表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨歌  作者: 雨宮雨霧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

2025年11月短歌まとめ

2025年11月短歌まとめです。


秒針の進む世界に目を閉じて溺れていった闇夜の部屋に


透き通る頬に届いた指先は陽を反射して緑のゆれる


雄叫びを上げても君の元までは嫌なくらいに月はかがやく


目に見える落差に肩を落としてはずっと遠くに居る友に背を


本を手に毎日歩く通学路喧騒の中消える言の葉


無の中に光る星屑手に取って今まで捨てた夢を潰して


部屋の隅縮まり座る秋の朝前世はきっと埃であった


縁側に差し込む月の灯火は雲に隠れてよわく泣き出す


真夜中にドラマを見つつコーラ飲む罪悪感をその身に背負い


月光のゆれる静かな部屋に座し手首を伝う血を指で撫で


筆ペンを滑らし書いた文を読む幼さ隠すこともできずに


雨の日の湿気に唸る教科書を捲り描いた棒人間と


埋まらない心に触れたやわらかな言葉は膜のような毛布に


今年こそ逢いたかったと口端を歪ませ青の空に向かって


目に見えず姿もここにないとしてそれでも海に繋がる絆


空港の近くにできた公園のベンチに座り子供心を


真っ黒に塗りつぶされた思い出の絵は跡形もなく空を舞う


異文化を理解しようと言う者は人を選んで笑みを浮かべる


山脈の上から望む地平線ビルは林のように並んで


人ひとり消えてもなにも変わらずに動き続ける社会の隅に


どこからか澄んだ空気に混じりゆく金木犀の咲く小道まで


指先に髪を絡ます癖を見て明るく声をかける星々


冬空の広がる朝に愚痴を吐く陶冶のような肌の赤さに


粉々に破いて捨てた賞状をゴミ箱は喰う燃える命と


壁際に飾った推しのチェキたちを眺める夜はあの日を映す


鍋囲む冬の団らんどこまでも続けばいいと願う日常


星屑に委ねる背中明日には君の前から消えて生きるの


苦しみを抱えたままに笑み浮かべ誰にも意味もなさずに失せる


断片は次第に薄く影落とし朝は来ないと笑った君の


海藻にまぎれてゆれる長い髪珊瑚の光る水面を仰ぎ


階段を駆けて五階の踊り場の景色を眺め友達を待つ


イケメンと騒ぎ立てるや一瞬で舌打ちを打つ隣の友は


調律を終えたピアノは雨音に混じり音色を奏でて踊る


なかよしと言っても所詮画面上無様に並ぶ言葉を消して


喜びを表面だけで伝えても心に残る渦巻く毒気


もし僕が居なくなったと仮定して星を何度も憎む姿を


しっとりと漂う風はあと少しすれば降り出すことを知らせる


愛情に飢えた心を持ち出して日が暮れるまで四葉を探す


暇をして無心に白い天井を見つめて描く無数の遊具


サックスの音色に耳を奪われる音楽室の偉人とともに


本棚の隙間に白の紙切れを挟み未来の自分を生かす


無知のまま夜空を飛んで離れゆく星は涙を拭って光る


差し伸べてくれる人などいないんだ孤独の海に溺れる月夜


手を繋ぎ歩いて歌う童歌赤に染まった紅葉を拾い


どれだけの傷を負っても立ち上がり復活できる人になれない


脳内に響く悪魔のささやきに屋上までの道のりはすぐ


また明日まるで呪いのようなのに途切れた道の先に咲く花


抉られた心は元に戻らないどれだけ空が美しくても


苦しんで傷つく夜のざわめきにせめて明日は雨がよかった


腰を掛け暖炉のそばでねむる猫ページを捲る指先の火


階段で待ち伏せをするカマキリと目が合い上げる悲鳴は泡に


狛犬と交わす晩酌また今日も怒られたんだ不甲斐ないよな


赤色の掠れたインクあぁまるで日は昇らずに海に溺れて


