30.多面と解放と特別
【主な登場人物】
僕 / 本名・志月 緒人。主人公。やや内向的で、妄想的。いたって普通の高校生男子。
篠上純夏 / 黒髪ロング。容姿端麗頭脳明晰。無表情・敬語・論理的な思考を持つが、ある日失われた時代の「恋愛と性に関する古い人間の本」に出会い、性的なことに異様な興味を抱く。
天乃天音 / ピンクのボブカット。明るく小悪魔っぽい性格で、主人公をよくからかってくるムードメーカー。その無邪気さと素直さが、逆に破壊力抜群。
花野ちとせ / ミルクティブラウンのふわふわウェーブ。何を言っても怒らず、ほんわか返してくれるその優しさに、気づけば心が溶かされていく。無自覚エロスで主人公を追い詰める。
御堂みこと / 金髪ハーフアップ。風紀委員として、制服の着こなしや問題行動を正す。と言っても、第六学園には風紀の乱れは無く、過剰に暴走気味。
白鷺ノナメ / 肩で揃えたネイビーブルーの片目隠し髪。緒人の隣の部屋の住人。学校では物静かで、話しても反応が薄い。自室から何やら声がするのだが……。
昼休み、屋上でノナメと話した。
「よかったね」
「……うん。思ってたより、みんな優しかった」
「当然だよ。君の歌を聞けば、誰だって感動する」
ノナメは恥ずかしそうに笑った。
「……昨夜、あなたに向けて歌ったの、気づいた?」
「すごく……嬉しかった。ノナメの歌が……響いた」
「……よかった」
彼女は僕の隣に座った。
「……あなたには……拙のこと……もっと聞きたい」
「えっ……」
「特別な人だから」
「……ねえ、あなたは拙のどの顔が一番良い?」
「どの顔って?」
「……配信中の明るい私、普段の無口な私、それとも昨日歌ってた私?」
僕は少し考えて、答えた。
「全部。でも、一番は……」
「……うん」
「今の君。俺と話してるときの、自然な君」
ノナメの頬が赤くなった。
「……それって、ずるい答え」
「でも本当だよ。君が一番リラックスしてるときの顔が、僕は一番好きだ」
彼女は僕の手を握った。
そしてノナメはいつもより高揚した声で話した。
「ありがとう。あなたがいなかったら、きっと一人で抱え込んで、もっと辛いことになってた」
「僕も、君から大切なことを学んだ」
「何を?」
「恋愛には秘密が必要で、その秘密を分かち合える人がいることも大切だって」
ノナメは微笑んだ。
「じゃあ、これからも秘密を分かち合お?」
「ああ、喜んで」
そして、僕たちは手を繋いだまま、しばらく空を見上げていた。
その夜の配信で、NØNØ……白鷺ノナメは言った。
「昨日は、本当にありがとー! たくさんの応援メッセージ、とても嬉しかったです♡」
視聴者数は以前よりも増えていた。
正体を明かしたことで、むしろファンが増えたみたいだった。
NØNØが等身大で、偽りのない……魂からVdleをしていることが伝わったらしい。
「学校でもクラスメイトたちが温かく迎えてくれたよー! 文化祭で歌ってほしいって言われちゃいました♡」
コメント欄に祝福のメッセージが流れる。
「でも、一番嬉しかったのは……大切な人が……みんなが、ずっと応援してくれていたこと」
彼女は壁の方を向いた。
「私の1番近いところで……支えてくれた人もいた。その人のおかげで、私は本当の自分でいることができたの。隠すことの大切さと、分かち合うことの尊さを教えてくれました」
僕は壁の向こうで、温かい気持ちになっていた。
「これからも、いろんな顔の私を見てもらえたらと思います。配信中の私も、リアルでの私も、そして……特別な人の前での私も♡」
僕の端末は今すぐ爆発してもおかしくないくらいだった。
僕の心と同じく。
配信が終わった後、廊下でノナメとばったり会った。
「お疲れさま」
「……聞いてくれて、ありがと」
「いつでも聞くよ」
彼女は少し考えてから、言った。
「今度、配信じゃない普通の歌も聞かせてあげる。あなただけに」
「楽しみにしてる」
僕たちは微笑み合った。
隠すことの大切さと、分かち合うことの尊さ。
そして、その両方を経験することで生まれる、特別な絆の存在を。
僕たちの関係は、もう単なる「相互不可侵契約」ではなかった。
それは確実に、何か、新しい関係に近付いていた。
そして、その成長もまた、僕たちが分かち合う新しい秘密として、大切に育てていこうと思った。
昨日あげようと思ってあげられませんでしたー!
また忙しい日々が続きますが、応援していただけると嬉しいです!




