違和感。
森と言うだけあってどこを見渡しても木々に覆われていた。けれど、それはあくまで地上での話。上まで覆われてはいない。陽の光は確かに彼らの元へ届いており、レシアが提案した進み方が上手く噛み合っていた。そのため三人は日が暮れるまで森の中を進むことが出来ていた。
「今日はここまでにしよう」
「そうですね〜。いっぱい歩いてくたびれました〜」
太陽が沈み夜の闇が空を染めた頃、レシアが今日の探索はここまでと提案する。それを肯定したフランワも近くの岩に腰を下ろし、疲れたと足をパタつかせる。そんな彼女らを横に青年は観察するように辺りを見渡していた。
「リゼルもいい?」
「......」
「リゼル?」
「ん? 何?」
「今日はここで野宿するから......」
「ああ、わかった。手伝うよ」
「うん」
レシアに声をかけられリゼルは我に返ったかのように返事をする。野宿の準備を手伝うと口にはしたが、彼の意識は自分達を囲う森の方にあった。
「フランワさんは、巫女? なの? なんで旅をしているの?」
「正式にはまだだけどね〜。巫女になると外に出る機会がなくなっちゃうから、その前に色んな国を回って見たかったの〜」
「そうなんだ」
夕食を取り終え、今は寝袋に入って就寝の準備をしている。女子二人。お互い今日初めてあったとは思えないほど打ち解けており、それぞれの身の上話で盛り上がっていた。それぞれと言っても主に話しているのはフランワだが。
「レシアちゃんは、なんで旅を続けてるの〜?」
「それは......」
「言い難い〜?」
「......うん」
「そっか〜。じゃあ旅を始めたのはどうして〜?」
「始めた訳じゃない。私は気づいた時から旅をしていた」
「なんか複雑そうだね〜」
「そう、かも......」
フランワの質問にレシアは答えにくそうに返す。決して出会って日の浅いフランワを信用していないわけでないが、レシアには答えづらい理由があった。それを何となく察したフランワは微笑みながら話題を変える。
「じゃあ別の質問ね〜。レシアちゃんは、リゼル君の事どう思ってるの〜?」
「リゼル? うーん、えっと......」
「あ、あれ〜?」
こちらは答えにくいと言うより、単純に答えに迷っているようだった。なんと答えるべきかわからないようだった。悲しいことに。
男子禁制とまでは言われていないが中々この空気に入りにくい思春期男子リゼルは、時々中から漏れてくる声に気になりながらも大人しく見張りを続けていた。と言うより、見張りを続けざるを得なかった。
(不気味だな......)
違和感。見た感じや雰囲気はただの深緑多い森でしかないが、リゼルは何か、不気味な違和感を覚えていた。
(何か起こる前に、さっさとこの森抜けたいな......)
「リゼル、いる?」
「いる......よ......」
そんなことを考えながらため息を吐いていると、女子会が終わったのか拠点からレシアがひょっこり顔を出した。その様子ですら目に焼き付けたいと思うほど可愛いとリゼルは思った。目のやり場に困る薄着で直視はできていないが。
誤魔化すように出てきた理由を聞けば話し相手が寝たからとの報告だった。
「あー、どうしたの?」
「フランワさん、寝たから」
「あぁ、見張りの交代? 俺はまだいいよ」
「明日も歩くと思うから休んだ方がいい」
「それはそうなんだけどね。少し考え事してるから俺はまだいいよ」
「考え事? 何考えてるの?」
見張りの交代を断ったリゼルの横に腰をかけ、何を考えているのかと聞くレシア。距離が近いと半歩離れながらリゼルは違和感のことを話そうか悩んだ。
「どうやったらレシアに振り向いてもらえるか考えてた」
「? 私は、リゼルに振り向いてないの?」
「振り向いてるの?!」
「違うの?」
「あー......はい。そうですね......」
レシアの返答に期待したが彼女の反応的に話が噛み合ってないだけだとリゼルは苦笑しながら落胆する。そもそも本音を隠すために振った話題で感情を振り回される方もなのだが。
(それでもまあ、余計な不安作るよりはいいだろ)
フラれることを想定していたわけではないが、リゼルとしても自身の違和感程度で彼女達を心配させるよりはマシだと、本音を伏せることを選んだ。




