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あ、くまだ  作者: ペンネグラタン
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 ちょっとシリアスな話になりますが、私の中学時代までの話をしましょう。

 何がシリアスかというと、まあ、私の学年は一クラスだったんですが、その閉鎖性故か、いじめがあったのです。

 いじめの首魁は暴力の徒であるガキ大将と権力を笠に着るお嬢様でした。

 ガキ大将なんかは、どんな些細なことでもネタにしてからかいたがるので、私のようなきらきらネームの被害者は、ガキ大将に目をつけられないよう、びくびくして過ごしていました。

 その上、私は霊感持ち……オカルト好きの多かったクラスなので、霊感持ちを公言している神々しいほどに堂々とした子もいましたが、私はそんなに強くあれませんでした。いじめに遭いたくない、その一心で、霊感持ちであることを隠し続けていました。それでも不自然な挙動が出て、何人かにはバレてしまいましたが。

 みんなには話していないことですが、バレた中の一人に、ガキ大将の取り巻きがいました。相手はガキ大将の取り巻き。まあ、予想はつくでしょうが、私は霊感持ちの痛い中二系女子としてからかわれ、脅されました。「ばらされたくないなら、従え」と。それは、暗に……サンドバッグ代わりになることを意味していました。

 そう、私はいじめられっ子だったのです。

 もう何年も前の話なので、傷痕もありませんが。

 いじめに終止符を打つために、クラスの何人かが決起して、いじめっ子に仕返しを始めました。少々語弊はありますが。私も仕返し派の中に取り込まれていました。

 その仕返しの方法というのが、実にオカルトでまどろっこしい方法であるため、私はそのオカルトな仕返しの儀式が終わるまで、その儀式に付き合うことになりました。それが、くまくんの言うところの"呪いみたいなやつ"なのでしょう。

「それ、取り払うことできるけど?」

「へっ」

 思わず頓狂な声を出してしまいました。

「いや、俺、悪魔っぽいことはできないけど、逆に"悪魔っぽくないこと"ならできるんだぜ? 例えば、呪いを解除する、とかな」

 確かに、悪魔っぽくない。

 魅力的な提案でしたが、私は断りました。

 これは私だけの問題ではないのです。これは言うなら、私と中学までの同級生たちとの問題なのです。この呪いのような儀式に耐え兼ね、既に何人か死んでいますが、この物語の主人公たるあの子のことを思うと、自分だけずるして抜けるのは違う気がするのです。

 ──と、こんな話を、友達を続けていくなら、冴木さんや貴船さんにもいつかしなければならないのでしょうか。

「そこは別に自由じゃね? 友達とか言ったってさ、人間なら隠し事の一つや二つくらいあるだろ。面倒なことこの上ないけどな」

 確かに、その通りです。「俺が決めることじゃねぇしー」みたいな雰囲気を漂わすくまくんにはいらっときますが、まあ、一つの隠し事くらいは人間である以上仕方のないことでしょう……と思うことにしましょう。

 ああだこうだと悩んだって仕方ないのです。

七九四年(なくよ)鶯、平城京?」

「なんで平城京がわかって平安京がわからないの? 馬鹿なの? あ、馬鹿だったね」

「美嘉ひどい」

「平城京は奈良時代ですよ。鳴くよ鶯は平安京です」

「くまちゃん優しい!」

「少しは覚えろ阿呆」

「あー、今"眞子"の発音で"阿呆"って言ったー。阿呆っていう方が阿呆なんだもんねー」

「それは馬鹿」

 こんな他愛ないやりとりを傍らで微笑んで見ることができれば、私はそれでいいのです。

「ふぅん、人間ってよくわかんないの」

 くまくん拗ねてます?

「拗ねてねぇし」

 生意気ツンデレとかショータくん極めてますね!

「でれてねぇもん」

 さっきでれていたじゃありませんか。

「ぐぬぬ」

 なんだかんだ言って可愛いもんですねぇ、悪魔も。

「やっぱりお前しょたこ」

「んん? くまちゃんまた拳掲げて今度はどうしたの?」

「小蝿の気配がしまして」

「だんだん気配察しにくいのになってない?」

 踞っているくまくん。ざまぁ。



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