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魔法のように  作者: 琉未
2/2

2.羞恥





「池田先生〜。お呼びでしょうか?」


「ん。これをあっちに持って行って欲しくてな。お前しか、片付る場所が分かる人がいないんだよ。

試合終わったばかりなのに申し訳ないが……」


「大丈夫ですよ!」


「頼んだ!んじゃぁ、俺は次の試合の審判があるから」


そう言って、走り去って行った。

あっ、言い忘れてたけど、池田先生は私たちの顧問。なんか、偉い人らしい。興味ないけど。



「んでっと。どうすっかな。これ。」


池田先生が片付けて欲しいと言ったのは、幅の機具。結構重いんだよね、これ。しかも、いち、に、さん…………げっ、五つもある。


「ここから遠いんだよなぁ、幅の機具庫。」


ここは競技場である。広くないわけがない。


「まぁいっか」


苦笑いを浮かべて、目の前に並ぶ機具を一つ持つ。


「うわっ。これは、結構辛いな」


私は、女子の中でも力持ちな方だ。それでも、重いと感じるのだから、相当だ。


「誰か、手伝って……なんて、みんな試合があるよね」


苦笑いを浮かべて、よろよろと運ぶ。

これでは、運び終わるのはずっと先になりそうだ。


「さーくら?どうして、俺に手伝ってって言わないの?」


「ふぇっ!?」


急に、耳元に話しかけられたものだから、背筋がゾッとした。

振り向けば、黒髪の少年……なんだ、陸か。安心したら腰が抜けていった。


「わっ!大丈夫?」


地面にへたり込んだわたしと、機具を陸は支えてくれた。陸、見た目はひょろひょろしてるけど、力持ちだったのね。


「ありがと、出来れば普通に話しかけて欲しかった」

わたしは頬を膨らませた。


「悪かったってば。あとは俺がやるから。桜は試合終わったばっかりなんだし休んでなよ。」


「いいよ、一人で大丈夫。それに、陸だって終わったばっかじゃん?」


「桜が一人でやったら日が暮れちゃうよ」

陸はくすくす笑ながら、私から機具を取り上げて行ってしまった。

……なんか、ムカつく。

私はしばらく陸の後ろ姿を睨んでいた。


「さーくら。機嫌直してよ」

「だって、陸が可愛くない」

私は完全に不機嫌になっていた。

困った顔して笑ってる陸の顔から逃げるように、顔を伏せる。

結局機具は全部陸が運んでくれた。私が一つ運び終えるよりも早かった。


「可愛くないって……」

「一年生のころの陸は可愛いかったのに。まだ、私より背もちっちゃくてさ。非力で私より筋肉無かったのに」


意味のわからない文句をぶつける私に呆れることもせず、陸は話を聞いてくれる。


「成長したんだよ俺も」

陸の顔がどこか大人びて見えた。何だか、少し寂しかった。置いて行かれたような気がして。


「ずるい」

「桜も成長したよ。」

「してない。みんな変わっていくのに」

「俺は成長したと思うよ」

そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。何だかあったかい気持ちになってきた。


「桜?……さくらっっ!!!」

陸の声が頭に響いた。

「まじか、これは長期戦になりそうだ」

陸は苦い顔を浮かべていた。

私がそれに気付くのはいつになることやら。



起きたら私はテントにいた。

天によると私はどうやら陸と話してる途中に寝てしまったようで、陸におぶられてテントに来たそうだ。

周りから温かい眼差しを向けられ、私はしばらく羞恥で顔を真っ赤にしていた。


当の本人はしれっとした顔をしていたので、無性に腹が立ったから殴ってやった。


「真っ赤な顔されて殴られても……ねぇ?」

「うっさい!!!!」

「……写メる?」

「やめろ!!!」


「「「桜先輩可愛いです!!」」」」

純粋な後輩たちに私は負けた。










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