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あ、くまだ  作者: ペンネグラタン
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「文化祭、ですか……」

「そうそう、手芸調理部は文化部である以上、何かやらないといけないからね」

 名切先生が調理実習室の黒板に"文化祭のお題"とチョークで書いていきます。

 この場には、冴木さんや貴船さんの他にも、先輩方など部員が何人もいます。文化祭は部活の死活問題なのです。

 部長の花巻(はなまき)先輩が首を傾げます。

「確か、演劇部から衣装作成の依頼が来ていましたよね。それを受けると五人くらいは動けなくなりますから、あんまり大きなことはできないと思います」

 花巻部長はそう言って、鉛筆に自分のこめかみから垂れた髪を巻きつけていました。少々チャラいとか軽い印象がありますが、花巻部長のこれは先輩方曰く小学生の頃からのくせで、なかなか抜けないそうです。

 さて、我が手芸調理部の話に戻りますが、花巻部長の言う通り、お世辞にも部員は多いとは言えません。私も含め、部員は十五人。うち五人が演劇部からの依頼に行くと、十人しか残りません。クラス単位で何かをやるのも大変なのに、十人では人手不足も甚だしいです。

 すると、貴船さんがす、と手を挙げました。

「はい、貴船さん」

「お化け屋敷をやるっていうのはどうですか?」

 貴船さんらしい提案に、私や冴木さんは空笑いしか出ませんが、他の方々からはちょっと不平不満の声が聞こえます。

「お化け屋敷って、クラスの出し物じゃないんだから」

 花巻部長も呆れているようです。ですが、貴船さんはにやりと余裕の笑みを浮かべています。

 オカルトにかけて、彼女が何も策を用意していないわけがないのです。

「手芸調理部の皆さんなら、一度は耳にしたことがあるはずです。この部に伝わる怪談を」

 真面目な花巻部長が少し悩んだ後、口にします。

「"あくまのぬいぐるみ"のこと?」

「そうです。くまのぬいぐるみを使って悪魔を召喚するあれです」

 貴船さん、なんでこっちを見るのかな!?

「また儀式をやるつもりか? 懲りないな」

 まだエアーなままのくまくんが呆れたように言います。もちろん、私と名切先生にしか聞こえませんが。

 貴船さんにちら、と見られたことにより、私に視線が集中するかと思ったんですが、貴船さんがすぐに前を向いたため、先輩方は貴船さんに注目し、次の言葉を待ちます。

「この怪談を利用しない手はないと思います。"あくまのぬいぐるみ"をモチーフにした空間で、恐怖体験をしてもらう。奇をてらってはいますが、この部の特徴を前面に押し出せると思うんです。

 くまのぬいぐるみを置いて、そのぬいぐるみをそれらしくデザインしたり、儀式を擬似的に実行させることで、悪魔に扮した部員が出てきてそれから逃げるとか良くありませんか?」

 ぬいぐるみ作り、悪魔の衣装作りを考えると、これ以上とない名案のように思えました。くまのぬいぐるみくらいなら、演劇部の衣装担当の人でも隙間時間で作れるし、お化け役が悪魔だけなら悪魔の衣装も十人いればそこそこ凝ったものを作れるはずでしょう。

 うーん、と花巻部長は悩んでいる様子でした。くまのぬいぐるみならコストパフォーマンスもいいのです。テディベアは一般的なくまのぬいぐるみですから、手芸店に行けば材料は簡単に安価に手に入ります。お化け屋敷なら、暗がりですから、完成度も気にしなくて済みます。

 なんと抜け目のない作戦。恐ろしい子、と私は貴船さんを見ました。

「くまのぬいぐるみを飾るだけじゃ足りないというのなら、悪魔の実寸大の人形も作ってしまえばいいのでは」

「え゛」

 声を漏らしたのはくまくんです。もちろん、周りには聞こえていませんが、くまくんが焦るのも無理はないことでしょう。

 貴船さんはくまくんの悪魔としての姿を顕現したときに見ているのです。もし、作る原案が貴船さんの担当になったら、くまくんがモデルになることは請け合いです。

 私もくまくん共々、貴船さんの動向に怯えていると、貴船さんは非常にイイ笑顔で宣告します。

「実は悪魔の原案なら、私にはできているんです。お任せいただけないでしょうか?」

 ……それって確実にくまくんモデルですよね!?

 とは、ツッコめなかった。



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