泡沫になってはじけた恋心幸せそうに手を繋ぐ君


雨の降る海へと溶けた亡骸は誰かの目にも止まらず沈む


まだ生きているとはとても思えない過去の自分へ死に損なった


石ころを蹴って下った坂道の横にそびえる丸い街灯


真心に背を向け何度刃を向けて傷つけたのか君の亡骸


ナン千切り無心で食べた数分後辛さに悶え苦しむ時間


傾いた本を整え振り返る先に広がる茜の空は


すり減った靴裏に目をくれもせず雨が降ろうと今日も労働


死にたいと思えるうちは死ねないともしそうならばよかったのにな


砂浜に漂う紫煙この月も焦がしてしまう君のその手で


蜂蜜を垂らして混ぜるティーカップ紅茶に映る君の面影


方言の飛び交う町に灯りゆく商店街の明かりの隙間


裁判もへらへらしてさそう君は変わらないんだ別れた片手


閉じこもり幾つ時間が経ったのかトイレの前で唸る家族と


元カノといえばいいのか画面越しそれもこどものお遊びだった


目の前に広がる海に流れ着く小瓶が夢に溢れていれば


いつまでも誰かの日々に溶け込んで生きるあなたを羨む私


まだ生きているとはとても思えずにいつしか過ぎた三年もの日


七夕に願った星は瞬いて叶えることもなく燃えていく


雪の降る外を映した窓枠は冷えて帰りをひたすらに待つ


吸い込んだ金木犀の香る道水辺に染まる小さな花と


ポッキーを咥えて君の目を見つめなんて妄想度が過ぎる夜


あたりめを噛み千切っては同僚の愚痴をひたすら聞かされ夜更け


面影も消えた私に気がついてくれるだろうか甘い香水


雨の降る夜に沈んだ一瓶の手紙は明日珊瑚と眠る


盆栽の手入れをしつつ緩む頬誰にもそんな見せない顔を


温めたお茶を一口飲みながら遠い何処かで血を流す人


繕った笑顔をみせて生きていくしかし剥がれぬ偽のレッテル


結露する窓に映ったオリオン座ぼやけても尚煌々として


ばかだって思うよ君は仕事でもエゴでもなくて優しくするの


三年後またこの海に帰るから気ままなねこの姿は見えず


日が昇り空虚な部屋を照らし出す憎いくらいに朝焼けの差す


騒音の響く町中泣き声も掻き消されゆく孤独の暗さ


貯金したお金は空に羽ばたいて手元に残る無数の記憶


眠れずに飲んだミルクのぬるさすら忘れて憎む鳥の鳴く声


擦りむいた膝を抱えて笑う子の痛みに触れる強さももたず


赦してよ死ばかり願うこの日々に終止符を打つ愚かな僕を


色づいた葉は落ち道を赤に変え対象的な空の淡さに


正解のない生き方を解きながら君に出会った問いはなかった


紅葉に包まれた道風なびき冷えた片手を冬にとられて


人生の主役を代えて生きていく何者にすらなれないだから


匿った記憶は誰も壊せない地面に張った氷を蹴って


最低のままでいいんだこれからの人生までも蝕めないし


振り返る道は寂しく葉も落ちて大人になった心を抱え


どれだけの傷を負わせて苦しめたかも分からずに星空を飛ぶ


夕暮れの通学路へと舞い込んだ落ち葉は風に乗り旅をする


毎秒のように流れる文字列はタイムラインに乗り消えていく


花を摘み見上げた空は淡く澄み涙に暮れる君を抱きしめ


ゆらゆらとゆれる炎のすぐそばに身を焦がしつつ走る木馬を


団らんに流れる時は穏やかに家族を守るやわらかな膜


逢うこともないのでしょうがどうしても生かしてくれた君に感謝を


あの星に届かなくとも手を繋ぎ願った夜の想いは褪せず


寝食をともにし生きたあの日々はこの手の中で泡沫となる


見送って踵を返しふと思う別れを告げたタクシーの中


冬の夜あなたに渡す物語冷えた机にもうそれはない


無機質な夜道に零す涙すら彼方に飛ばす最終電車


白百合の咲く夕暮れに唇を重ねて止まる思考と時間


