表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨歌  作者: 雨宮雨霧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

2025年9月短歌まとめ

2025年9月短歌まとめです。


訪ねても誰も出てこず背を向けるああそういえばもういいんだな


赤色のリボンをほどく指先に光るリングに彫られた名前


暇がないあなたに注ぐミルクティーどうか無理せず微笑んでみて


あれほどに降った雨すらもう乾き広がる青は憎いくらいに


届かない願いは海に捨てられたヒビの入った小瓶はゆられ


雨粒は頬を伝って花びらのように散りゆく夏のおわりに


運勢を見ながらパンを貪って姿形もない新世界


一等を取っても罪を償えと言われて尻を初めて恨む


人生の線路を繋ぐまたひとつ回り道でもして遊ぼうか


息の根を止めた私を見下ろして振り向く先に揺れるカーテン


小舟漕ぎ三途の川の岸辺への視界は狭く花の道のり


ニワトリに餌をやっては横入りをするスズメにも残りをあげる


天国へどこでもドアのノブ回し広がる白と花だけの世は


絞り出す言葉に映る鏡面に私はあなた あなたは私


花束のリボンを巻いた植木鉢枯れた想いを未だに抱いて


見下ろして眺めた珊瑚今日からは海の底から見上げるらしい


衝動に駆られて走る静寂を振り切るような屋上の風


沈み込むように眠ったパソコンの光は組んだ腕を照らして


急斜面転がり落ちるおにぎりは泥にまみれて息を絶えさせ


舌を出しわざと煽った背を追って水しぶき散る海の彼方へ


生きていることを実感したかった折った骨から流れる時間


呆気なく迎えた君と別れる日黒く塗られた日付を見つめ


身を預け静けさという雪の中凍った笑い声を想って


咲くことも叶わず枯れたひまわりを掬って捨てて見向きもしない


雨の日の鏡に映る指先に重ねた問いを解く者おらず


幸せな庶民が思う王様は笑顔も失せた遠き存在


童心に帰ってしようおままごと借金取りに追われるあなた


ポケモンを捕まえたあとどうするか放し飼いでもするのだろうか


三人で行動すればはみごだし二人きりだと気まずい空気


筆を置きため息吐いた冬の夜白紙のままの君との話


テレビ点け猛暑の中を行く人の気が知れないとコーヒーを飲む


頬に触れ交わした口を目で撫でる黒に染まってゆく共犯者


目を閉じて二度の眠りについた朝広がる花のゆれるスカート


突っ伏した顔を無理矢理上に向け闇に葬る裸電球


受け止めてくれるのだろうゴミ箱はクズと形容できない言葉


肌を寄せ夜空に咲いた一輪を目に焼き付ける秋の入口


談話室言葉を探す数秒に視線を向けた造花の花瓶


石を蹴り家に着くまで口ずさむ歌は途切れて寒空を舞う


人間が絶滅した世遺された言葉は雨に打たれ掠れる


透明に近付く空を仰ぐ目は瞬きもせず一点を見る


傷ばかり増える心を隠しては笑みを繕い表にみせる


砂浜に眠る小瓶のコルク抜き手には無数の花びら落ちて


会いたいが現実になる日もいつか言霊くらい信じ込んでも


憂鬱に沈む心と起き上がり仕事は脳を侵食しだす


小さくてとても読めない字を書いた過去は消えずに手先に残る


新しい季節とともに道を行く昇る吐息と透ける爪先


靴裏に踏まれた花はもう二度と立ち上がることなく死んでゆく


思い出もいつか薄れて眩さも忘れて闇に閉じこもる部屋


一瞬のことで帰らぬ人になる丘の下から飛び上がる鳥


ゲーセンに憧れる手を引きながら夢も光もない道を行く


計算をしながら折った十本の指は机に粉となり降る


救ってと頼んでいないなぜ君は頬を濡らしてまで手を握る


泣き疲れ眠った腕のぬくもりは木に溶け残る雪のようだと


雨の降る外を眺める桜の葉青さを忘れ枯色を知る


受け止めてくれるのですか感性を拙い文を紡いでいても


平日の憂鬱を溜め込んでいく回転椅子でばらまく夜更け


ヒーローになれたら弱い心をもそのまま包み抱えられると


ゲームだけしていたかった幼い日今は画面を見るも辛い目


肉じゃがを頬張りながら寂しさと孤独に胸を掻き回されて


飛び出した雨の強まる裏道に茂る草木は煽られて立つ


偶然の出会いであった人生の旅路は二度と交わらなくて


