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第二十三話 

前後から感じる圧迫感に、しかしミオは眉一つ動かさない。逆境に立たされてなお、彼女は努めて冷静に状況を再確認すると、視線だけを動かして言った。


「ゴルド、早くして」


「ったく、分かってるっての。そらよ!」


ミオの思考を読んだように、ゴルドが腰に携えていたハンドアックスを放り投げる。狙いはもちろん、部屋の端にいるアザミだ。


迫る凶刃を察知した彼女は、止む無く障壁を自分の前へと生成する。一方で、二枚目を張ったことにより、ミオの背後に先に出現していた壁の圧力が一時的に弱まった。


ミオはそれを見逃さなかった。


塞がれた両手の力を途端に抜く。自然とつんのめったオークの巨体をかわし、床に落としていた拳銃を拾いあげることコンマ数秒。その脇腹に向けて引き金を二度引いた。


大砲の間違いではないかという威力と共に、オークの巨体が部屋の壁を突き抜けていく。その様子を横目に捉えながら、ミオは流れるように銃口をサキへと向ける。


「——させないってのっ!」


だが、そうはさせまいとアザミが三枚目の障壁を展開した。


サキの目の前に張られた壁は、出現と同時に弾丸によって破壊される。だが、彼女を守るという役目をきっちりとこなしてのことだった。


「ちっ、戦いずらいな。こりゃあ。仕切り直したいところだぜ、ミオ」


「……いや、これだけ近づける機会は今しかない。ここで退けば、次の襲撃の難易度が高まるだけ」


「確かにその意見には大賛成だが、あれはちっと予想外じゃないか?」


ミオのもとへ駆けつけたゴルドは、部屋の入り口を忌々しそうに見て言った。


弾倉を入れ替えていたミオもまたそちらへ視線を向ける。


扉の前にいたはずの博士の姿は見当たらない。あるのは無数の巨体。


つまりはオークの群れだった。少なくとも十数体は視認できた。


「アイツ一体だけだと思ったんだがな。まったく何体いやがるんだよ」


「多分、帝国の地下にある実験施設から連れてきたんだと思う。この砦が簡単に陥落したのが不思議だったけど、これで確信した。敵の主戦力は勇者とあのオークたち」


ミオが両目を細めながら言う。


「どうですかな、銀の魔弾? 我が子らは実に優秀でしょう。不細工ではありますが、よく言うではないですか、肝心なのは中身だと」


姿こそないが、扉の奥から博士の声が聞こえてきた。


老体め。我が身可愛さに兵士の集団の中へと隠れているらしい。


ミオが内心毒づくと同時、扉の前に立ちふさがっていたオークたちが突進を始める。


字義通り猪突猛進。


まるで猪でできた波のような迫力に、しかしミオは一歩も後退しない。


彼女は右手に握っていた銀色の拳銃をくるりと回転させた。


すると、どうしたことか、宙に舞う拳銃から別れるようにしてもう一丁の拳銃が現れる。


オークたちには武器が分身したように見えたはずだ。


もっとも、彼らがそのような些細な変化に気を配っていたかどうかは定かではないが。


ほどなくして反響する発砲音。


二丁の拳銃が火を噴き続けた。目まぐるしいマズルフラッシュが室内で唯一の灯りの役割を果たす。


火薬の臭いが体中に染みついたというころ、永遠に続くかと思われた射撃は突如終わりを迎えるのだった。


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