第4章初対面の思い出
白起と恵子が街で暮らし始めてしばらく経った頃、この頃の思い出を振り返って話をしていた。
「私の第1印象は決して悪くなかったわ。本来なら、あれだけの悪評を持った人間だし、もっと警戒しても良かったはずなのに、なぜか私はあなたに心を許してしまったの」
それを聞いて白起は過去を振り返るように言った。
「あの時は色々な話をしたな。」
「そうね。不思議と話し込んでしまったわね」
すると白起は思い出したのか不満げに尋ねた。
「ならばなぜ俺の告白を断った?今だから言うが俺は本来あんな事をいう人間ではない。告白をしたのはお前が初めてだったから断られて少し傷付いたんだぞ。」
私は笑みを浮かべて白起に抱きついた。
そして言った。
「良いじゃない。今はこうしてあなたと共に居るんだから。それにあなただってあの時はまだ本気じゃなかったんでしょ。いざ本気になったら私の意志なんて聞かずに、私の事を連れて行ったんだから」
白起は私に抱きつかれて照れた様子を見せながら言った。
「そうだったな。始めてお前と話した時、その美しさと真っ直ぐなところに俺は夢中になった。生まれて始めてこの女となら一緒に暮らしても良いと思えた。だがまだその程度の気持ちだ。お前の意思を無視してでも俺の女にしようとまでは考えていなかった。」
私は笑顔で言った。
「皮肉なものよね。過労死して転生して色々苦労したけど、その結果、こうして私の事を認めてくれる人に出会えるんだから。でもそれならいつ私の意志を無視してでも私を自分のものにしようと思ったの?」
白起は恥ずかしいのか、少し躊躇った後に言った。
「俺が戦しかとりえが無いと自分を卑下したとき、お前は凄く怒ってくれただろ。その時思ったんだ。この女は周りの人間を大切に出来る人間なのだろうと。今までそんな人間に出会ったことはなかったし、俺自身は自分すら大切にする事が出来ない。だからお前が輝いて見えたし、なんとしてでもこの女に自分を見て欲しいと思ったんだ。」
私はそれを聞いて思わず笑ってしまった。
「だからって普通、あんな脅し方する?」
白起は反省した様子で言った。
「知ってるだろ。俺はああいうやり方しか知らないんだ。」
「全く。不器用なんだから。でも不思議ね。惚れた弱みかしら。そうしてまで私に近づこうとしてくれた事が今は嬉しいわ。」
私はそう言うと静かに白起にキスをしたのだった。




