第2章白起と子供達
白起の道場は最初は予想をはるかに超える盛況を見せた。
しかし、すぐに生徒数が大きく減った。
なぜなら、白起が生徒達に対して、自らの教える剣術を人を殺すことにつかわない事を条件に教えるといったためである。
そのため、伝説の将軍に剣を習い自らも将軍として身を立てたいと夢見て、白起の元へやって来た人々は全て白起の元を去ったのである。
しかし、当の本人はご機嫌だった。
どうやら、少ない人数に丁寧に教える方が性に合っているらしい。
今日も少年8人に丁寧に指導をしていた。
私は、白起の道場の管理や、入門生の勧誘、昼食の差し入れを行なっている。
なお、指導料は取っていない。
貧しい人々にも来て欲しいという白起の希望である。
私は、白起の指導の様子を眺めながら言った。
「皆。お昼ごはんを持ってきたわよ」
「「「はーい」」」
するとお腹が減っていたのか、子供達が私の元へ駆け寄ってきた。
私は恐らく、この子供達はまともに食事がもらえない家で暮らしており、この昼食が目当てで、来ている子も多いと考えている。
そのため、いつもおなか一杯になれるよう、大量の食事を差し入れていた。
「お前達。道具はしっかりしまえよ」
白起は子供達をたしなめて苦笑いを浮かべながら、道具を片付けていた。
すると、少年が言った。
「そんな場合じゃないさ。油断していたら恵子のご飯がなくなるだろ」
それを聞いた白起は笑みを浮かべると、少年を掴み、持ち上げていった。
「恵子さんだろ」
私はなんだか不思議な気分になった。
白起と結婚したら、こういう感じなのだろうか。
私がそんな事を考えている間も少年は暴れて言った。
「離せよ。」
しかし、白起が離さないで居るとやがて諦めたのか言った。
「分かったよ。気をつけるよ」
すると白起は少年を掴んだ手を離した。
少年は白起をにらみつけて言った。
「見てろよ。すぐにお前より強くなってやるからな」
それを聞いて白起は笑みを浮かべた。
「それは楽しみだな。だがそのためにはしっかり食べることだ。俺より強くなるにはもっと大きくならなくてはな」
そして白起は少年の頭を撫でた。
少年は何処か嬉しそうだった。
私は思った。
私達に子供が出来たらこういう感じなのだろうか。
白起と私の子供だから、中国人と英国人のクウォーターで、日本人のハーフか。
全く、顔が想像できない。
でもきっと凄く可愛くて愛おしいんだろうと思った。
そしてしばらく、食事を食べる白起たちを見つめながら私は幸せな想像を楽しんでいたのだった。




