困惑
無理矢理な展開でごめんなさい。
試作戦車が一式中戦車から二式中戦車になろうとしている頃、ヨーロッパから驚天動地の問題が発生した。
【 ナチス・ドイツとソビエト社会主義共和国連邦による世界平和のための同盟 】
長いので独ソ同盟と呼ばれる同盟条約が結ばれた。
世界中が狐につままれたような反応をした。独ソ不可侵条約の時よりも不思議だ。
しかし、条約の内容が公開された時、世界は驚愕した。
南北アメリカ大陸を除く、他の地域に影響力を及ぼしドイツとソ連の同盟国にしようというのだ。
同盟国と言っても、事実上の属国だろう。これではトルデシリャス条約ではないか。
国際連盟が批難したが、既に形骸化し実行力の無い組織が言っても相手にもされなかった。第一、独ソとも加盟していない。
ヨーロッパは、北と南は既に分けられているようなものだ。東欧は反応が別れた。中近東は、トルコがドイツ寄りの姿勢を見せた。ロシアなど大嫌いだ。
独ソに対抗できる軍事力を近隣諸国は持っていない。仕方が無い事と世界が受け止めた。
イタリアは既にドイツの同盟国であり、この条約の対象からは外れている。
全イギリスが泣いた。そして、なりふりかまわない姿勢で外交を繰り広げた。
影響は日本の航空機開発関連にも出ている。
ドイツとの関係悪化により、輸入するはずだった兵器などが届かない。20ミリマウザー砲もそうだ。将来的にホ-103の威力不足を感じ取っている陸軍では、20ミリ級航空機関砲の開発と共にドイツ製20ミリ機関砲も入手しようとしていた。
独自開発のホ-5の実用化を進めようとするが、会計から待ったが掛かった。大蔵省軍事監査課だ。海軍は既に航空機用20ミリ機関砲を搭載しているのに、陸軍が全く違う航空機用20ミリ機関砲を開発するのは無駄で有る。
海軍の物を使え。
また、発動機もドイツ系のアツタやハ40を新規採用機種に載せるのはどうかという忖度も示されたが、既に試作まで開発が進んでおりそのままとされた。
大蔵省軍事監査課は、陸海軍の軍事費が正しく使われているか監査するために新たに組織された。大蔵省だけでは無く、陸海軍の人員も組織に加わっている。
海軍は、大和・武蔵の予算獲得で大嘘を付いて監査の対象にされている。とても厳しい。水交社も監査対象だ。
陸軍は、関東軍と参謀本部や陸軍高官の不明朗な資金の流れがアウトだった。大連や哈爾浜、本土では赤坂とかで豪遊している者が多かった。
陸海軍の人間は、そういった不正行為に反対して冷遇された者が中心になっているので、目の付け所が厳しい。
そして、陸海の垣根を越えて仲良くなった。
無駄を減らそう。そう思うには時間は掛からなかった。
装備の共通化が進んだのは、この時からだった。
海軍では7.7ミリ航空機銃の威力不足から13.2ミリ航空機銃の開発を進めていた。それも待ったが掛かった。費用と時間、人材の無駄で有る。共用せよ。
弾薬製造ラインが有る?たいした規模では無いでしょう。ホ-103の弾薬製造に改造しなさい。
不祥事からこちら大蔵省軍事監査課は、軍に対して上位に立っていると言ってもいい。資金が無ければ続ける事も出来ないので、唯々諾々と従うしか無かった。7.7ミリ機銃自体は機銃と弾薬も相当数在庫が積み上がっているし、今から機種変更をしても現場の混乱も有る。7.7ミリは無くなりそうなので、このままとされた。
航空機銃(陸軍では航空機関砲)は、13ミリがホ-103。20ミリが九九式となった。九九式でも一号銃(エリコンFF)は弾道特性が悪く命中率が悪いことが判明。二号銃(エリコンFFL)に切り替えることとなった。*2
困ったのは、開発中の航空機だった。海軍機はまだ良い。最初から20ミリ装備で開発されている。
陸軍機が問題だった。予定されていたホ-5と寸法が違うし、砲口馬力も違う。共にやや大きいのであるが、多少の変更で済んだ。
生産中の機体については陸軍は13ミリ装備で開発されているので、20ミリを積もうとしない限り問題は無い。つまり武装の強化は出来ない。
開発中の試作機に不思議な機材が上から供給されるようになってきた。イギリス製通信機やエンジン関連部品である。
何故?