死を願う自分は今日も息をしてあの子は二度と息を吸わない


道筋に蒔いて歩いた人生を振り返るとき笑えるのなら


移りゆく季節を眺め過ごす朝木々は顕になっても立って


DJと化して予報が伝えられそれで明日の天気はなんだ


道端にひっそり咲いた名も知らぬ花は冷たい視線とともに


コピペして送った愛のない言葉なにも知らない君の笑顔を


夢の中だけでも君に逢えるならどんなに暗い夜でもいいの


決められたレールも錆びて雨を浴び途方に暮れた心は泡に


舞い落ちてどこへともなく消えていく枯葉のような自由がほしい


屋根に乗り嗜む秋の風はもう頬を突き刺すように冷たい


朝露は朝日を浴びてきらきらといきたくないと思う心に


帰り道これから塾に行くんだと言う友達が羨ましくて


反抗を重ねて逆の方角へ進み迷った挙句の果てに


森の奥無心で歩きふと仰ぐ木々から漏れる光は希望


目覚めたくないほど君と手を繋ぎ春の日差しを浴びたあの道


諦めて死ねたらきっと今頃は水面に映る三日月を見て


同情に混ざる冷たい視線から逃れた空は雨雲の中


ネイルした指先を見る幸せを壊してくるは大体自分


ため息を漏らしその場を立ち去った彼はそれから戻ってこない


木かげから流れる針のような風白く昇った吐息の向こう


液晶に映る姿は誰よりも醜く映りエンターを押す


関係もいつかは途切れ記憶から消えるのならば今終わらせて


懊悩に溺れる日々に一粒の雨は連なり尽きることなく


こだまする声の方向向き直り走って探す記憶の欠片


床に座し無心で注ぐ白ワイン洒落っ気もない雰囲気のまま


毒を混ぜ放つ言葉は矢となってそれすら知らぬ社会は回る


祈りすら届かない夜きみは飛ぶ痛みも全てこの海に溶け


何年も飛び込められたぬいぐるみ「またね」だけなの背中は消える


片付けた部屋を眺めてこうやって大人になってすべてを忘れ


もし今の支えとなった君が消えひとりになれば命は終わる


枯葉舞うベンチに座り仰ぐ空時の止まった時計をそえて


鉢植えに張った氷に差し込んだ夕日は星にバトンを渡す


また別の道を選んで生きていく普通を望む硝子の向こう


なれなくて望んだものは空からも降ってこないし道も見えない


またいつかあなたに逢えたときくらい生きた自分を少し撫でたい


いつまでも白い心で居られたら床は綺麗な赤にならない


あの頃と何ら変わりはないけれど君は一生あの頃のまま


誰からも見向きもされぬ世界ならみんな他人で済んでいたのに


木漏れ日を浴びて寝転ぶ昼下がり若葉のゆれるささやかな声


隙間風吹き込むたびに震えては死にたがっても生きていること


好きなのに叶わぬ恋を身に背負い笑みを振りまく嘘の仮面と


見定めるように泳いだその瞳敵か味方か獲物か毒か


この海の一部になって波を打つ小瓶を運ぶ役目を背負い


人生の分岐点すら見失い振り返っても閉ざされた道


濁らせた言葉は毒となってゆく布団に潜る夜中の三時


砂利の中綺麗な石を探そうと冬の日差しを浴びる少女の


約束を契った指を切り落とす今も何処かで願うあなたへ


留守電を知らせる青は点滅し闇に飲まれた部屋を見渡す


比べても何度泣いても意味もなく未だに息をしている不思議


星屑のように瞬く夜の海くらげの誘う死への道のり


枯れもせず命も持たず咲く花を指先で撫で明かりを灯す


のんびりと過ごす昼間の霧雨は青すら雲に閉じ込め嗤う


クレープを大事に持って輝かす瞳が闇に消える瞬間


過ちを懺悔できればこれほどの地獄のような星空はない


生きていた過去の自分が見る景色進化もできず学びもない世


やわらかな日差しを浴びて咲く花に気付くでもなく別れる春の


からっぽの部屋に差し込む月明かり心に空いた隙間を通り


