2025年7月短歌まとめ
2025年7月短歌まとめです。
銃を捨てた敵を見つけて手を上げた生きるか死ぬか神も知らない
引っこ抜き花は無惨に捨てられる人間もまた土へと還る
桜散るように貴方を守れると信じ乗り込む死への行く道
信頼をするだけ無駄と言い聞かせ辺りに尖る言葉を散らす
最後までアイドルだった君のこと雪の降る日にふと思い出す
倉庫から埃だらけの想い出が褪せることなく輝きを出す
肯定も否定もしない優しさを忘れられずに誰かに繋ぐ
建ち交わす雑居ビルからふと覗く入道雲の白さを覆う
屋根あるし三食あるし働ける刑務所に行く勇気はないが
つきまとう自由は重い責任と混沌と化す心を揺らす
泡沫はぽつんと消えて渦を巻く生きる不安と死への恐怖よ
冷房の効いた部屋から熱された廊下がなぜかふと鎮むよう
雨上がり傘は地面に手は絡め虹のかかった麓の願い
ビルの上雄叫びを上げ空を飛ぶ蛍のような街の灯火
鍵をかけ布団に潜りエロ本を読んだ翌日何故かバレてる
求人を見ながら金の重み知る一万円に敬意を示す
温室で育ったようなものだろう君は知らない過去の戦を
夏の夜海の底へと溶けていく愛とくらげと一足の靴
星屑の散った渚の前に立ち攫われた夏終わりなき旅
ああ君と同じ空気を吸っているもったいないし過剰摂取だ
サバンナで彷徨い水を求めては幻すらもぼやけて見える
蚊帳を張り眠りを誘う子守唄リンゴ畑の夢を見ながら
押し付けた手すりに残る吸い殻をなぞった指の先は燃えゆく
見つからぬものを求めて辿り着く地平線へと沈む茜よ
映り込む運河のゆれる水面は夜明け前へと歩みを進む
引き出しに仕舞ったままのパスポート天国行きの切符を買って
冷房に冷えた身体を包み込む熱気のこもる廊下の夕日
階段を駆け下りながらどう声を掛けるか悩み昇降口へ
手を振って居場所を知らす姿すら心を乱し胸に抱きつく
教室の向こうに見える海峡は雨の中へと姿を消した
色を変え夜空に咲いた花の火は散ると同時に心を残す
背伸びして買ったアボカド食べながら意識の高い人にはなれず
最期まで想えば次の世界でもキセキがきっと繋いでくれる
階段に腰を掛ければ袋から酒を取り出し夏を飲み込む
幸せに元気で生きてくれるなら願いは全て君に託そう
この星の何処かに生きる命へと願いを空に込めて眠った
呆気なく世界は終わるそういえば海月は水に溶けるんだっけ
船に乗りしばらく漁に出るからと別れた星は今日も輝く
ライターを取り出し願う言の葉は煙に乗って川へと昇る
瞑想をしながら夢の入り口に立って貴方の声が聞こえる
囲まれた陰キャの逃げ場あるわけもなく諦めて机に伏せる
ご主人の帰りは別に興味なく愛嬌だけを振りまくメイド
雨の降る心は今日も閉じ籠もり世界が終わるその日を待った
映り込む涙のような雨粒はひっきりなしに窓に吹き込む
隠すんだしっぽを持たぬ人間であるならこんな涙は見せぬ
この星を見ても貴方は気付けない消えたことにも死んだことにも
首筋を吹き抜けていく夏の風額を伝う汗を見捨てて
目を閉じて風に身体を預ければ涙は空に雨となりゆく
本望でない感情が湧き上がる生きているだけ偉いと思え
真夜中に見上げた空はあまりにも心の糸を一本にして
濡らしては嗚咽を抑え真夜中の光も差さぬひとりぼっちを
愛されてくれてほんとにありがとう最期はちゃんと笑って終わる
できるだけ猫背をなおし歩いてる隣に居ても浮かないように
新緑はいつしか深い面持ちで峰の先には昇りゆく雲
必ずやお前を殺すそう云った寝言か本音どちらも恐怖
なでながら猫の寝息に耳澄ませ生きていること生きていくこと
側溝の下を流れる雨水に視線を向けることなく去った
最期まで生かしてくれてありがとう幸せだったええ本当に