1942年初秋、日英同盟が復活した。
アメリカが驚いた。
独ソは日本への警戒を強めた。
柱島泊地から見渡せる山々の紅葉も終わろうとする頃。
「出港用意」
「出港用意」
大艦だけに伝達だけで時間が掛かる。
既に第二水雷戦隊は早瀬から瀬戸内海へ出ていこうとしている。
本艦は似島の北を通過し厳島の南を廻る航路しか取れないので、広島市内から丸見えだ。
関門海峡も不安が有り、素直に豊後海峡から太平洋へ。
高雄で全体が合流し、シンガポールへと。
イギリス派遣艦隊 旗艦 大和
第一戦隊 大和 長門 陸奥
第三戦隊 金剛 比叡
第四戦隊 高雄 鳥海 摩耶 愛宕
第二航空戦隊 飛龍 蒼龍
第六一駆逐隊 秋月 照月
第四航空戦隊 瑞鳳 翔鳳
第八駆逐隊 朝潮 大潮 満潮 荒潮
第五航空戦隊 翔鶴 瑞鶴
第六二駆逐隊 涼月 初月
第六航空戦隊 千歳 千代田 (水上機母艦)
第七駆逐隊 朧 曙 漣 潮
第二水雷戦隊 旗艦 阿賀野
第十五駆逐隊 親潮 黒潮 早潮 夏潮
第十六駆逐隊 初風 雪風 天津風 時津風
第十七駆逐隊 浦風 浜風 谷風 磯風
第四駆逐隊 野分 荻風 舞風 嵐
第三水雷戦隊 旗艦 川内
第十一駆逐隊 吹雪 白雪 初雪 叢雲
第十九駆逐隊 磯波 浦波 敷波 綾波
第二十駆逐隊 天霧 朝霧 夕霧 狭霧
第一補給部隊 旗艦 間宮
間宮 伊良湖 樫野 明石 他特設給油艦など14隻
陸軍輸送船団 34隻
第五水雷戦隊 旗艦 名取
第二二駆逐隊 皐月 水無月 文月 長月
第二三駆逐隊 睦月 如月 弥生 卯月
第四三駆逐隊 松 竹 梅 桃
日本海軍実働部隊の半数近い艦艇が所属する。イギリス他各国に本気を見せるためだ。
艦隊には、補給部隊も随伴する。他に徴用船数隻が参加している。特筆すべきは陸軍輸送船団も同行していることだ。直衛に第五水雷戦隊が付いているのも重要性を物語っている。特に第四三駆逐隊は最新鋭の駆逐艦で、まだ6隻しか完成していない。辛うじて訓練満了と思われる4隻で駆逐隊を編成し編入した。
艦隊補給艦が多いのは、航空機運搬船が4隻入っているからだ。陸軍輸送船団にも陸軍機を積んだ船が数隻入っている。
特設給油艦の内、黒潮丸は先行してパレンバンに向かっている。油は向こう持ちだ。パレンバンで船舶用重油を受け取ることになっている。
航空揮発油は現地で補給を受ける協定が出来ている。
この中の数隻には、イギリスから供与されたレーダー、アズディックが装備されている。また、航空機用を含む日本製電子機器も真空管がイギリス製やアメリカ製になっており、性能・信頼性とも向上している。
シンガポールでの補給と休養後、大和・長門・陸奥の第一戦隊は四航戦と愛宕、摩耶、第三水雷戦隊及び分派される補給部隊を伴いケープタウンに向かう。大和がスエズ運河を通過できないためだ。長門と陸奥は主砲弾とバラスト水と重油を降ろせばなんとか通過できるが、万が一ピッチングを起こせば容易に艦首や艦尾が運河の底に着いてしまう。長門と陸奥も大和と同行することになった。*3
*2 後に搭載機である零戦二一型の主翼強度が不足しており、機銃発射の反動に負け機体(特に主翼)が縒れて集弾性が悪化していたことが判明。三二型からは主翼強度他各部強度を向上。
*3 当時スエズ運河の水深は10メートルらしいです。
参考はこちら
https://www.penta-ocean.co.jp/business/project/suez_story/index.html
予算が絶対的には減ったが、戦力が減った数程に予算が減らされていないので相対的に豊富になったのと日英同盟の影響で増えたため、一部艦艇や機材などが早期に配備されています。既に史実と違ってきていますので、史実と違う機材が出現します。
そのため、第四戦隊の主砲が一部20センチ砲だったのが全艦20.3センチ砲になり、高角砲も全艦八九式12.7センチ連装高角砲4基になっています。魚雷は酸素魚雷搭載設備が間に合わなかった艦も有ります。
他の各艦も色々と装備が更新されています。