み
部室である調理室は一階の端にあります。
その日はホームルームが終わって結構すぐ出たので、私たち三人が一番のりでした。
「うーん、やっぱ暑いねぇ。窓開けようか」
「え? そんなに暑いかな?」
冴木さんの言葉に疑問符で答えました。すると、貴船さんがぼそっと「眞子はちょっと汗っかき」と教えてくれました。
「眞子、待った」
窓を開けようとした冴木さんを貴船さんが止めました。私的にはナイスプレイです。だって外に怪しげな浮遊霊が控えていましたから。
私が内心で貴船さんにグッジョブと親指を立てた次の瞬間、貴船さんがこう言わなければ。
「納涼にちょうどいい怪談持っきた」
言わなければ、私は普通のJKライフを送れたかもしれない。
「納涼って、ねぇ、貴船さん、夏にはまだちょっと早いよ」
私は止めようと必死でした。皆さんも知っているでしょう? その手の話は"本物"を呼ぶって。あれ、冗談じゃないんですからね? しかも夏とかお盆とか、ただでさえ多い時期にやっちゃいけませんよ!
結果は予想の斜め上を行くものになるのだけれど、私はとにかくろくなことにならないと思って、止めたんです。
けれど結局貴船さんに押しきられ、私は聞く羽目になりました。
この手芸調理部に伝わる、摩訶不思議な怪談を。