俺も一緒に旅します。  作者: 論です
冒険者パーティーを組もう!
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ゴブリン討伐。

ゴブリン退治だ!

 デジャヴ。森林の国で見飽きたこの展開はもういいだろう。銃で撃ち抜かれたリゼルは平然と立ち上がり、氷の魔法でヒイロへ放たれた銃弾を止めていた。


「リゼル、もう大丈夫なの?」

「当たり所が良かったからね。脳か心臓だったら即死だったけど。やぁ、良かった良かった」


 不安そうに聞くレシアに傷の塞がった腹と縫い直した衣服を見せ、大丈夫だと伝え手を伸ばした。態度が軽いせいか不安は拭い切れないが、納得はしたようにレシアは手を取って立ち上がる。


「あの、大丈夫なのですか? というかなんで大丈夫なんですか? あの怪我、とても私の治癒魔法で治るような怪我ではなかったと思いますが」

「言っただろ? 当たり所が良かったからって」

「意味がわかりませんよ! ......もしかして貴方」

「何か思ってもそこは言わないでくれると助かる。なんなら俺よりそこの髭のおっさんの怪我治してやってくれ。こいつにはまだ聞くことが沢山あるからな。とりあえず止血だけでもいい」


 リゼルに関して何か気づいたらしいシスターに、リゼルは言われる前に口止めし、髭男の治癒をするよう頼む。そして体はゴブリン達に向けたまま、視線だけ後ろで未だ緊張感が抜けず剣を構えたままのヒイロに言葉をかける。


「おいビビり勇者ヒイロ」

「はい!」

「お前、カッコつけて剣なんか構えてたけど、どうにかなると思ってたのか? どうにか出来るって方法でも考えてたのか?」

「え、いや、何も......」

「馬鹿かよ。ゴブリンとはいえ銃持ち相手に剣構えても、動く前に撃たれるか動いてる時に撃たれるかのどっかだろ。自分が死んだら意味ないんだからそこら辺もよく考えろ」

「あ、はい......」


 リゼル、まさかの説教をする。勇気を持って立ち向かった相手に、レシアを含め仲間を守るために立った勇者に対して、冷静に正論で説教をした。された側のヒイロも勢いに負け思わず敬語で反応している。


「勇者精神は認める。そこはカッケーよ。ただ漠然と無謀な行動を取るなって事だ。わかるよな?」

「......っはい!」


 説教とは言いつつも、彼が叱ったのは、命大事に、の話。リゼルから伝えられた言葉の意味を理解したヒイロは力強く頷いた。


「よろしい。さてと......」


 ヒイロの返事を聞き一区切り。リゼルは視線をゴブリン達へ戻し、軽く息を吐く。その瞬間、ゴブリンキングは僅かに後退り、他のゴブリンは銃口を持つ手を震わせた。


「凄い魔力量......」


 髭男の傷を治しながらシスターが呟く。

 そう、ゴブリン達が恐怖していたのは、銃で撃ち抜いた人間が当然のように起き上がったことではない。彼から溢れ出る膨大な魔力に脅えていたのだ。


「色々気になることはあるけど、まずは......」


 リゼルが一歩前へ出ると、ゴブリンキングが銃を撃てと焦りながら指示を出した。先程までの拙い人間の言葉ではなく、ゴブリン特有の魔物の言語で、余裕のない切羽詰まった様子で。その指示に応えるようにゴブリン達が慌てて銃口を向けて引き金を引く。よりも速く、リゼルが氷の魔法を使い、銃の内部を凍結させた。

 銃が撃てなくなり、動揺し、弾詰まりを確かめるように乱暴に銃を扱うゴブリン達にゆっくりと近づきながらリゼルは言った。


「ゴブリン退治だな」


-------------------------


 ゴブリン達は銃の構造を知らない。そのため何故撃てなくなったが理解出来なかった。ただそれでも、目の前からゆっくりと近づいてくる恐怖の塊に対抗すべく、ゴブリンらしい木の棍棒を手に取った。


