閉開
幻はいつの間にやら
消えて名も無き雲となり
閉じこもっていたこの身は
誰かが戸を叩く音で震わされる
かすかに日の匂いがした
曇った鏡を見るのは久方ぶり
そこに映る自分は
曖昧で
人から言われて初めて気付く
変わりよう
元の私ってどんな人であったのか
思い出せずに
ままならない日々を歩く
また閉じこもっていたい
けれど
あそこはもう他の誰かが今入っているから
知らぬ間に伸びた髪が
揺れるたびに
胸の奥を疼かせる
どこかに落としてしまった
大切な何かを探すように
空を仰ぐ
私の中に
そっと残る
 




