選択の結果。
完全に昼夜逆転した論です。このままではまずい......
「リゼル、今回の旅は楽しかった?」
「前半は面倒事で大変だったし、レシアと一緒にいれない時間もあったで不満だったけど、まあ楽しかったかな」
「そう、なら良かった」
旅を楽しめたというリゼルの感想を聞きレシアは嬉しそうに微笑む。
約十日間、旅を満喫したリゼルとレシアは魔法使いの国を去ることにした。今は馬車が出発するまでの待機時間、二人はこの国での思い出に浸っている。
「......最後にソロン達に会いたかったね」
ふいにレシアが呟く。依頼を終えたあの日以来、ソロンとは一度しか会っていない。それもソロンの方から改めてお礼がしたいと言われ、軽く食事を摂っただけ。互いの事情はあれど国にいる間はもう少し一緒にいる時間があっても良かったとレシアは思っていた。
「まあ、俺ら目線でソロンを見る分にはいい事だと思うよ」
「どういう意味?」
寂しそうな表情を浮かべるレシアに気を使ってか、馬車から街を眺めるリゼルは言葉を返す。
「時間帯はわかんないけど、俺らと会えないって事は多分今のソロンはそれなりに忙しいんだろうね。で、それは今まで受けてきた冷遇が変わってきたからだよ。正確には戻ってきてるかな?」
「えっと......どういうこと?」
「つまり、また魔法が使えるようになったから、魔法を使えなくなる前と同じ生活を送れてるって事」
「そう、なの?」
「そうだよ。多分」
「......そっか」
まだよく理解出来てないのか、それとも別の理由か少し暗そうな雰囲気でレシアは相槌を打った。その様子が気になり、どうしたのかとリゼルが問えば、彼女は不安げにぽつりと言葉を漏らした。
「今のソロンの生活が元通りになったなら、私達が何かする必要もなかったのかな?」
「レシア、それは結果論だよ」
「......じゃあ、リゼルはどう思うの?」
「さぁ? どうだろうね」
「リゼルも、わからない?」
小首を傾げて見つめるレシアの仕草に「かわいい」と思わず本音を漏らしつつ、冷静に彼女の言葉について考える。
ソロンが不幸な目にあっていたのは原因は国の悪ガキ達のいじめであり、それを解決したからにはレシア達、少なくともリゼルの行動は意味があっただろう。だが、ソロンの待遇とその対応については、言ってしまえばリゼル達が何かをする必要はなかったかもしれない。本当に辛いのであればこの国を抜け出し他の国に行くという手もあった。逃げるという選択もあった。
(諸悪は間違いなくあの三馬鹿のいじめだ。けど、ソロンが苦しんだのはこの国の環境が理由なのも間違いじゃない)
苦しむくらいなら、別に逃げてもいいだろう。それは間違いじゃないはずだ。自分がそうだったからか、リゼルはそう思っていた。
(でもソロンは逃げなかった。逃げなかったから、失っていた日常を取り戻すことが出来た。魔法が使えなくなる前と同じ日常を取り戻した)
少し遠く、リゼルの視界が僅かに捉えたそこには、二人の少年少女が仲良く並び飛行している姿があった。
(前よりも、か......)
その様子にリゼルは納得したように微笑んだ。
「俺は未来視持ちじゃないからね。その時最善だと思った合理的行動を取ってるだけ。もしかしたらの話は結果論でしかない。だから本当は何が正しかったかなんて、俺にもわからないよ」
「そっか......」
残念そうに顔を伏せるレシアを横目に「でもまあ」とリゼルは言葉付け足した。
「餓死しかけてたバカ一人を救えたのは、レシアの選択の結果だよ」
「うん、そうだね」
確かにソロンはこの国の環境に苦しめられただろう。それでも今のソロンは、この国で笑っていた。




