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プロローグ
前書きで書くか後書きで書くか悩んだので後書きにしました。
今でも忘れない。
その出会いは人生を変えるものだった。けれど、決して劇的なものでもなかった。
というか考えてみて欲しい。自分の妻や何十年もの付き合いがある友人、自分の人生を変えてくれた相手との出会いとは必ずしも非日常的なものだろうか、否、そうとは限らない。実際にあるかもしれないがそれは一握り程度だろう。大体は「学校のクラス替えでたまたま一緒のクラスになった」や「たまたま行った喫茶店で出会った」なんてものだろう。
彼もそうだ。この出会いはただの偶然だった。けれど、その偶然で彼の人生は変わった。
これは、人生を変えてくれた旅人に惚れた彼、リゼル・ヴァリスの、ただの旅物語である。