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第3章副将軍のお礼

私が珍しく陣営を出て、兵士達と細かい事務について話をしていると王齕が私の元へやって来た。

正直私はこの男は好きでは無い。

そもそも私はこの男のせいでファーストキスを失ってしまった。

そこで私は厳しい目で見て言った。

「何の用ですか?」


すると王齕は言った。

「これは先祖代々受け継いできた、璧と刀です。お受け取り下さい」


私は驚いた。

しかし、そんな物を受け取れるわけが無い。

そこで私は言った。

「結構ですよ。別にあなたのためにやったわけではありませんから。」


それを聞くと王齕は驚いた様子で言った。

「お礼の品も受け取らないとはなんと高潔な方だ。」


そして王齕は私に対して臣下がするように傅いた。

私は困った。

周りの兵士が驚いた目で見ている。

そこで私は言った。

「やめてください。副将軍ともあろう方が、私のような平民に傅くなど有ってはならないことです。」


すると王齕は言った。

「いいえ。あなたは命の恩人だ。あなたが居なければ俺は白起様に殺されていた。このご恩は一生かけてお返しします。」


私は正直迷惑だった。

ただ、この前はあんな態度を取っていたのに、今度は臣下のように傅くのだから、一応自分のやったことを反省できるし、人の話を聞くことの出来る人間ではあるのだろうと思った。


だから私は言った。

「分かりました。では、今後、白起様に対して不満を持つものが居たら、私に伝えていただけますか」


それを聞いて王齕は言った

「なぜですか?不穏分子を処罰されるおつもりですか?」


私は思った。

そうか。

確かにあの言い方では、密偵になれと言っているようなものだ。

そこで私は言った。

「いいえ。そういう意味ではありません。ただ白起様は少し近寄りがたいところがあります。ですから、日々の不満や要望は私に伝えていただけたら言いやすいかなと思いました。」


それを聞くと王齕は笑みを浮かべた。

「それはありがたい。是非そうさせていただきます。」


これ以降、王齕は度々私に会い、様々な事を教えてくれた。

また、兵士達も、私が白起に真正面から向かって行ったところを見て感心したらしく、私を慕い話しかけてくれるようになった。

そして私はその内容を要約して、白起に伝えた。


これは軍の結束において重要な事である。

でも私においてはもう一つ重要な事があった。

それは2人の会話が増えた事である。

白起と、夜寝る前に軍について語り合うことは互いに共同の事業を行なっていることが実感できるため、刺激的であり、私にとっては大きな楽しみの一つとなったのだった。


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