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第4章晩酌

ある日の夜。

私は白起に言った。

「良いお酒が手に入ったの。一緒に飲まない?」


白起は言った。

「良いな。飲むか」


将軍であった頃、白起は基本的にお酒を口にしなかったし、付き合いで飲んだとしても酔う程は飲まなかった。

将軍として緊急の事態に対応出来ない事を恐れていたのである。


しかし解任されてからは気にせず飲むようになった。

白起はかなり酒に強いがそれでも酔うと少し穏やかな表情を見せる。

また、私にとって大切な人と夜、静かにお酒を飲む事は一種のあこがれであった。

そのため、私は良くお酒を見つけて来ては月を見ながら白起と飲んでいた。


白起は月を見ながら言った。

「綺麗な月だな。」


私は言った。

「そうね。」


白起は静かに言った。

「そういえば夜空を見ながらお前に告白したことがあったな。」


私は言った。

「そうね。もっとも、あの言葉が告白だって分かったのはあれからしばらく経ってからだったけど。」


白起は驚いて言った。

「本当か。初めてお前が俺の告白を受けてくれた日として凄く印象に残っていたのに。」


私は言った。

「まあ良いじゃない。私があなたの提案を受け入れたのは事実でしょ。それに実際、こうして一緒にいるでしょう」


白起は言った。

「あれからそんなに時間が経っていないはずだが、環境は随分変わったな」


私はしみじみした気分で言った。

「そうね。」


白起は物思いにふけった様子で言った。

「俺はお前に負担をかけてばかりだな。お前に何かしてもらってばかりだ。俺も何かしてやれれば良いんだが」


私は言った。

「それは違うわよ。私はあなたに色々なものをもらっているわ。そうじゃなきゃあなたと一緒に居ないわよ。」


白起は言った。

「俺はお前が居てくれて本当に幸せだ。」


私は驚いた。

白起が泣いていたからである。

白起は将軍を解任されて少し変わった。

将軍である間に時おり見せた厳しさや怖さは全く見せなくなった。

代わりに涙もろくなり、こうして酒に酔うと涙を流す様になった。

私はそんな彼をますます愛しく思うようになっていったのだった。


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