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少し眩しい。

「リゼル、どうしたの?」


 リゼルを追いかけるレシアが聞いた。その声にリゼルは足を止め振り返り、彼女に「どこか座ろうか」と近くのベンチに腰を下ろした。途中の売店で購入したパンを齧りながら横目でリゼルを見るレシア。その表情はどこか悲しげだった。


「そんな見つめてどうした? 惚れた?」


 視線に気づいたリゼルは、顔で許された口説き言葉を口にしながらレシアの方を向く。対するレシアは何を言ってるのか分からないと言った様子で首を傾げ、自分の疑問だけを再び聞いた。


「リゼル、どうしたの?」

「何が?」

「急に、ソロン達から逃げたからどうしたの?」

「別に逃げたわけじゃないんだけど......いやある意味では逃げたかも......まあちょっとね」


 リゼルは決して、ソロンの言い分に対して言葉を返せなくなった訳ではない。不貞腐れて逃げた訳でもない。ただ、リゼルには、今のソロンは眩しすぎた。


「俺とソロンは違うんだなぁって、ソロンは素直だなぁって思っただけだよ」


 リゼルは考えた。もし自分がソロンの立場だったら? 同じようないじめを受けていたら? 彼のように折れずに居られるだろうか、立ち直れるだろうか、彼のように向き合えただろうか、自らに問うその疑問に力強く頷ける自信がリゼルにはなかった。事実、リゼルは()()()()()()


「俺って、ちょっとひねくれてるからさ。ソロンの真っ直ぐな瞳を正面から受け止められるほど、俺は真面目でも純粋でもないんだよ」


 リゼルの言う事は事実だが、それでも彼が悪いわけではない。強いて言うのなら、彼をそうした()()の問題なのだろう。彼は決してその事を口にすることはないが。


「......そう、なんだ......」


 リゼルの言葉を受け止めたレシアもまた、困ったように返した。彼女の表情を見て、やらかしたと心の中で漏らす。

 リゼルは一つ咳払いをし、彼女の機嫌を取るように言葉を選んだ。


「まあ、俺の自虐話なんぞより今はソロンすげぇって話だよね。本当に、あいつは眩しいくらいに真っ直ぐだよ」

「そうなの?」

「そりゃ、さりげなく援助されてたとはいえ、死ぬ寸前まで見捨てられたのに、それでも許してソロンの方から寄り添おうとするんだからな」


 他者が自分を見捨てても自分が他者に寄り添う。それは簡単に出来ることじゃない。酷い境遇を受けていたのなら尚更だろう。けれどソロンはその簡単じゃない事を簡単に選んだ。自分では出来ないだろうその事にリゼルはもはや尊敬すら感じている。


「ソロンは、凄いやつだよ」

「それ、ソロンに直接言わないの?」

「いいよ言わなくて。気恥しいし。それにソロンの依頼は終わったんだから、この後は俺らは旅人として楽しもうよ」


 レシアがパンを食べ終えるのを確認しながらリゼルは立ち上がり彼女の手を差し伸べる。


 『旅人として楽しむ』その言葉は嘘ではないだろう。だが、リゼルのその笑顔が、ただ純粋なものではないことはレシアも何となくながら理解出来た。


「そうだね」


 けれど彼女に、その笑顔の裏にある意味を問うつもり、考えるつもりもない。ただ自身の手を引く青年の言葉に応えるだけだった。

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