第4章振り返る日々
私は家に戻ると、先に戻っていた白起に言った。
「そういえば今日は魏冄に会ったわ。」
白起はそれを聞くと言った。
「俺が呼んだんだ。さっきまで一緒に話をしていた。おそらくお前が会ったのはその後だろう。」
私は言った。
「なんの用事?」
白起はなぜか少し嬉しそうに言った。
「秘密だ」
私は少し意外に思った。
白起は将軍を解任されてから驚くほど、穏やかになり、私に隠し事など、一切しなくなったからだ。
そのため、当然、私は白起が何を秘密にしているのかが気になった。
そして白起に問いかけようとした。
でも白起の嬉しそうな顔を見ているとなんだか、秘密がある事が良いように思えてきた。
そこで話題を変えて言った。
「そういえば始めて会ったとき、あなたは魏冄が私に会うことを許したのよね。あの頃の状況を考えると不思議な話だわ。」
白起は言った。
「あの頃はお前を失いたくないという思いでいっぱいだった。だから他の人間に会わせたくなかった。だが魏冄は別だ。俺はあいつを信頼している。それに」
「それに?」
「もしかしたら俺はお前を魏冄に会わせたかったのかもしれない。あいつは何だかんだ言って、俺のことを常に心配してくれていた。だから俺はあいつに伝えたかったんだ。俺は少しだけ、生きる意味を見つけたかもしれないとな」
それを聞いて私は白起に抱きついた。
「それは良かったわね。じゃあ、あなたはその人をとても大切にしなくては駄目よ。」
白起は笑みを浮かべながら、私を抱きしめ返した。
「当たり前だ。ましてや俺はもう将軍ではない。お前を大切にする事だけを常に考えているさ」
私は白起の言葉にどこか悲壮感が漂っている事を感じた。
結局、白起はどこまで言っても白起なのだ。
戦場を、自分の犯した罪を忘れる事は出来ないのだろう。
私はそれが凄く悔しかった。
だから私は白起にキスをした。
白起は驚いた表情を見せたが、すぐに私を受け入れてくれた。
私達は、全てを忘れたように、長く、激しく愛し合ったのだった。