星空を眺めて歩く歩道橋ビルに囲まれ息が苦しい


いつまでも二人で生きていくのだと世に背を向けた双子の話


夜の道照らした降車ボタンすら見捨てるように闇に消えゆく


カーテンを開けた部屋へと差し込んだ雷光を目に焼き付けながら


誰の目に止まることなくバツを押す言葉はどこに残るのだろう


テント張り非日常を嗜んで半年経った部屋の真ん中


本を閉じ一息吐いた明け方にカラスはゴミを荒らし始める


いつからか自信は消えて着いて行くことに必死な失敗作に


飛び立ってみたなら行けるそう信じ宇宙のはるか下で花びら


愛だけを抱いて静かにねむりたい雨音を裂く雷鳴を聞き


ゆっくりとおやすみ君の亡骸の髪はあの日と同じおさげで


借景と寂れた団地ああ今日もお疲れ様とどぶろくを注ぐ


人当たりよいのが僕のいいところ毒を盛ったと知らずに口を


砂時計窓際に置きふと眺め星は涙になるのだろうか


死んでいる魚の並ぶ天国はLEDに祀られている


裏道はテッポウユリに囲まれてなびいた裾に彩る香り


雨に濡れ仰いだ空は薄闇に包まれ閉じた日記の続き


窓際で光合成をする冬の教室眺め黒板は白


擦り切れた便箋開く指先に落ちる涙は虹を映して


よく食べる姿見ながら目を通すLINEに君は気付いていない


成長をその目で見るも叶わない屍になる数秒の前


一本のろうそくゆれる縁側にねこのしっぽは遠くを差して


争いも知らない姫は見下ろした青さに焦がす思いの行き場


負の連鎖断ち切るように立ったままびくともしない飛び出す子ども


一人旅君の写真に感想を早く向こうに行って一緒に


会える日を指折り数え三日月の明かりの差したベンチに座る


老い先も短くなった縁側に座って笑うこどもはいない


玄関に宿題広げヒグラシの鳴き声ともに犬が吠えだす


真っ先に冷えたジョッキを手に取って疲れも全部流し込み寝る


焦げてゆく鮎を見ながら夜を越す一人で座る炉端の隣


耳にしたこともない町降り立って歩いて過ぎる迷子の孤独


馬に乗り世を駆け巡る広い背を見ながら部屋の隅で孤独を


嘘重ね仮面の中で生きていく二度と心を打たれぬように


また外れ予報が当たることはなく雨に沈んだ命の欠片


踏みにじる想いは息をしていない膝から落ちた木々のざわめき


最後まで缶に残った薄荷飴いくつの夜も一人で過ごす


教室の掲示物剥ぐ誰一人居ない空間画鋲は床に


茄子を焼きそのまま塩をふりかけた皿に移さず食べる自由を


藍染まる空に残った夕焼けの色はゆっくり目を閉じて海


ベランダに溶ける紫煙を目の端に留めて話す別れと旅路


子守唄歌う帰りの公園のブランコ照らす三日月の哀


本心を隠そうと目を床に向け繋いだ手さえ離れてしまう


君は君らしく過ごせばいいのだと笑って神を裏で恨んだ


体温の伝う抱擁交わしつつ生きて帰れる保証はなしに


手のひらで犯した罪を丸め込むおにぎりをあげ誤魔化す家庭


迷い込むアゲハの蝶を窓越しに見つめて仰ぐ空は雨色


終電を逃して歩く家までの道に残したかなしい歌を


舌打ちをして過ぎ去った静寂に抱擁される夕の踊り場


コピーした写真を収め重なった記憶は床に散らばる木の葉


目を通す名簿に君の名前なく生きるも死ぬも口出しできず


パソコンを叩いて見えたささくれを千切って空に葬りたくて


夕暮れの空を眺めたあの頃の過ぎる窓から見えた東屋


意味もなく灰を落とした軒先にこっちへ来いと誘う麦星


拷問を受けても口を割ることはないんだ君を愛したいから


小説を撫でていく目はふと止まり吹き荒れる潮風を感じる


走り出すバスは闇夜を引き裂いて視界を通るザクロの生る木


つながれた手を振りほどき空を舞う白を染めゆく悪と正義と


顔色をうかがいながら選ばれた言葉は僕が救いを求め


満ちていく秋の空気は指に触れ月へと帰る道を照らした


試着して声高に褒められたのにお金は空に服はタンスに


動かない時計を置いた子供部屋あの日のままの散らばるおもちゃ


未来にも足を踏み入れたくはない今を知らずに生きていくのか


器用にも切られて縫った花は今二度目の秋を嗜んでいる


連絡のつかなくなったやり取りを見返しながら花を咲かせる


階段を降りて映った朝焼けの空を焦がしたタバコの煙


