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このボールが届けば  作者: 吉野ヒダカ
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第二話 衝撃の告白

 時間は流れて放課後の屋上。そこに小野寺と水野はいた。


「っで、話って何?」


 だるそうに水野が言う。その言葉に意を決したのか、小野寺が一歩、水野に向かって踏み込んだ。


「水野! 俺は、俺はお前のボール投げを見たときからお前に惚れたー!」

「……はっ?」


 一瞬反応が遅れた水野だが言われたことの意味を理解すると、少し青ざめた顔をしながら一歩足を退いた。それを見た小野寺は更に一歩踏み込む。


「はっ、ではない! 俺は惚れたと言ったんだ! こんなこと頼むのは悪いことだとは思ってる。勝手にお前の人生を決めることになってしまうが、俺と付き合ってくれないか? そして一緒に夢を見よう!」

「な、なんの夢だよ!?」


 普段女子からクールでかっこいいと言われている顔を思いっきり引きつらせながら、水野はどんどん小野寺から距離を取ろうと足を退いて離れるが、そのたびに小野寺も近寄りその差が一向に離れることはなかった。そしてついに水野の背に屋上の柵が当たった。


「来るな! 俺に近付くな!」

「そう邪険にすんなって。俺らは友達だろ?」

「なった覚えはない!」


 言い合いをしながらも確実に小野寺は距離を詰めていた。水野の正面まで迫ったとき小野寺は水野の両肩に手を乗っけた。完全に水野は怯えていた。


「夢を見ようぜ、水野。俺とお前だったらなんだってできる。そう思うだろ!? 俺はそう思ってるぞ」

「何もできないし、したくない! いいから離れろ! 気持ち悪い」

「何でだ? 俺はお前の力があれば甲子園に行けると思ってるぞ」


 その言葉を聞いた水野は固まった。急に大人しくなった水野を見て小田島は不思議そうな顔をしている。


「……甲子園? はっ!? ちょっと待て、お前は一体何の話をしてる?」

「何のって、俺とお前が同じ高校に行ってバッテリーを組むって話」

「惚れたとか付き合ってくれってのは?」

「俺はお前の肩の強さ、ピッチャーとしての魅力に惚れたんだ。だから、同じ高校に行くのを付き合ってくれないかと」

「俺の勘違いか……てっきり」


 勘違いだということがわかった水野は気を落ち着かせた。


「なあ、少しかがんでくれないか。このままじゃ届かない」

「? 別にいいけど何が届かないんだ?」


 水野に言われて小野寺は窮屈そうに身をかがめ、水野と同じ目線になった。


「これでいいか?」

「ああ! これで届く!!」

「ぶっっっっ!」


 瞬間、小野寺の顔に水野の渾身の右ストレートが入った。くらった小野寺は綺麗な放物線を描きそうになりながら吹っ飛んだ。


「紛らわしいんだよ!!」

「いい、いいパンチだぐふっ!」


 叫びながら小野寺は地面に倒れこんだ。


「――整理するとだ。一緒の高校に行って俺とバッテリーを組みたいってことだな」

「その通りだ!」

「断る。じゃあな」


 さっさと帰ろうと水野は屋上のドアに手をかけるが、小野寺にその手を掴まれた。


「何でだ? 俺とバッテリー組むのが嫌なのか?」

「そうだよ」

「理由は? 理由を教えてくれ!?」


 水野は掴まれている手を払いのけると、突き刺すような鋭い言葉を放った。


「お前じゃ俺の球は捕れないからだよ」

「球が捕れないから? そんなことはわからないぞ。お前がどんな球を投げるのかは知らないが俺はきっと捕ってみせる」

「いいぜ。それなら捕ってみせてくれよ。そしたらバッテリー組むのを考えてやるよ」

「わかった! いつやる?」

「今日は道具を持ってきてないからな。明日の放課後にでもやろうか」

「よし、放課後だな」

「またな」


 それだけ言うと水野は屋上から去ろうとしたが、再びドアに手をかけると動きを止めた。それを見た小野寺は首をかしげる。


「どうした? やっぱり明日じゃまずいのか?」

「いや、そうじゃなくて、何でお前は俺がピッチャーだってわかったんだ? 中学の部活で野球部に入ってないし、硬式野球のシニアクラブだってお前と違うチームだったし、すぐに辞めたからお前と接点がないんだけど?」


 疑問を口にする水野に小野寺は笑顔で答えた。


「まず初めに測定のときのお前の投げ方を見てピッチャーぽいなって思ったんだ。そしてその後の握手したときの指でわかった! まず普通の生活をしていて人差し指と中指の指先にマメができるわけがない」


 自信満々に答えた小野寺に水野は少し驚いた顔を見せた。


「へー、よく見てるな。キャッチャーやってるだけあって、観察力は鋭いな」

「だろ! 観察力がすごい俺とバッテリーを組んでみたくなったか?」

「すべては明日決めるよ。それじゃあな」


 今度こそ水野はドアを開けて去って行った。一人取り残された小野寺は闘志をみなぎらせていた。


「やってやる! やってやるぞ。俺は水野の球を捕ってあいつとバッテリーを組むんだ!」


 まだこのときの小野寺は考えもしなかった、水野の右手から放たれるボールは想像を絶するものだということを。


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