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始まりの始まり
シルヴァマーレはその国で三本の指に入る栄えた街だ。
海に面した賑わうリゾートラインを小高い丘の上にある領主城が見下ろし、城から海まで緩やかに街が広がっている。温暖な気候で年中旅行客が行き交うリゾートラインは様々な色の宿屋やカフェ等が並び、街で一番活気溢れる場所だ。
リゾートラインの隣は漁港があり、新鮮な魚が毎日水揚げされ、街を訪れる人々の舌を楽しませることに一役買っていた。
その漁港からは大きな通りが教会へと続いている。その通りから枝分かれする一本の細い脇道を少し歩いた所に、一軒の古びた薬局があった。
白かったであろう壁に蔦が這い、薬局の庭から生える大きな木が二階の屋根まで伸び薬局を覆っている。
近隣の家屋が明るい壁や庭を持つのに対し、この薬局の庭ときたら薬草や野菜のみが植えられ、見栄えよりも実益重視。しかも季節を無視して茂っているものまである始末。なんとも不気味な庭である。
それもそのはず。
この薬局は、魔女が経営する薬局なのだ。
店主の名前はフランチェスカ。
年若い魔女で、明るい栗毛の持ち主だ。
特別美人でもないが、愛嬌のある顔で中肉中背の何処にでも居そうな女性だ。
特筆すべきは魔女特有の黒と黄のオッドアイ。
そのフランチェスカの薬局に、一人の男がやってきたことで物語は始まるのだ。