切れかけの豆電球を灯し読む置き手紙すらまるで無機質


霧の出る夜道は闇に葬られ見えぬ未来に駆られる不安


ありがとう生かしてくれてこれからの道は貴方が進めばいいわ


レシートの墓場となった百均のケースの上げる悲鳴は雨に


相談をせずとも軽くしてくれる君が潰れてしまわぬように


一生を夢で過ごしていたいとか星空だけを見ていたいとか


雨音の響く電気も切れた部屋空に近づく白い天井


渦巻いた得体の知れぬ感情に手駒にされる人生だった


後悔もせずに別れた君のことそれでも頬を伝う熱さに


市場前通り過ぎても背中には幾度交錯した言葉たち


ああほんととてつもないな押し込めた記憶の蓋のずれるときまで


いい湯だなときたま触れる白い肌冷えた目をする横切るアヒル


閉じ込めただけで決して忘れてもいないと知った凍てつく夜の


真っ白で純粋無垢そう君の望みは誰も叶えやしない


葉の落ちた一本の木は風に揺れ雨雲すらも動じずそこに


まばたきも一つもせずに流れゆく時間は毒と化して蝕む


温めた甘酒を手に持ちながら過ごす家族の時間は夢に


一輪車疾走するや坂道の麓まで行く友達を追う


泣きながらうなずく君は持ち上げる一点と化す黒い銃口


レトルトのカレーで過ごす五日間電子レンジもあまりに遠く


月夜へと帰る苦しみ目を瞑る最期を想う世界は暗い


生きてとかエゴでしかないあぁそうだ一人じゃないよエゴだとしても


宝石のように差し込む月明かり拾うでもなくただ目に焼いて


カーテンの向こうに透ける朝焼けに深呼吸する祭りの金魚


返答に迷い途切れる会話すら思い出になる過ぎた年月


生きているだけで汚れたこの心タワシをこすり深まるなにか


変わらないように過ごせばいつかまた巡り会えたり話せたりとか


生きているうちに忘れていく記憶冬の日差しに透ける金柑


人生の分岐点すら見失い一直線の道すら途切れ


鉛筆を転がし今日の運勢がいいと出るまで占うテスト


なにもない背中に背負う偽物の翼は空に飛べずに宙を


意味もなく机の横に貼るシール剥がした跡は軌跡になって


足音が近付く度に振り返る道にこぼれる日差しはゆれて


跡形もなく散っていく桜の葉青空纏う木々の枝たち


紫陽花の枯れた姿はそのままに季節を巡る散歩道より


来年も紅葉を拾いくるくると茎をまわしているのだろうか


優しさに触れれば雪のように溶け雲一つない冬の青空


また起きて日差しを浴びるこの日々は空の心を海に沈めて


これからもどうか一緒に生きていて月夜の浮かぶ水平線へ


何年もそこに佇む家具たちの背中に背負う傷は見えない


完全に溶けきるまではいいでしょう紅茶に沈むひとつの砂糖


また逢えるときまで生きているからと涙で冷えた手のひらにキス


アルバムに挟まる紙を手にとっていつかもらった言葉の欠片


詰められた袋の向こう知っている姿と違うあの日の少女


何枚も写真を撮ってくれる割なんでそんなに笑顔がないの


煌々と輝く星の見える夜またねと云って消える背中に


2025年11月計214首

2025年計2028首


自選短歌月5首

調律を終えたピアノは雨音に混じり音色を奏でて踊る

蜂蜜を垂らして混ぜるティーカップ紅茶に映る君の面影

ゆらゆらとゆれる炎のすぐそばに身を焦がしつつ走る木馬を

夕暮れの通学路へと舞い込んだ落ち葉は風に乗り旅をする

星屑のように瞬く夜の海くらげの誘う死への道のり


こんにちは、雨宮雨霧です。

すっかり木々の葉も落ちて冬を思わせます。

寒い日が続きますが、体調にはお気をつけください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