蒼空の下を歩いて深呼吸駆ける子どもの背を見届けて


グラタンを頬張る夜の至福だけ感じていたいワインを添えて


脱出を試み敗れまた進み授業の終わりまでの戦い


向日葵の種を握った窓際に流れる秋の風は攫って


悪夢から目覚める朝はいつ来るか炎くすぶる街を見渡し


別れ際目だけで話し人生の旅路に種を蒔いて生きろと


橋の下雨から逃れ目を瞑る流浪の日々に幕は引かれる


百日紅花を咲かせて彩った無機質な道自転車抜けて


約束を果たさぬままに閉じた目は紡いで繋ぐ薄れた記憶


靴磨き駄賃をねだる我が子無で鞄を覗く亡き妻の手記


からっぽの頭のままで歩き出す冷たい朝の視線を浴びて


店先に並び始めた柿を手に浮かべた君はもう居ないこと


一葉に映る残像青春はたしかに君で創られた城


貪ったハンバーガーの欠片見て近寄りつつく鳩と公園


親の背を見ながら育ちまた今日も見送りながら拳を握る


いつ振りの掃除だろうか抜けかけたプラグに溜まる埃を拭う


路地裏のねこと戯れ夜を越す星の見えない都会の隙間


砕け散る硝子はまるで雪のよう素足に滲む口紅の色


節分の豆は幾度と年を越しタンス裏から様子伺う


ひっそりと花壇に咲いた彼岸花また逢える日を待ち望む君


付録だけほしいとねだる親の目は冷たく呆れ明後日を見る


銀色の折り紙を折り羽ばたかす鳥は机に置かれたままで


いい夢を見ている頬をなでながら遠い海へと旅立つ貴方


秋風の通る窓際酒瓶を抱いて転がる日曜の晩


漆黒の髪をなびかす海風をまとめるように手のひら


公園に続く坂道栗は落ちイガの刺さった指先を吸う


ペン先の綴る世界は真っ白な布を纏って生きようとする


改札の前で漏らしたため息は続く後ろの人に影響


また巡る季節に耳を澄ませては聞こえるはずもない声に触れ


曇り空薄く映った影は消え現れた死の道に進路を


ひび割れた鏡に映る夏の雲破片を撫でるように進んで


ピラニアに噛まれたのかと錯覚し目を開け犬の顔が覗いて


一本のジェンガを抜いて崩れ出す心をこの目で見ているんだ


寂れゆく団地の中を歩くねこ壊れたフェンス先をくぐって


人と生きたくないんだと背を向けたいつか必ず命は終わる


夜を追う朝焼けの空仰げればすずめのように飛べる気がした


木漏れ日の降る大樹からささやきを受け取るたびに鳴き出す小鳥


独身を貫き君の逃げ道をつくって生きる道を選んだ


欠点を隠して笑う毎日に濃くなる影と僕じゃない君


パソコンの明かりも消えた午前二時残る命は私だけだと


蝉の声だんだん弱くなる秋の雨に濡れてもか細く生きて


銃を手に引き金絞る夢の中心は酷く打ち付けている


長袖の裾を捲って水仕事手間が増えたと愚痴をこぼして


注射針皮膚に刺さった感触を引きずりながら昼間のビール


くっついて離れもしない子犬無で片手で撮った日常は今


根本の原因はそうきっと僕生きる世界を間違えたから


幸せを掴むことなく月を見て沈む身体の溶ける過程を


再会を願うばかりの一人部屋湿った風は頬をかすめて


河川敷名残惜しさとさよならを春の流れる空気に触れて


考えず床の埃をなでながら茜に染まる部屋は歪んで


翻訳をしながら読んだ一ページ挫折も道の途中なのだと


焦るだけ無駄だと思え解き終えるまで睨み合う秒針の糸


もう二度と会うこともない閉じられた記憶は雨に曝される日々


毎日が終わればいいと星に言う自由な夜はまた明るさに


いつまでも一緒に生きていけないしいつ終わろうが変わりはしない


キャンバスは黒に近付き空白の余地もなければ姿も見えず


後悔をするなら最初から君と出会わなければ錆びることなく


2025年9月計183首

2025年計1610首


自選短歌月5首


息の根を止めた私を見下ろして振り向く先に揺れるカーテン

砂浜に眠る小瓶のコルク抜き手には無数の花びら落ちて

焦げてゆく鮎を見ながら夜を越す一人で座る炉端の隣

一葉に映る残像青春はたしかに君で創られた城

路地裏のねこと戯れ夜を越す星の見えない都会の隙間

こんにちは、雨宮雨霧です。

随分と涼しくなりました。

過ごしやすい時間も限られていますが、のんびり生きたいものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