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彼女との出会い。

 突然だが、リゼル・ヴァリスは天才である。

 赤毛混じりの茶髪に炎を連想させる真紅の瞳。その容姿は同年代の女子から多大な人気を引き、

 勉学、魔法、その他諸々で学園上位の成績を誇る天才である。同世代で彼レベルの存在は居ないとまで称されるほどの天才である。

 腹立たしい程に恵まれたリゼルは今という日々に飽き飽きしていた。


「はぁ......つまんね。退屈だぁ......」


 リゼルは天才であるがため、何をして卒なくこなしてしてしまう。故にその当たり前の日々は彼にとって退屈でしかない。


「日常にない刺激が欲しい」


 そう望むリゼルはまた当たり前の如く、学生としての一日を終え、いつもの所へと歩みを進めていた。


------------------------


「やっぱここだよな」


 リゼルがやってきたのは退屈な日常の中で唯一、退屈じゃないと思える場所......小さな公園である。


 リゼルは天気のいい日なら毎日ここに来る。何なら天気の悪い日でもたまに来る。そのくらい好きな場所である。天才には少し似合わないとも思えるこの場所をリゼルは何故好むか、その理由は単純なものである。


「景色がいい」


 ただそれだけである。それだけでいい。


「よいしょっと」


 近くのベンチに腰を下ろしたリゼルは、来る途中で購入したパンの入った紙袋を開け、一つ口の中へと放り込む。


「うん、美味い。最高だな」


 春前でありながら満開に咲いた桜が風に吹かれて鮮やかに舞う。その景色を見て食べるパンは絶品である。パン自体が絶品というのもあるが。耳を澄ませば聞こえてくる小鳥達のさえずりがまたいい。なんとなく落ち着く。

 そう思い耽ているうちに紙袋の中は空となっていた。


「そろそろ帰るか」


 ある程度時間が経ち、目の前の景色に満足したリゼルが立ち上がろうとしたその時だった。彼女と出会ったのは。

 

 雪のような真っ白で長い髪に透き通った碧い瞳。

その美しさは開いた口が塞がらなくなるほど。

辛うじて出た言葉は名を問うものだった。


「......君は?」


 突然、隣にいた知らない奴から声を掛けられれば誰だって不安がるものだろう。それが普通なのだから。不審者と叫ばれてもおかしくないとリゼル本人も思った。けれど少女は、不振がる素振りも見せず、ただ、リゼルの方を向き呟いた。


「私はレシア......レシア・フォーノ」

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