表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あ、くまだ  作者: ペンネグラタン
39/47

最終章

 文化祭も終わり、学校のイベントは大体終わりました。

 しかし、私たち、学生の本分は学業。それに終わりはないのです。

 まあ、つまり。

「くまちゃん、助けてー」

「なんでまた……」

「眞子はいつものこと」

 三人で勉強会を開くことになりました。(冴木さん救済処置とも言う)

「期末のときも大変だったし、中間のときも大変だったのに、なんでまともにノート取ってないんですか」

「いつものことながらに呆れる」

 私と貴船さんからの冷たい眼差しにうっと呻く冴木さん。

 そう、冴木さんがテストのたびに危機に陥るのは、冴木さんの自業自得なのです。最近気づきました。

「だって、授業より先生の雑談の方が面白いんだもん……」

 と冴木さんが見せてきたのは、授業ノート……ではなく、教科ごとの担当教師の雑談を感想を交えながら面白おかしく綴った日記みたいなものでした。内容は面白いんですが、そういう問題じゃありません。

「いつもテストに困っているなら、ちゃんと先生の話を聞くべきです!」

「聞いてるもん!」

 言い方が悪かったですね。

「ちゃんと板書を執るべきです」

 私たち十代は見聞きしたことを長期記憶しやすい年齢と言われていますが、それは趣味や娯楽に関することが大半。勉強が好きな人は勉強を覚えるでしょうけれど。

 これまでの傾向を見るに、冴木さんはお世辞でも勉強が好きとは言えない性格の模様です。それならざるのように流すんじゃなくて、きちんとメモを執ることが必要なんです。私たちが普段何気なく使っているメモとノートという言葉ですが、英語においてはほとんど同じ意味で、日本語にすると"覚え書き"となります。

「わあ、さすがくまちゃん、物知りー」

「そこ、流さない」

 ノートというものの大切さをメモに置き換えて考えるとわかるでしょう。メモというのは、言われたことを忘れないように執るものです。つまりノートというのも、その日学んだことを忘れないために執るものなのですよ?

 正論に冴木さんが黙ります。どやぁ。

「なんだか、くまちゃんもあたしたちとの距離感縮まってきたよね」

「こら、勉強が苦手だからって話を逸らさないで、冴木さん」

「それ」

 私のツッコミをスルーし、冴木さんは人差し指を立てます。それから朗々と続けます。

「手芸調理部に入って、友達になって、もう九ヶ月経とうとしているんだよ? いくら敬語がくまちゃんのデフォルトだとしてもさ、そろそろさん付けは取ってもよくない?」

 ふと、その言葉に胸を衝かれます。

 止めのように、冴木さんは告げました。

「そろそろ名前で読んでほしいな?」

 貴船さんも同じことを思っているのか、無言ですが私に期待の眼差しを向けてきます。

 冴木眞子さん、貴船美嘉さん。さすがに九ヶ月以上の付き合いですから、名前を覚えていないなんて陳腐な嘘は通用しないでしょう。

 私は冴木さんと貴船さんという友達ができるまで、霊感少女という特異性から、人と一線を引いていました。ですから、小学校の頃から中学まで一緒だった子もほとんど苗字呼びで……今の今まで、名前呼びなんて発想がありませんでした。

 中学までのクラスメイトほどの付き合いの長さではありませんが、それでも私の友達一号と二号です。一線を引いたまま、というのは、何か違う気がします。

 勇気をありったけ絞って、声に出してみます。

「眞子、さん、美嘉、さん……」

 すると、二人の表情はぱあっと花の咲いたように明るくなりました。眞子さんなんかは感動のあまりなのか、むぎゅーと抱きしめてきます。ちょっと苦しい。

 その上から、美嘉さんがそっと優しく包み込むように抱きしめてきました。

 ああ、これが友情なんだ、と私はぼんやり思いました。私が心の奥底で望んで、今の今まで手に入れられなかったもの。

 嬉しくって、涙が溢れてきました。

 貴船さんに至っては、私が悪魔召喚できているとか、人じゃないものが見えるとか知っているのに。

 受け入れてくれる人がいるって、こんなに嬉しいんだな、と噛みしめました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