い
ごめんなさい。拍子抜けなんて言った私が悪かったです。
私は瞬時に貴船さんに土下座しました。スライディング土下座というやつです。あるときまで冗談だと思っていたこの土下座をまさか私がやる日が来るなんて思いもしませんでした。
「うーん、お見事。まさかくまちゃんにそんな特技があるとは知らなかった」
「いや、美嘉? 土下座が特技ってどうなのよ」
「二人とも、話を聞いてくれると嬉しいです」
私のスライディング土下座を淡々と褒める貴船さんとそれにずれたツッコミを入れる冴木さんを私は涙目で見上げてみます。が、だめだ、全く効果がないようだ。まず二人がこっち見てない!!
「だって、二人とも!! 噂だけを鵜呑みにするなんて危ないと思わない!?」
「噂だからこそ、実証が必要」
「うーん、面白そうだし、いいんじゃない?」
「私がおかしいの? 私がおかしいのかな!?」
どうして二人はこんなに呑気なんでしょう? 幽霊や妖怪は実在するのに。悪魔だって実在するかもしれないのに……って、そか、二人は見えないんでした。私がやっぱりおかしいんですね。トホホ。
霊感があることをここでばらすわけにはいきません。せっかく手に入れた普通のJKライフ、リアルのお友達です。簡単に手放してたまるものですか。
それに──私は立ち上がり、窓の外を見ます。──怪談を一つしたのに幽霊の影一つ見当たりません。もしかしたら、この怪談には霊たちが寄ってこない"何か"があるのかもしれません。
それならば、と気を取り直して二人に言いました。
「いえ、なんでもありません。やってみましょう、悪魔召喚」
何も起こらないかもしれませんし!
そうして、勘違い少女は悪魔召喚に手を出してしまうのです。