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第1章魏冄と王

白起が趙との戦において、捕虜を殺害したという報告はすぐに秦の本国に届いた。

そして魏冄は王に呼び出された。


王は魏冄を見ると言った。

「魏冄。とんでもない事をしてくれたな。なにか申し開きはあるか?」


魏冄は言った。

「申し開きですか。あるわけないじゃないですか。白起は何も間違った事はしていないんですから」


すると王は魏冄を怒鳴りつけた。

「何が間違っていないだ。抵抗しない兵士を殺したんだぞ。それが真っ当な人間のやることか。」


それを聞くと魏冄は笑い出した。

王はそんな魏冄の態度を不愉快に感じて言った。

「何がおかしい?」


魏冄は言った。

「すいません。真っ当な人間とか仰るのでつい。ではお聞きしますが、自分を慕う多くの人間達を他国に連れて行き、同じ人間と殺しあえと命じる。これの何処が真っ当な人間ですか」


王は魏冄の迫力に思わず黙ってしまった。

すると魏冄は話を続けた。

「良いですか。王よ。俺と白起は悪です。でも必要な悪だ。俺と白起がやってるのはこれまで多くの王がやって来た、自己満足でただ、民を殺すだけのお遊びじゃない。本当の戦ですよ。敵は全て容赦なく殺し、その罪は全てその身に受け入れる。ですがその先に待っているのは本当に平和な世の中です。俺達は伝説になるんですよ」


王は言った。

「何が伝説だ。大虐殺をなした大罪人として歴史に名を残す事になるのだぞ。」


魏冄は言った。

「構いませんよ。後世の人間が我々の事を、英雄ではなく、犯罪者として扱うこともありうる。それも覚悟の上です。上に立つ者、全ての宿命といえるでしょう。その代わりに我々は誰よりも贅沢な暮らしをし、誰よりも敬われるのです。王はその覚悟も無くその玉座に座っておられるのですか?」


王は何も言い返す事が出来なかった。

すると魏冄は優しく言った。

「覚悟が決まらないならそれでもよろしい。この度の事は全て、白起と私の独断という事にして王は責任を逃れられればよろしい。もっとも俺は信じていますよ。王が覚悟を決め、我々と共に歩んで下さる事を」


そして魏冄は振り返ることなく、王の元を立ち去ったのだった。


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