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得体の知れない。

 血を流し倒れる青年を前に呆然と立ち尽くす国の案内人アレルは絶望した。国を復興させるためとはいえ、外から来た旅人を巻き込む事を厭わないとした国主の考え。それを止めようと自らも旅人を巻き込んだにも関わらず、自身は何も出来ずただ旅人を傷つけるだけに終わった。その現実にアレルは酷く絶望していた。


「アレルよ。これ以上我の機嫌を損ねぬ内に、その男を連れて去れ。これは警告だ」


 彼の気を知ってか否かフォラスタは厳しい声色のまま、植物の刃を向け警告した。だが、その警告がアレルの耳に届かなかった。


「リゼルさん......すみませんでした」


 アレルは倒れる青年の名を呼びながら頭を下げた。


「僕が愚かで、未熟で、あなたを巻き込んでしまった。傷つけてしまった。本当に、すみません......!」


 動くはずのない体を揺さぶりながら、帰ってくるはずのないその名を呼びながら、頭を下げ謝罪を述べる。


「本当はわかってたんです。あなた達がこの国に来た時、レシアさんを見てフォラスタ様が、レシアさんを巫女にするつもりだってわかってたんです。でも、国のためだと思って知らないフリをしました。本当にすみませんでした!」

「やっぱお前知ってたのか」


 アレルが独白を漏らした時、目の前で倒れているはずの青年から言葉が帰ってきた。


「別に知ってたのはいいけど、普通そういうのってここ来る前に言わね?」

「え」


 間の抜けた顔と声のアレルを無視して青年は睨みながらグチグチと文句を言う。


「ボコられたの見てから謝罪するんじゃなくて、事が起きる前に事前に謝っとけよ。何? それともお前この件何事もなく終わってたら黙っとくつもりだったの? それだったらこっちから問い詰めるけどさ」

「え、え......」

「お前さ、礼儀と気の使い方間違えてんだよ。国の外でないからそういうのわかんな......いや、それは俺にも刺さるな。今のカットで」

「え、なんで......」

「あとお前、謝るなら俺だけじゃなくてレシアにも謝れな? 俺は反逆者で筋通るけどレシアはシンプルに被害者だから巻き込んだ自覚あるならちゃんと謝れな?」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「うるせぇ! 耳元で叫ぶな!」

「痛いっ!」


 噛み合わない会話を断ち切るようにアレルが声を張れば、目の前で会話をしていたリゼルがうるさいとハリセンで叩く。叩かれたアレルは痛そうに涙を浮かべながらリゼルに


「リゼルさん、なんで生きてるんですか?!」

「何言ってんだ? あの森林王だって手当すれば助かる傷だって言ってただろ?」

「いや、手当してないじゃないですか」

「お前が遅いから俺が自分で治したんだよ」

「なんで治せるんですか!?」


 服に空いた穴から見える肌は傷一つ着いていなかった。まるで何事もなかったかのように傷穴は塞がっていた。「なんで?」と漏らしながらまじまじと見つめるアレルに手刀を叩き込み、リゼルは服の傷をも塞ぎながら立ち上がる。


「リゼル、大丈夫なの?」

「大丈夫だよレシア。今からそこの森林王サマぶっ飛ばして助けるからちょっと待ってて」

「うん、わかった」

「わかったではない!」


 遮るようにフォラスタは叫ぶ。レシアとの会話を楽しんでいたところを邪魔されリゼルは不満そうな顔をするが今は無視。フォラスタは、リゼルの方へ向き直る。


「...... 貴様は一体、なんなのだ......」


 フォラスタは訳が分からないと言葉を吐く。得体の知れないもの見るようなその表情は、明らかに不快感を募らせていた。


「旅歴1ヶ月未満の旅人初心者だよ」

「違う! そういう意味ではない! 傷を治したその能力、異常な魔力量! それを説明しろと言っている!」

「さぁ? お前が見て勝手に判断してくれ」


 リゼルのふざけた回答にフォラスタは声を荒らげる。未だに血の滴らせる植物の刃を向けて、リゼルを睨む。


「答える気がないならもういい」

「真面目に答える必要性がないんで」

「例え貴様が異質な力を持っていようと、我には関係ない。貴様を黙らせるまでだ」

「答えて欲しいのか黙って欲しいのかどっちだよ」

「やかましい! 覚悟しろ。我に反逆せし愚かな旅人余。次はただでは済まさぬぞ!」

「じゃあ、そうなる前に......」


 向かってくる植物の刃を機敏に躱しながらリゼルは呟いた。


「そこの案内人にしっかり説得してもらおうかな」


 期待を込めた視線を向けて。

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