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第4章クーデター

魏冄は宰相となると、独自の政策を実施した。

それは端的に言えば富めるものをさらに富ませるというものである。

自ら賄賂を受け取り、そこに、特権を与えて、商業を大きく発展させた。


しかし、独特のバランス感覚で貧しい民の援助や、身分にとらわれない人材の登用も行なったため結果的には秦国全体が栄えていった。

もっとも、他の貴族たちは事実上独裁を行なう魏冄に対する不満を強めていた。


そんな中、王が危篤であるという情報が流れた。

そこで魏冄に不満を持っている貴族たちは一斉に反乱を起こし魏冄を打倒する事を目論んだ。

そして、白起は魏冄に呼び出されて魏冄の屋敷を訪れていた。


白起は魏冄を見ると愉快な様子で言った。

「おい悪党。どうやら年貢の納め時のようだな。」


魏冄は言った。

「悪党とは酷いな。俺は国のためを思って行動しているというのに」


白起は言った。

「それで?お前は俺に何を望む」


魏冄は白起の言葉に笑みを浮かべた。

「既に、新しい皇帝は準備してある。燕に人質に行っている王子だ。彼を王にする事が出来れば、内政は全て俺の思いのままとなる」


白起はそれを聞いて、喜んだ様子で言った。

「そうか。やっとか。これで、秦国の内政も少しはまともになるな。」


魏冄は言った。

「そうだ。白起。宰相の名の元に命じる。逆賊を討て」


すると白起は言った。

「実はお前が敵対する貴族達からも同様の要請があったぞ。魏冄を討てば俺は貴族になれるらしい」


それを聞くと魏冄は焦って言った。

「お前は貴族になりたいのか?」


白起は首を横に振った。

「全く。地位に興味は無い。だが貴族の誘いを断って、お前に付くんだ。それ相応の見返りは必要だぞ」


魏冄は言った。

「何が欲しい?」


白起は魏冄を真っ直ぐ見つめて言った。

「平和な世の中だ。俺はどうなっても良い。俺やお前の子供達の世代が戦を経験しなくても良い世の中を作りたい。」


その言葉を聞いて魏冄はため息をついた。

もう、何百年も乱世が続いている。

それを終わらせる事は容易ではない。

だが白起ならばもしかしたら出来るかもしれないと思った。


そして魏冄は言った。

「分かった。だが確認したい。平和な世を目指すための最も現実的な方法は、今まででは考えられない程の数の敵を殺すことだと思う。それでも良いのか?」


白起は言った。

「ああ。覚悟は出来てる」


魏冄は白起の言葉を聞いて覚悟を決めた。

そして白起に向かって右手を差し出した。

白起はそれを見て、自らも右手を出し、魏冄の右手を強く握った。

他国を震撼させることとなる、最強コンビの誕生の瞬間だった。


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