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あ、くまだ  作者: ペンネグラタン
31/47

「これ、採用されたらまずくね?」

 お願いだから採用しないでください(切実)

 しかし、伸也先輩の文章能力が素晴らしいので、もし書くなら別な題材も見てみたいです。

「それは確かに」

「なんでこんな題材にしたんですか? 先輩」

「んー? あー、雪子さんがあんまりショタショタ騒ぐから引っ張られちった」

 てへっとやるショタ顔な伸也先輩。先輩と思えないくらい顔が幼いです。というか、てへぺろやっても違和感のない男子っているんですね。

「……てへぺろ」

 なんで張り合っているんですか、くまくん。

「別に、張り合ってない」

 明らかに拗ねているじゃありませんか! 素直じゃない系ショタですか。きっと今顕現させたら赤根先輩が泣いて喜びますよ。

「お前に今顕現させるほどの霊力は回復してない」

 今この場で悪魔なんか顕現させたら私のJKライフが崩れる上にリアルなライフが0になるんですよ! やるわけないでしょう。

「お前が言い出したんだろうが」

 ……と、くまくんと脳内押し問答をやっていても仕方ありません。話が進みませんからね。

 まあ、先輩方が進めているかと……

 と、思って、赤根先輩と呉服副部長の方を窺います。伸也先輩はだらんとして「な? 駄作だろ」と自分の作品を愚弄しています。文章能力は素晴らしいので、駄作ではないと思うのですが……

 ばんっ

 机を思い切り叩く音に、私はもちろんのこと、他の方々もびくんと肩を跳ねさせていました。

 誰がやったかというと、赤根先輩です。俯き加減で立ち上がり、何やら、険悪な雰囲気。

 対面している伸也先輩が、先程の呑気そうな表情から一変、こめかみから冷や汗をたらりと垂らしています。おそらく、成り行きから考えるに、台本のことでしょうから、伸也先輩が心配するのも無理からぬことです。

 赤根先輩はゆるゆると顔を上げました。思わず見ているこちら側がごくりと生唾を飲み込むようなシーンです。さすが演劇部。

「いや、そうじゃないだろ」

 というくまくんのツッコミは残念ながら皆さんには聞こえないのでスルーです。

「え……」

 おっと、伸也先輩から声が上がりました。そちらに目をやります。

 ……なんということでしょう。さも怒っているかのような所作だった赤根先輩は満面の笑みで、ついでに言うなら鼻息フンスな感じでした。

「これはいいものだ!」

 どっかの大佐を思い浮かべてしまいました。

 こほん。

 えっと。

「Pardon?」

 伸也先輩が慌てすぎてやたら発音のいい英語で聞き返しましたよ。

「これは、いいっ、非常にいいっ。素晴らしい! Great! Excellent!」

 何故か赤根先輩も発音のいい英語で応酬します。

「What!?」

 英語沼から脱け出せない模様。けれど、伸也先輩が言いたいことはわかります。

 これのどこがいいんだ、と。文章能力は素晴らしいことにちがいありませんが、伸也先輩としては、駄作だったのでしょうから、その疑問も無理からぬことです。

 けれど、私はなんとなく察してきました。察したくはありませんでしたが、察しなければならないことが一つありました。

「Nice! Shotakun!」

 おや、こちらも英語沼から脱け出せないようですね。

 仕方がないので私が解説しますと、可愛くて格好いいショータくんの活躍する伸也先輩の書いた作品は、千年の恋も覚めるほどの赤根先輩のショタコンという性癖にドストライクバッターアウトスリーアウトチェンジくらいの威力をもたらしたのです。

「いや、わかりづれぇわ」

 くまくんのツッコミはスルーです。

 事態はボケもツッコミもやっていられないような深刻な方面に発展していたのですから。

 伸也先輩に顔をぐい、と寄せた赤根先輩は宣言します。

「今年の題材はこれで行こう!」

「はあ!?」

 驚いたのは伸也先輩だけではありません。

「ぱ、Pardon?」

 私も小さく震える声で問いかけました。


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