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第5章最強の敵

反乱を起こした貴族たちはすぐに白起に鎮圧された。

これにより魏冄は強大な権力を握るようになった。

その魏冄が最初に決定したのが、楚の討伐である。

楚は南方の大国であり、秦が長い歴史の中でもほとんど勝った事のない軍事大国である。

白起との約束を守り、天下統一を目指すと同時に自分の権力を絶対的な物としたい魏冄としてはまず最初に叩きたい相手であった。


しかし、魏冄が白起に攻略を命令すると意外な返答が返ってきた。

「難しいな」


魏冄は白起の武勇を絶対的に信頼していたため白起の返答に驚いて言った。

「お前でも厳しいのか?」


すると白起は頷いた。

「そりゃそうだ。楚は兵も強いし、数も多い。普通にやったら勝負にもならない」


しかし、魏冄は諦めきれずに言った。

「何とかならないのか?」


すると白起は笑みを浮かべて言った。

「策ならあるぞ。兵を60万よこせ。それだけあれば、相手が楚といえど滅ぼせるだろう。」


魏冄は白起の提案に躊躇った。

なぜなら60万は秦国が動員できる兵力の最大であるためである。

よって白起の60万を預ければ国防は大きく手薄となる。

また、白起が反乱を起こせば魏冄達はなす術なく敗れるだろう。

つまり白起に60万の兵力を預ける事は凄く危険な賭けであるといえた。


しかし、魏冄は決断した。

「良いだろう。ただし、絶対に負けるなよ」


白起は魏冄の大胆な決断に少し驚いたがすぐに嬉しそうな表情に変わった。

「任せろ。俺は一度だって負けたことは無いだろう。」


そこからは大変だった。

魏冄は度々王に面会して説得し、他の貴族たちにも承諾を得た。

時には賄賂や恫喝と言った汚い手段も使った。

そして、ついに60万の兵力を動員する事に成功したのだった。



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