第1章着替え
ある日、私と白起は、突然私達の家にやってきた馬車に乗せられて、魏冄の所領に連れて行かれた。
私は突然の事に驚いたが、白起は落ち着いていた。
恐らく白起はこれから何をするか知っているのだろう。
もしかしたら、この前、私に秘密と言っていた魏冄との相談内容が影響しているのかもしれない。
魏冄の屋敷に着くと私と白起は別々の場所に誘導された。
そして私は大きな鏡ばりの部屋に通された。
そこには、女性の使用人が10人程いて、私は彼女達に囲まれてしまった。
私が驚いていると、彼女達のうち、最も立場が高いと思われる女性が言った。
「恵子様ですね。それではお着替えを始めましょう。」
私は言った。
「着替えですか?」
女性は言った。
「はい。恵子様は本日の結婚式の主役ですから。」
私は詳しく事情を聞こうとしたが、彼女達は急いでいるらしく、私は慣れた手つきで服を脱がされた。
私は、多くの人に裸を見られて何だか恥ずかしくなった。
白起も白起だ。
結婚式をするなら事前に言って欲しかった。
もう少し、痩せたりとかこっちにも出来る準備が有ったのに。
私がそんな事を思っていると先程の女性が真紅の美しい衣装を持ってきた。
私は言った。
「凄く綺麗な服ですね。」
女性は言った。
「はい。本来、皇后様など、特に高貴な方がお召しになるものです。今回は魏冉様の紹介で特別に恵子様のために作って頂いたそうですよ。」
私は驚いた。
「そんなに良いものなんですか。」
女性は言った。
「はい。恐らくこの国で最高のものかと。なんでも白起様が、恵子様はこの世界で最も美しい女性だから服装もそれに見合うものを用意してくれとおっしゃったそうです。愛されていらっしゃいますね」
私はそれを聞いてため息をついた。
世界一の美人は私には文不相応だ。
このお姫様扱いも正直きつい。
しかし、白起にそこまで言われたのだ。
私が愛する人が私をそこまで評価してくれる以上、私もその期待に応えたいと思った。
そこで私は言った。
「素材はこれですが、せっかくの結婚式です。可能な限り、綺麗にしてください」
すると女性は言った。
「愉快な方ですね。安心して下さい。凄くおきれいですよ。それに私達は専門家です。出来る限りのことをして、恵子様を美しく着飾って見せましょう」
そして私の着替えが始まった。
まず、体にぴったりとした衣装を身につける。
その上から、何枚も重ね着をして、最後に先程の、真紅の衣装を羽織った。
さらに、髪の毛も上に束ねて上げ、簪のようなものでまとめた。
その後は、顔に化粧もしてもらった。
(予想以上に重い)
私は服装の大変さに驚いた。
私の着ている服装は十二単に似ていて、何重にも重ね着をするから、体が重かった。
やはりおしゃれは大変である。
すると女性が鏡を持ってきて私に見せてくれた。
「どうですか?凄くお綺麗でしょ」
私は現実世界に居た頃は仕事で忙しく、成人式に出ていない。
そのため、振袖を着たことが無く、晴れの舞台で正装をするのはこれが初めてだった。
鏡に映る私は自分で言うのもあれだが、凄く綺麗であり、本当に中国の姫になったようだった。
だから私は笑顔で言った。
「はい。ありがとうございます」
すると女性は顔をしかめた。
「恵子様は意外と姿勢が悪いですね。少し座り方と歩き方の練習をしますか」
やはり、美しさとは簡単ではない。
いくら綺麗に着飾っても、私が庶民生まれである事が現れてしまったのだろう。
私は女性の言葉に頷き、しばらく、服装の重さに耐えながら、動作についての指南を受けたのだった。




