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短編集 冬花火

手の狐と花の絆創膏

作者: 春風 月葉

 電車から降りて駅から歩くいつもの帰り道で一人の女の子が泣いていた。

 工場での最後の仕事でくたくただったが、幼い頃の娘を見ているようで気になったので声をかけることにした。

 まだ幼い子には罅のようにも見える深い皺の寄った私の顔は少し怖いだろうからと指を折り曲げ畳み、狐の形にしてパクパクと口にような動きをさせてみた。

「どうしたんだい?お嬢ちゃん。」自分でも笑ってしまうくらいおかしな裏声で話しかけてみる。

「狐さん、お怪我してる。」と女の子は可愛いらしい声で心配そうに言った。

 私ははっと慌て手を解いて背中にやってしまう。

「おじさん、おてて見せて。」少女は私の顔など気にすることなく私の袖を引っ張った。

「痛くないの?」と少女は聞く。

「痛くないよ。」今日に作ったばかりの傷だ、本当は痛かった。

 少女は小さな鞄から一枚の可愛いらしい花柄の絆創膏を取り出して、優しく私の怪我の上に貼ってくれた。

「あ、お母さんだ。おじさんバイバイ。」母の姿を見つけたようで、少女はとことこと歩いていってしまった。

 小さな子供用の絆創膏では私の手の怪我は覆えなくとも、疲れきった心は無垢な優しさに包まれていた。

「そういえばこの頃、娘と話していなかったな。」

 私はいつもの道を再び歩き始めた。

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