「レシアと、ビビり勇者とその仲間たち。動けるか?動けるならちっこいゴブリンの方を頼む。あのデカイのは俺がやる」

「はい!」

「後衛や魔法使いは準備だけ済ましておけ。まだ銃を隠し持ってるかもしれないから、それが見えた瞬間にそれを撃ち落とせるように。仲間は撃つなよ。シスターはおっさんの傷だけ治してろ他は助からん。レシア達が傷ついたらそっちの治療優先」

「わかりました!」


 全体へ指示を出すリゼル。あまりの指示の的確さにパーティーが違うにも関わらず、呼ばれはメンバーはリゼルをリーダーかのように返事をし、指示通りに動いていた。


「リゼル......」

「どうしたレシア。出来れば手短に」

「えっと、ごめん。後でいい」

「おけ。じゃ、レシアは気をつけて」

「うん、リゼルも」


 何か言いたそうにするも、後でいいと言葉を濁したレシア。何を考えているのかと後ろ姿を追ってみれば、彼女が手に取った黒いキューブが魔力の流れと共に形を変えた。


「いや、鎌はかっけぇって!!」


 機械仕掛けの変形と、その末の変化が漆黒の大鎌となって白髪の少女の手に収まる光景に、リゼルは思わず叫んだ。その大きな声に全員がびくりと飯能市、視線が集まる。ゴブリン達すら驚いていて動きを止めるほど。


「リゼル、これの事知ってたんじゃないの?」

「知ってたけど、変形する術式が組み込まれてるのは見えてたけど! その変形と鎌は流石にかっこよすぎるよ!」

「そう? ありがとう」

「うん、叫んだからもういいよ続けて」


 変形武器は多くの男性が好きな要素の1つだろう。エディオに開拓されたこともあり、魔法尽くしだったリゼルも一般的な男子の少年心は持ち合わせている。そのためレシアの持つ魔道具による変形には、元からわかっていた事だとしても、初見で見た瞬間に盛り上がってしまったのだ。今の状況と周りの視線から何とか興奮を抑え、改めて指示の通り動くよう頼む。全員の緊張が抜けたという意味では良いリアクションだったかもしれない。


(終わったら後でちょっと貸してもらお)


 僅かに胸の奥で残っている興奮を感じつつ、リゼルは冷静に魔力を整えゴブリンキングの元へ歩み近寄る。


「ごめんちょっと待って。可愛いかあの子のかっこいい姿眺めてていい? 十分でいいからさ」


 そんなことを口にしてリゼルは、ゴブリンキングの前で足を止め振り返った。長い白髪と黒いマントをなびかせながら素早い動きで戦場を駆け抜け、ゴブリン達を切り倒していくその様はリゼルの心を強く打ち付けた。


「レシアさん、カッコよすぎるって。惚れてまうやろ。まあもう惚れてるんですけど」


 ゴブリンキングは、人語の理解はできる。だがその言葉の意図まで分からない。なので、当たり前のように話しかけてきては謎の行動を取るリゼルには困惑しっぱなしだった。異常な魔力量を初めとして、ゴブリンキングは目の前の男から感じる恐怖を拭えなかった。


「グアァァァ!!!」


 恐怖を振り切るようにゴブリンキングは巨大な木の棍棒を振るう。横薙ぎに払われた攻撃をリゼルは視線を僅かに向け、身を屈めて回避する。


「今いい所だから邪魔すんなよ」


 不愉快そうに口にするリゼル。ゴブリンキングの困惑は更に強まり、今度は棍棒を両手で持ち、彼に向けて勢いよく振り下ろした。だが、その攻撃も数歩動いただけで避けられてしまう。それどころか、リゼルは地面に叩きつけられた棍棒を足で踏み砕いた。


「邪魔すんなってたのにな......まあいいや。面倒臭いしさっさと終わらせるか」


 静かに呟いたリゼルは軽く跳躍し、左脚でゴブリンキングを蹴り飛ばした。自身よりも二回り近く大きく重いゴブリンキングの、その首を折りそうな勢いで蹴り飛ばした。かと思えば、今度は右側の()()()()()から岩の丸太が生え出してゴブリンキングの顔を押し飛ばす。そして最後に下からゴブリンキングの巨体を浮かせる程の強烈なアッパーを浴びせKO。勝利のゴングが鳴り響いたようなだった。


「はい、おつかれおつかれ」

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