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第十八話 

視線を交えたのは一瞬だった。


次の瞬間には小さなナイフが喉元に肉薄していたが、予め張っておいた障壁がそれを阻む。


金属をコンクリートに打ち付けたような高音が轟いた。


空中に残ったナイフは、薄い膜のような障壁に止められつつも、勢いを失ってはいない。やがて、壁が切り裂かれ再びアザミに接近する。


しかし、またしても現れた障壁がそれを阻んだ。


「ちっ、思った以上に厄介な能力だな」


二枚目の障壁を前にして、闇から現れた生き物は舌打ちする。


ゴブリン……のような生き物に見えた。黒い外套を纏い、片手にナイフを握る小人のような生き物である。


小柄な体格に反し、獰猛な目つきを備えるゴブリンもどきを前に、アザミはなおも虚勢を張ってみせた。


「……どう? あなたの攻撃じゃ私たちには届かない。それに、彼女の準備は始まっているわ。あなた、お終いよ」


「へ、確かにてめぇの能力は厄介だ。だが、困るほどじゃねえよ」


自身が陥っている状況とは裏腹に、ゴブリンもどきはフッと鼻で笑ってみせた。


まるで、先ほどまでの攻撃が全て準備運動であったかのように。


「これも、あまり使いたくはないんだがな……。仕方ねえ、あとでアイツに適当な理由をつけて許してもらうか」


アザミは異変を感じた。


いや、それは少し違うかもしれない。異変というよりも、危険な()()を感じとったのだ。


そして、その直感は正しかった。


直後、眼前で発光するゴブリンもどき。


文字通り光を放つ彼から反射的に目を逸らす。一拍置いてすぐさま視線を戻した時、アザミは思わず目を見開いた。


そこに立っていたのは、小さなナイフを握るゴブリンもどきではない。


二メートルはあるだろうか。金色の鎧を纏った巨大な騎士が、そこにはいた。


「な……」


何が、と問いを発する暇も、現実を理解するだけの時間もアザミには与えられていなかった。


ふと、強い衝撃が彼女を襲った。


ガラスが粉々に砕け散るような音が室内に響いた。それは、先ほどまで幾重にも張っていた障壁が、容易く打ち砕かれる音であることにアザミは気づく暇もなかった。


強い力によって体は後方へと吹き飛び、壁へと強か(したた)に叩きつけられる。


体内の酸素が全て引き抜かれたような感覚に、苦悶の表情を浮かべながら、アザミは視線だけを前にやった。


「少し派手にやりすぎたか? いや、そんなことはあるまいよ。お前にはこの剣を振るうだけの強さがある」


辛うじて見つめた先、そこには、やはり黄金の騎士がいた。


両手には大剣が握られていた。騎士の身長と同等のサイズを誇る得物である。


それを薙ぎ払ったような状態で持っていたため、先ほどの衝撃は、かの大剣の斬撃が原因であったことを、アザミは瞬時に悟る。


「ああ、そうだったな。この姿に驚いているのか。外見なぞ、飾りにすぎぬというのに、どの世界でも、人というものは見た目にこだわるものだったか」


茫然としていると、騎士が突然、語りだした。


兜をかぶっているため、顔こそ見えないが、その声は確かに騎士が発したものだった。


そして、場違いな感想だとは思いつつも、アザミは騎士の語調にどこか気品のようなものさえも感じた。


「……あなた、さっきのゴブリンなの?」


答える必要もない問いかけに、しかし、黄金の騎士は正面から答えてみせるのだった。


「そうとも。とある性悪女の呪いでな、この姿を保つことは難しいが、これが本来の私である」


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