第7話「おいい、ミネルヴァ出てきやがれ。そんな話聞いてないぜ。勝手に進めるな」
ミネルヴァに頼まれ、全員を屋敷内のリビングに集めた。エミリーは首をかしげながらきょろきょろと僕とコニーの顔を見ながら、そわそわとしていた。
それにしてもこれで全員なのかな?知っているメンツは自分を含めた三人だけなのだけど。
「一体、何があったのよ。なんでいきなり呼ばれないといけないわけ?」
腕を組みながら立っているエミリーが大きな声で言った。だけど、僕とコニーは下を見ながらうつむいていた。だってそうだろう。あんな事件があったのだから、気ぐらい病んでしまう。
コニーがため息をついた。僕を見ながら、再度ため息を吐く。なんだ、僕を見ながらため息を吐くんじゃない。さっきまでの満面の笑みはどうしたんだよ。
「だって、ミネルヴァ店長が定春くんと一緒に弁償だっていうもんだからだよ。そりゃため息だって出るよ」
「おいい、ミネルヴァ出てきやがれ。そんな話聞いてないぜ。勝手に進めるな」
断固拒否する。ただ下にあったボタンを押しただけだろう。ていうか、爆破装置がこんな近くにある事ぐたい教えておけよ。
ただ、少し、いやかなりの焦りはあった。あの土地に地球と変わらないコンビニ。考えただけでも頭の上がらない金額が予想できてしまったからだ。払うとしても考慮してもらわないとな。
太陽が落ちかかる夕方の時間帯。昼間の事件から何時間経ったのだろうか。黒い雲は晴れて、オレンジ色の綺麗な夕日になっていた。そんな時に玄関から声が聞こえてきた。ついに女神が帰ってきたみたいだ。
「遅れてすまない。みんな話があるんだ」
そう述べると、三枚の契約書を机に広げた。
「なんです?これ?」
エミリーがミネルヴァに聞いた。目を見開いて、契約書をずっと見ながら。
「エミリーちゃん、コンビニが崩壊しちゃった。それも定春とコニーのせいで」
「なんてこと口走ってるんだよ。あんた、部下を売る気か」
「ひどいよー。定春ちゃんが爆発のスイッチを押して、私は敵を追い返しただけなのに、なんで私まで支払いの対象にはいってるんですー?」
エミリーがずっと僕を見てくる。なにか言いたげだったが、無視しておこう。ミネルヴァが口を開け、詳細を話す。
「コンビニが崩壊したのはまだ許せる範囲だったのだけど、湖まで吹き飛ばして街まで被害が及んだのはダメだったみたいね。ここの王国から伝達がさっききたのよ」
そう手に持っていた紙を机に置き、みんなに見せた。
「えーとなになに?、責任者、ミネルヴァ及び、爆発に関わった者へ、街の被害額三百億ゼニーの賠償金を命ずる……。は?ちょっと待てよ、これって意味が分からない」
「見たまんまの通りよ。街を破壊したからその代金を払えって来たのよ。ひどい話じゃない。コンビニまで壊された私に支払い要求なんて、私だって被害者だって言うのに」
「いや、あんた責任者だし仕方ないだろ」
真顔で答えてしまった。なにあんただけ逃れようとしてるんだよ。僕も言い換えてみたら、きちんと引き継ぎしてくれてなかったし、僕こそ被害者なんじゃ……。
「そこでなんだけど、借金を払うのだけど、今コンビニ自体がないから商売も出来ないの。それにここの周辺じゃ街も崩壊しているし、稼ぐこともできないの」
「「「うん」」」
三人はうなずいた。僕は腕組をしながら、コニーは床に座りながら、エミリーは椅子に座りながらミネルヴァの話を聞く。
「だからね。この事件の発端、魔王軍を抹殺しながら、他の地域を回りながら馬車式コンビニを始めようかと思うのよ」
僕は目が点になり、かけた。待て、待て、なんで魔王軍抹殺も入るんだよ。それに馬車式コンビニってそんな事出来るのだろか。
「馬車の方はもうすでに契約してきたから、ちなみにこの屋敷は売り飛ばすからね。ここで住んでなんて甘い考えは捨てなさい」
「行動が速いな。だけど、何を売るんだよ。今、コンビニの商品なんて吹き飛んだし、ましてこの借金、仕入れなんてできるのかよ」
ミネルヴァは鼻で笑い、あざ笑うかのように僕を見た。
「定春、ねえバカなの、バカなの?ぷークスクス。お金がないから仕入れなんてできないわよ。商品は魔王軍のお宝を奪い取って売るのよ」
ミネルヴァは笑みを見せた。仁王立ちで。僕はその発言に対し、一歩足を引いた。もう女神じゃないな。まったく。ゲス顔が浮かび、目がお金のマークになっているのがわかる。
「もう何言われてもかまわないわ。魔王は倒すものよ。喧嘩を売ってきたあいつらが悪いんだし、それに王国も魔王を倒したいと思っているのだし、ウインウインだわ」
ミネルヴァは手を両手で叩き、ナイスアイディアと言わんばかりの顔で僕ら三人を見た。
「まあ私はやるかな。どうせ契約上、働かないといけないし」
コニーがミネルヴァに言った。エミリーもそれに続き、
「仕方がないわね。やりますよ。どうせ、住む家もないしね」と足底が付かない椅子をプラプラしながら、言った。
「定春は……。分かってるわよね」
ミネルヴァの笑みが怖い。奇妙な威圧感を感じる。僕の返答は一つしかなかった。だって殺されたら地獄行きだもんな。
「ああ、わかったよ。ついていけばいいんだろ。まったく。もうどうとでもなれだ」
もうあらかた自棄だな。この異世界、転生してから波乱だらけだぜ、安全だった日本が懐かしい。
「そうと決まれば、明日には出発ね。みんな今日中に準備して明日から稼ぐわよ」
「「おー」」
コニーとエミリーは返事を返した。僕も形だけ、右手を上にあげて返した。