事の顛末。
事の顛末をを話そう。
まず、この森林の国フォレストでは最も美しい女性が代々森林王フォラスタを奉仕する、巫女を役職がある。国の職業の中でも特に給料や待遇が良い、簡単に言えば勝ち組の役職である。ただし、巫女となった場合、その生涯をフォラスタへの奉仕に捧げるため国の外へ出る事が不可能となる制約がある。
そこで彼女、フランワだ。彼女は巫女を決める選抜試験で次代の巫女となるのが確定していた次期巫女である。フランワ自身も巫女になる覚悟はとうに決まっていた。けれど同時に、彼女は国の外にも興味を示す好奇心旺盛な娘でもあった。そのためフランワは巫女になって外に出れなくなってしまうその前に、色んな国を旅して回ろうと、国の外へ出た。ここまでは何も問題ない。彼女が国を出たのが5年前で、巫女になるのは6年後。その前には帰ってくるという予定で、事実、数日前には国の近くまで辿り着いていた。予定通りなら何も問題はなかったのだ。予定通りなら。
3年前、当時巫女だった者が病で倒れた。旅人が持ってきた流行病である。閉鎖された幻の国では治療法や特攻薬もない厄介な病ではだったが、それ自体はフォラスタの力により、すぐに治療し完治できた。
問題はここからだ。この時の治療に使ったフォラスタの力が想定よりも大きく消耗してしまった。本来ならこの力も巫女の奉仕により回復するのだが、巫女の力は歳を重ねるごとに弱っていく。代替わりの必要がある理由の8割はこれだ。 当時の巫女は代替わり前のという事もあり、奉仕しても消耗したフォラスタの力を戻すことが出来なかった。
ちなみにだが、フォラスタは国の維持と運営のために常に力を消耗している。巫女とその奉仕がなければ、フォラスタ自体が死ぬことはなくとも、この森林の国の維持は叶わず、1ヶ月もあれば国が崩壊、消滅するだろう。それを防ぐための巫女なのである。
話を戻そう。病にかかった巫女はフォラスタの力により復帰したが、当時の巫女の奉仕で取り戻した力では国の存在こそ保たれたが、今までのような緑豊かな国としての維持は不可能だった。故に荒れ廃れた。国の自然腐り朽ちて行った。同時にフォラスタの気も荒れた。
新たな巫女が必要だとフォラスタは提言するが、次期巫女と予定されていたフランワはちょうど国を出てしまっていた。アレルや当時の巫女はその事を聞いていたが、フォラスタは聞いていなかった。その事でフォラスタはヒステリック気味になり、国を閉ざしてしまった。元から幻の国として極稀にしか観測されない国であったが、幻の国の住人は外に出ても、自国を直感的に見つけることが出来る。だがフォラスタのヒステリックにより、近くまで戻ってきていたフランワは国を見つけることが出来なかったのだ。そして、レシアをフランワと勘違いしたフォラスタが彼女らを国へ招き入れ、今回の事件が起きたのである。
要するに......。
「コミュニケーション不足によるただの食い違いじゃねぇか!」
リゼルは叫びながらアレルの頭とフォラスタの根元をハリセンで叩いた。それはそう。
「フォラスタ様は元より特別な状況や祭典がなければ巫女以外の前には現れないんです。だから......」
「じゃあ巫女に伝えさせろよ! 当時の巫女に『次の巫女は旅に出て、そのうち帰ってくると思うのでそれまで我慢してください』って伝えさせろよ!」
「あ」
「あ、じゃねぇよ!!」
パシーンとはたかれる音が響き渡る。それも2回。
アレルは、痛そうに頭をさすりながらリゼルへ謝罪を述べた。
「今回の件は本当にすみませんでした。リゼルさんの言う通り、しっかり情報の共有をしていれば、少なくともリゼルさんやレシアさんに迷惑をかけることもなかったと思います。本当にすみませんでした!」
「......確かに俺も迷惑被った側だが、俺の方はまだいい。怪我も治ってるし、やられた分......の3分の1くらいはやり返したからな」
「我悪くないもん」
「何がもんだ。可愛くねぇんだよ、ぶっ飛ばすぞ」
言いながらリゼルがチラリと視線を向ければ、フォラスタは不貞腐れたように頬を膨らませていた。根元が埋まった全身真っ白の全裸のおっさんが何をしているか。リゼルの言う通り、可愛くないし殴りたくなるのも確かだ。横でフォラスタを宥めるフランワが居なければ、リゼルも殴っていたかもしれない。いや確実に殴っていただろう。
「とにかく、俺よりレシアだ。レシアなんか完全に囚われのヒロインのまま勝手に話が進んで終わってるからな。ちゃんと謝っとけよ」
「はい」
アレルの謝罪をしっかりと聞いたリゼルは、とりあえず自分よりレシアだと、彼女にも謝罪を促す。言われるまでもないか、アレルはレシアの方に向き直り、深く頭を下げた。
「レシアさん、今回は我々の不手際でレシアさんにご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありませでした!」
「私は、なんともないから大丈夫。怪我もしてない」
「っ、ありがとうございます。本当に、すみませんでした!」
レシアの優しさにあてられたか、アレルは深く深く頭を下げ、謝罪を重ねた。その様子を見届けたリゼルは「まあいいか」と納得したように頷いた。
「フランワさんは、これから巫女として働くのか?」
「働くという言い方は少し違うような気もしますが〜、そうですね〜。フォラスタ様の元で、巫女として国の復興に助力することになると思います〜」
「そうか」
「頑張って!」
「レシアちゃん達も、良い旅を〜」
「出国は明日だけどな」
フランワともやり取りを終えリゼル達は宿へ戻るため歩き出した。トロッコに乗っている間、リゼルは終始「疲れた」と鬱陶しいほど呟いていたが、ふと何かを思い出したかのようにアレルへと向き直り問いを投げる。
「そういえばアレル。お前、なんでフランワさんが来たってわかったんだ?」
「え?」
「俺とフォラスタが戦ってた時、お前その場を離れて、次現れた時にはフランワさん連れてきてただろ? 来てるってわかってなきゃ出来ない行動だろうし、どうしてかなって思ったんだよ」
「ああ、そういう事ですか」
質問の意味を理解したアレルは少し恥しそうにしながら答えた。
「僕、実は鼻がいいんですよ。それで、フランワの匂いは何年越しにでも、国の外でも何となくわかって......」
「なるほどな......」
「はい」
そこまで照れられると聞いた側も恥ずかしくなる。アレルは顔を赤くしながら笑って誤魔化した。
ちなみに、アレルとフランワは昔からの幼馴染であり、元々巫女になる気がなかった彼女をその気にさせたのも、代替わりする前に国の外を旅してみたいという彼女の気持ちを後押ししたのも彼である。どちらか一方ではなく、どちらの意志も尊重できるのは彼の良い所だろうか。
フランワが巫女になっても、彼女を1人の友人として、女性として扱うのは彼くらいで、彼女を守っていくのも彼であろう。そして、この後夜が更けるまで旅の話を聞かされるのもまた、彼の役目だろう。
読者に妄想させるためにネタを提供しときますと、アレルって元々案内役なんて役職じゃなかったんですよ。




