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あ、くまだ  作者: ペンネグラタン
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 普通の共学校の普通科で普通に過ごすと決めた私。

 部活を決めた理由も"趣味・特技を生かせるから"というどこまでも普通なものでした。

 入部した"手芸調理部"も季節に合わせたお菓子を作ったり、フェルトでマスコットを作ったりするどこにでもある手芸調理部です。

 ただ一つ、"あくまのぬいぐるみ"という怪談が伝わっていることを除けば。

 気づけばよかったんですよね。"怪談"って時点で。霊感持ちの私×怪談。何も起こらないと信じきっていた勘違い少女は一体どこの誰なんでしょう?

 さて、自虐はこれくらいにして、私が事件に巻き込まれた経緯をお話ししましょう。


「やっほー。今日は暑いねぇ」

「こんにちは、冴木さん」

 ある日の放課後です。隣のクラスで手芸調理部の冴木 眞子さんが制服のブレザーを小脇に抱えてやってきました。彼女は友達いない歴=年齢だった私の友達第一号です。とても明るく社交的でちょっと色の抜けた髪をボブカットにしています。ちょっとくせっ毛みたいでかなりボリュームがありますが。ついでに言うと女性的な部分もかなりボリューミーな子です。

 そんな彼女は私の元に一直線にやってきて、空いた隣の席に座り、私のおさげを弄ります。

「あー、やっぱ何回見てもいいなあ、おさげ」

「そんなにいいですか? ただの三編みですよ?」

「だって、あたしはできないんだよ? 髪質の問題で。髪質の問題で!!」

 大事なことなので二回言いました的な冴木さんは私のおさげをぶらんぶらんとさせ、弄ります。不快ではありません。何せ、恒例ですから。

「おさげは正義、おさげは正義だよ!? 女の清純派ヘアーなの! そして黒髪長髪の特権なの!!」

「せ、正義、ですか」

 気にいってもらえて嬉しい限りですが、その迫力に失礼ながらひいてしまいました。

 それはさておき、です。

「おはよー、詰草ちゃん」

「貴船さん、その呼び方、やめてほしいと前から」

 冴木さんの後ろからぬーっという擬音がとても似合いそうな感じで出てきたのは貴船 美嘉さん。同じクラスの手芸調理部で冴木さんと同じ中学からやってきたそうです。私の友達第二号の彼女は艶のある腰まで伸びた長い黒髪の美少女です。肌は美術館とかの石膏像並みに白くて綺麗なんですが、ちょっと人並み外れた長髪と美貌のために"貞子"という不名誉な渾名がつけられてしまっていたのだそうです。

 無表情で淡白な感じのする子ですが、渾名に悩んでいて、とても辛かったそうです。私はそれを聞いてすごく親近感が湧いています。

 ただ、彼女は私を"詰草ちゃん"と呼びます。

 私の本名、"白詰草"と書いて"みつば"と読むんです……コンプレックスの一つです。小学生の頃は"クローバーのクロちゃん"と呼ばれていました。黒歴史です。このネタでならいつでもダークサイドに堕ちそうです。

「くまちゃん、悪かった。悪かったから堕ちないで。戻ってきて」

「あ、すみません、貴船さん。それで、何でしたっけ?」

「部活行こう」

 始まりは意外と普通でした。




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