第12章私は彼とつかの間の逢瀬を楽しもうと思う。
私と白起の生活は底抜けに明るかった。
私は白起に対して敬語を使う事をやめたし、白起は昔のような恐ろしい剣幕を見せる事がなくなった。
私達は周囲に対しては結婚して夫婦となったと話しており、仲の良い夫婦として近所でも有名だった。
そんなある日、私は白起に言った。
「白起。私とデートに行かない?」
「デート?それは何だ?」
私は不思議そうにする白起の腕を抱き言った。
「愛し合う男女が2人で出かけることよ。」
「分かった。」
白起は照れくさそうに答えた。
私が腕に抱きつくのは珍しいことではない。
それにも関わらず彼が照れるのを見て、私は少し嬉しい気持ちになった。
そして私達は外に出かけ、まずは秦国で行なわれている劇を見た。
「劇か。お前が劇を好むとは知らなかったぞ。」
私は白起の言葉に首を振った。
「いいえ。別に劇自体はそんなに興味ないわ。ただ夢だったの」
「夢?」
「ええ。こうやって好きな人と、映画館でデートするのが。」
「映画館?」
不思議そうにする白起の顔を見ると私は彼にキスをした。
「こんな場所だぞ。何をする?」
白起はまた照れた表情を見せた。
「大丈夫よ。皆、劇を見てるんだからこっちは見てないって。」
そう言うと私はもう一度彼にキスをした。
次に美味しいと評判の甘味所を訪れた。
「俺はあまり甘いものは好まないのだが。」
白起は少し困ったような表情を見せた。
「駄目。映画の後は喫茶店でお茶をするものなの」
そういうと私は評判の甘味を一つとお茶を二つ頼んだ。
そして甘味を爪楊枝のような物で、取るとそれを白起に渡して言った。
「食べさせて。」
白起は驚いた表情を見せた。
私はそれがなんだか嬉しくて、より強い口調で言った。
「早く。お願い。」
白起は私が頼むと大抵の事はしてくれる。
白起は諦めたように、甘味を私の口元に運ぶと私に食べさせてくれた。
「美味しい。もう一回やって。」
最初は照れていた白起も徐々に慣れてきたのか、堂々と私に食べさせるようになった。
「面白いな。お前は随分、美味そうに食べるし、俺も甘味が食べたくなって来たぞ。」
私は白起の言葉を聞くといきなり白起にキスをした。
そして長いキスを終えると白起は言った。
「何をするんだ?」
私は得意げに答えた。
「私のキス。甘い味がするでしょ。」
それを聞くと白起は恥ずかしくなったのかまた目をそらして言った。
「お前は本当に大胆だな。これでは俺の心臓が持たないぞ」
「それは大変だね。慣れるためにもう一回する?」
私はそう言って白起を更に困らせた。
そして最後に私達は星を見に、高い丘を訪れた。
「綺麗だな。」
白起は星を見るとつぶやくように言った。
「本当だね」
私もそれに応じた。
「私ね。今。本当に幸せなの」
「俺もだ」
「あなたに会えたことに感謝してるし、あなたが居てくれるから私は幸せで居られる。」
「きっとあなたが生まれてきた理由は私を幸せにする事だったんだよ。だからもう昔の事は忘れて良い。」
「そんなに悲しい顔をしないで笑ってよ」
私の話を聞いて白起は悲しそうに答えた。
「すまない」
結局私達は目を背けているだけなのだ。
白起は多くの人間を殺戮し、その結果として平和が訪れる事もなかった。
彼は多くの人間の死を無駄にしたのである。
それは決して許される罪では無いだろう。
なのに私は願っていた。
自分はどうなっても良い。
どうか、この人だけは幸せになって欲しいと。




