表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/41

13.恥じらいと本当と接近

【主な登場人物】


僕 / 本名・志月 緒人。主人公。やや内向的で、妄想的。いたって普通の高校生男子。


篠上純夏 / 黒髪ロング。容姿端麗頭脳明晰。無表情・敬語・論理的な思考を持つが、ある日失われた時代の「恋愛と性に関する古い人間の本」に出会い、性的なことに異様な興味を抱く。


天乃天音 / ピンクのボブカット。明るく小悪魔っぽい性格で、主人公をよくからかってくるムードメーカー。その無邪気さと素直さが、逆に破壊力抜群。


花野ちとせ / ミルクティブラウンのふわふわウェーブ。何を言っても怒らず、ほんわか返してくれるその優しさに、気づけば心が溶かされていく。無自覚エロスで主人公を追い詰める。


御堂みこと / 金髪ハーフアップ。風紀委員として、制服の着こなしや問題行動を正す。と言っても、第六学園には風紀の乱れは無く、過剰に暴走気味。


 放課後。


 自習室の奥。


 静かな窓際。


 そこに黒髪の少女──篠上純夏がいた。


 いつものように本を開いている。


 その表情は無機質で、まるで彫刻のよう。


 でも彼女の存在は、なぜか奇妙な熱を帯びて見える。


 僕は図書室で借りた本を自習室で読んでから帰ろうと思い、純夏に目をやってから気付かれないように座った。


「あ……」

 

 すると、そこに、御堂みことが現れた。


「……篠上さん」


 声をかけると、純夏は首を傾けてみことを見る。


「……御堂さん。どうかしましたか?」


「その……彼に悪影響を与えてるって……言ったこと! 謝りたくて!」

 

 あれ? みことが謝ってる……?


 僕は少し離れた席から、ふたりのやり取りを見ていた。

 

「いえ。事実です。私が勉強の集中力を奪っているのは確かです。御堂さんの指摘は正しいと思います」


「っ……そう。なら、いいのよ。いいけど? でも、べ、べつに謝ってほしくて言ったんじゃないからっ!」

 

 みこと、完全に自分でもよくわからない状態じゃないか。


 一方、純夏は相変わらず冷静で、みことだけが空回りしてる。


 なんか、見てて微笑ましいな。

 

 みことは咳払いをして、視線を泳がせた。そして純夏の机の上に置かれた本に目をやる。


 ──それは装丁のない古い文書。


 あの禁書だった。


 彼女は自然な動作でその本を手に取る。


 そうせずにはいられなかったように。

 

「せ、性交とは、感情の極致において行われる生物的行為である……?」

 

 その一節が目に入った瞬間、みことの思考が完全に停止した。


「────なっ……」


 僕は思わず声を出す。


「なっ、なななな……なによこれ!? え、え、えっちなこと……?」


 そういえば御堂みこともかなり頭が良いはずだ。


 蓮ヶ崎でトップの第一学園に入学を希望してたらしいから。

 

 突然の声に、純夏が不敵に笑った。


 気がした。


「静かに。他の人にバレてはいけません」


「なっ、こっ、こんな……」


「禁書です。旧人類の学術文書で、ある場所から見つかりました。内容の大部分は”感情”と”愛”について」


「……い、いけません! いけませんったらいけませんっ!! そんなの、完全に──」


「でも、私は……読みました」

 

 その言葉に、みことの表情が変わった。何かに動揺しているみたいに。


(みことも、何か感じてたのかな……)

 

「私は、まだ理解できていません。でも……読んだあとは、変でした。身体が熱くなって、心拍が上がって……理由もないのに、ある人の顔が頭に浮かんで……」


「……!」

 

 純夏の言葉に、僕の胸がドキンと跳ねた。


(ある人の顔……?)


 そんなことを考えてしまう自分に驚く。

 

「き、きっとそれはっ! 読んだからよ! だから、へんな気持ちになったんだわっ!」


「そうでしょうか? 読む前から、私は少し……おかしかった気がします」

 

 静かに言う純夏。


 その言葉が、なぜかみことの心に深く刺さったみたいだった。


 みことも、最近何かおかしいって思ってるのかな……。

 

 息を吸うのが苦しそうで、頬が赤くなっている。


「……もう、わかんないわよ……ぜんぶ……」

 

 呟いた声は小さく震えていた。


「私も……勉強に集中出来なくなりそう……そんな……こんなことがこの世にあるなんて……」


 そのみことの姿を見ていると、僕も胸の奥がざわついてしまう。


「ある人と話すと、何か胸が締め付けられるような……苦しくて……でも、どうにもできなくて……」


「それについては私にも経験があります。つまりそれが……」


「性交したいってこと……?」


「おおむね、そう考えて良いと思います」


 よく聞こえない。


 声をひそめて話している。


 断片的に聞き取るので精一杯だ。


「えっちなこと……信じられない……。生物同士で子どもを作るなんて……」


「古代では人間外の生物でもできたそうですよ」


「そんな……私……! ちょ、ちょっともう、行くわ」


「他言無用です」


「当たり前よ!」


 何か言って御堂みことは去っていった。


 でもどうやら、彼女も禁書に……僕たちの秘密に触れたようだった。


 その日の放課後。


 僕は校舎裏手の花壇で、一人で手入れをしていた。


 クラス花壇は草だらけで、緑化委員は誰だったか……。


 天音?


 そんな気がする。


 日が暮れかけていた。


 花はもうとっくに散って、緑色に染まった桜の木が風で揺れている。


 そんなとき──

 

「……あの! あなたって、変……よね」

 

 不意にそう言われて振り返ると、みことが立っていた。


日間200PV……(うわごとのようにつぶやいている。かなり危険な状態だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