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第十六話 

男の体内で激痛が(ほとばし)った。


次に視界が暗転。眼前まで迫っていた少女の顔が遠ざかっていく。


男は地面の上に崩れた。体の中心が燃えているかのようだった。


熱した杭を腹部に突き刺されたような感覚。今なお体の中心から広がっていく激痛に、男は確信する。


撃たれたのだ。


しかし、少女の両手に銃型の霊魂器(れいこんき)は見当たらない。実際、彼女が短刀へ持ち替えた時に、それを地面に捨てたのを目撃している。


ならば、新手によるものか? いや、わずかな力で周囲を探ってみたが、自分と彼女以外の気配は感じられない。ともすれば……。


男は頭だけを動かし、背後だった場所に視線をやった。


そして、疑問の答えを悟った。


「ありえない。いや、そんなはずはっ……!」


その光景を目の当たりにして、男は瞠目(どうもく)する。


地面に打ち捨てられた銃型の霊魂器。その銃口から、射撃後を物語る硝煙があがっていた。


どういうことだ? 男は思考を巡らせる。


銃が偶然、暴発したのか? ……仮にそうだとしても、正確に胸を撃ち抜くことなどあり得るのか? それとも、それ以外の要因があったのか?


「驚いたでしょう」


ふいに声がして、釘付けになっていた視線を頭上に移す。


気がつけば、銀髪の少女が男の頭の側まで近づいてきていた。


「その銃は暴発して、あなたを撃ち抜いたわけじゃないわ。紛れもない彼の意思によって引き金が引かれたのよ」


「……彼、だと。誰のことを言ってやがる」


「霊魂器。帝国の知識と技術を総動員して作られたその武器は、何も、幻獣の素材だけで作られたわけじゃないということ」


困惑する男をさておき、ミオは、かなぐり捨てられていた銃型の霊魂器まで駆け寄る。そして、それを大切そうに拾い上げて言った。


「この武器はね、勇者の死骸から作られているの」


男は黙りこくった。


男の瞳には(あざけ)りがあった。


そんなの戯言だと、にわかに信じがたいと、一笑に付してしまうほどの嘲りが。


しかし、同時に困惑もあった。


物語られた事実が真実なのではないか、それを受け入れまいとする自分がいるのではないか、と考えてしまって。


だからこそ、虚勢を張った。


「はったりだ。ベネテラで死した勇者たちは、元の世界へ還ると聞いているぞ」


「それは帝国が吹き込んだ嘘よ。不都合な部分を隠すためのね。第一、死んで元の世界に戻れるのなら全員そうしている」


ミオの突き刺すような言葉に、男はいよいよ、ふさぎ込んだ。


再び口を閉ざした男を前にして、しかしミオはここぞと続ける。


「彼らは言うわ。あなたたちに世界を救って欲しいと。思慮分別も曖昧な子供というあなたたちにね。勇者だなんだとおだてる。誰しも悪い気はしないでしょ。……本当は、自分が再利用可能な道具であるとも知らずにね」


男の瞳には、まだ迷いがあった。疑いがあった。


ミオの話を真実だと受け止めようとする心。戯言だと、虚構であると否定する心。


相反する感情がシーソーゲームを繰り広げている。


そんな彼のような者たちを、何度見てきたことだろう。ミオは打って変わって諭すような口調で告げた。


「私たちが真に戦うべき相手は七災魔じゃない。勇者の真実を、霊魂器を、本当の敵を知りたいのなら——」


その冷えた瞳には一点の曇りもなかった。

 

「私たちと共に来なさい」


その時。


まるでミオが言い終わるのを待っていたかのように、城砦の上空に派手な閃光が上がった。


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