変わらない願いはいつか星になる優しく照らす人でありたい
滑り落ち部屋に響いた鈍い音器は粉のように白くて
慎重に一滴垂らし様子を見今に溢れる心の器
満天の星空の下野宿をし数え切れぬも眠りにおちる
ロマネスコツリーに見立て冬を越す伐採された木々を見ながら
また今日も負けじと蝉は鳴きしきる風鈴の音も掻き消すように
羽があるなら飛べるだろ人は言う飛べない理由も知らないくせに
一枚の空から降った白い羽屈んで見えた白百合の花
怪談を聞いた夜には眠れずに貞子になって皿を数える
月よりも星になりたい数のある命の中で燃えているから
人間をやめて私は輪転機になって刷って生きていきたい
目を細め檻から見える雑踏は車に揺られ遠い世界へ
ヒグラシの鳴く丘に咲く向日葵は明日を見つめて夕と別れる
夜の道付かず離れず歩んでは星を仰いで珠は零れる
振り返りそっと微笑む蜃気楼指の先には居ないはずだと
緊張を叩き潰して戸を開けるザッと集まる二つの視線
カリンバの音色の響く夏の宵共鳴しだす虫の歌声
行列をしゃがんで辿り蟻の巣を見つけて置いた三時のおやつ
ファミコンを買ってほしいと駄々こねる少年は今社畜生活
簡単に捨てられるわけないでしょう渚の揺れる言の葉の群れ
土足でも関係ないと言い捨てた君の心の深くは傷む
繋がれたBluetoothのその先に流れ続けるクラシック曲
ぼやけゆく輪郭なぞり頬に降る涙は空に還っていった
期待して比べて泣いて喰らいつき普通を求めなれない自分
光芒とともに現る虹の橋心に塩をぬられる気分
本棚に眠る句集を手にとって楽園になる言葉の世界
消えていく夢を忘れてまた今日も隣に座る死と紙一重
桃の皮つるんと剥いた昼下がり自分の皮は剥がさず食べる
こっそりと忍び込んでは盗み出す心の深い傷のアトリエ
雨の降る刻に流した夢の泡海に溶けゆく想いと時間
要塞の中で命をやり過ごす当たる音だと息を潜めて
しゃっくりが止まらず息を止めてみる効果はどうもなかったらしい
息切らし逃げる姿は滑稽でそんな大人は悪い人だと
窓を開けツンと差し込む透明な氷柱に触れる夜明けの空と
新札に未だ慣れないままでいる紙幣を数え間違えそうで
大空の下で溶けゆく棒アイス君の居場所も知らないでいる
水をやり涼しい朝に背伸びする朝顔を見て植木は笑う
昨日まで確かにここに居たことを思い出させる破れた障子
ねぇ誰が泣き叫べって言ったかな残りの指はあと九本だ
パラソルの下に涼みにやってきた貝殻背負う海からの客
あの星に掠れた声は届かない爆弾となる最期は火の粉
内側へ装飾花は枯れていく一年後にはなんて想像
筆箱のミシン目なぞる授業中命を終えた鉛筆の芯
栄養をしっかり取って夏バテをしないようにね母の面影
計画を綺麗さっぱり打ち水とともに流して枯れた朝顔
親友は海賊王になるために崖から海へ夢を散らした
ひとつずつ道を壊して行く場所を失いながら後ろへ下がる
また明日指は空気に溶けていく遠ざかる背は真っ直ぐに伸び
喧騒の中に飛び込み身を隠す裏切り者の行く末はもう
迷い込む道も分からぬジャングルに髪をほどいて身を埋めようと
外せなくなったマスクに恨みなく偏差値競う陽キャに揉まれ
足元に揺れる木漏れ日眺めては緑地に宿る蝉の命を
引っ越しの挨拶を聞き呆然と逆さまにしたてるてる坊主
陽炎の中を車は走り去る轢かれた夢は地面に伏せて
君からの最後の文を読み返し跡に重なる零れし真珠
青空に昇りし雲の行く先を考え眠る帰りの電車
テーブルに要冷蔵の人生を放って置いたから地獄行き
川の字で寝られないから十字架になって貴方の人生を負う
泥棒になったと嘘を吐いたから大泥棒に昇格できた
道並ぶお地蔵さんに手を合わせ視線を落とせば転がる頭
