第3章誓い
白起が兵士達とにぎやかに話をしていると、恵子が入ってきた。
兵士達は明るく恵子を迎えようとしたが、兵士達は一様に静かになってしまった。
恵子の姿が大変美しく、見入ってしまったのである。
恵子は静かな雰囲気に少し不安になったのか、白起を目で探し、白起を見つけるとその元へゆっくりと歩いてきた。
「白起。ここに居たのね」
白起は恵子の美しさに思わず声が出なかった。
白起が呆然としていると、恵子が言った。
「どこか変かしら。個人的には良く出来たと思っているんだけど。」
白起は搾り出すように言った。
「いや。凄く綺麗だ。」
恵子は嬉しそうに言った。
「そう。それなら良かったわ。今日はあなたのために、頑張ったんだから。」
そして恵子は白起の腕に抱きついた。
恵子の周りには兵士達がよって来て、様々に祝福の言葉をかけた。
王齕が言った。
「本当に綺麗になりましたね。馬子にも衣装だ」
恵子が言った。
「何で来たの?あなたに祝われる覚えは無いんだけど」
王齕は言った。
「そんな事言わないでくださいよ。あんたは命の恩人なんですから。」
恵子は随分と調子の良いことを言うものだと思った。
だが、めでたい席であるし、わざわざ祝いに来てくれたのも事実であるから許すことにした。
すると魏冄が会場全体に聞こえる大きな声で言った。
「一回静かに。白起から恵子ちゃんに伝えたい事が有るらしい」
恵子は白起に促され、部屋の中に設置された壇上に上がった。
白起は恵子を真っ直ぐ見つめて言った。
「俺の人生にもし意味が有るとするならば、それはお前と出会えた事だろう。俺はお前と少しでも長く、一緒にいたいと強く願っている。恵子。俺と結婚してくれ。」
恵子は涙ぐんで言った。
「はい。喜んで」
白起が置かれている現状はここに居る全ての人間が分かっている。
貴族である魏冄と違い、王から死を言い渡される可能性もある。
彼らの未来は明るいとは言えない。
だからこそ、皆は可能な限り大きな声をあげて2人を祝った。
彼らに降りかかる災悪を少しでも払おうと考えたのである。
そのため2人を祝う声はなかなか収まらず、いつまでも部屋中に鳴り響いたのだった。