おめでとう花嫁になる特別な友達だから まるで海底
泡沫とともに命を見送って地球最後の瞬間を見る
指先に光るリングは想い出の波打ち際の色をしていた
消えた君探しに潜る濃霧にも邪魔され道を見失うまで
波を打ち散りゆく花の軌跡すら飲まれて跡も消えてしまって
かき氷垂らせば空の色染まり何処かに響く風の悪戯
月食を見ようと並ぶ人々を遮り並ぶ高層のビル
殻破り硝子も破り空仰ぐ罪は自分で今下したよ
君がどの道を行こうが構わない僕は無力だ信じるだけで
人生はこれで完成明日から竜宮城に旅をしに行く
使えずに財布に入れて二十年老いて使った肩たたき券
幽霊になって外から様子見る正座したまま動かぬ貴方
夢描くように開いた一冊の絵本は明日も机の上に
半分の月日を過ごすおにぎりはカビに食べられ地球を覆う
欺いて誤魔化したのは自身だと遠い何処かで迷子になった
また今日も余白ばかりの思い出に土を被せてトンネルを掘る
ひとり切り声は誰にも届かずに床に転がる熱さまシート
刃の当たる音の響きし夏の夜カットスイカに縁はなかった
台風の進路予想を見るたびに休校願い明日は晴天
死は光空に掛かった星空の軌跡を辿りねむりについた
畳まずに感情のないTシャツはしわ寄せが来ることを知ってる
目に触れることもなければ心にも残ることない言葉を紡ぐ
ええ死ねと言われたら死にますなので言ってくださいお待ちしてます
縁起でもないこと言うなそう云って涙を溜めるアフリカの象
炊飯のボタンを押せば米は星のように空を飛び交って舞う
提灯の光は遠く風に揺れ今にも消える誰かの命
公園の錆びた注意の看板は命を落とす線香花火
村人は花火の散った空を見て白い煙に思いを焦がす
夜空散る花の片鱗身を焦がし月から見える地球は青い
ツタ絡む物干し竿の錆を取り心の奥に仕舞った恋を
もう二度と貴方の目には触れられず帽子を深く歩けば命
結露する缶チューハイを飲みながら想いを捨てたベランダを見る
引き金を引いて震える照準は拒んで放つことを赦さず
応答を願い続けて百年の草木に隠れ途切れた無線
遠ざかる右手を夕になびかせて距離を洗濯しても意味なく
下手なりに力を込めるマッサージ明日には空を飛ぶ君のため
ヤドカリの殻に入れば話せますやはり無理です海に還った
ポンコツな一般人になれるなら明けない夜を願わずに済む
避暑地へと逃げ出すように蝉は鳴く青空さえも醜く歪む
果物が家にある日の野菜室宝を守るように門番
プリクラで目口鼻を加工して心も補正してしまいたい
雲の上姿を見つけ叫ぼうとしても地面に零れる言葉
最期まで紡いだ道は呆気なく風に飛ばされ君は笑った
自販機の夜道に漏れる百円を無視して飛んだ蛾の触覚に
夕を背に秋刀魚を焦がす囲炉裏の火遠い記憶のページをめくる
砂浜のお城はひとり夜を越しあの子は夏を忘れていった
雲に乗る夢を描いた丘の上見下ろす先に鈍行列車
死を願う母は幽霊だと云った眠れず祈る夜明けの命
また今日も命があった目をこすり重い体を空に沈ませ
雪を踏み澄んだ世界を見渡して行く方向も決めずに時を
うさぎ小屋藁だけ残し誰も居ぬ足跡に降る白い結晶
波の花散っては咲いて世は凍る欠けた人差し指を遠くに
2025年7月計181首
2025年計1427首
自選短歌月5首
首筋を吹き抜けていく夏の風額を伝う汗を見捨てて
ロマネスコツリーに見立て冬を越す伐採された木々を見ながら
夜の部屋三面鏡の前に立ち拳に散った赤い花びら
月食を見ようと並ぶ人々を遮り並ぶ高層のビル
雲に乗る夢を描いた丘の上見下ろす先に鈍行列車
こんにちは、雨宮雨霧です。
毎日暑くて嫌になります。
暑くて後書きを書く気にもなりません。
熱中症にはお気をつけください。