出られない部屋
「おはよう」
帽子を被って少し黒っぽい妖精が、羽をパタパタさせていう。
「おはよう」
その次に、白いウサギの格好をして、羽がふわりしている妖精がいう。
メグもいう。
「おはようだね」
これで、何度めの朝だろう。
もう数えるのをやめてしまった。
「ねえ、ホントに部屋からはでられないの。きみたちは、出入りできるんだから、出入り口があるんじゃない?」
「妖精だからね」
「そう妖精だからね」
妖精二人して、いつもの答え。
「ヒントは三十年かなぁ」
「三十年じゃ、わからないけど」
「時間は、葉が落ちていくようなものだ」
「そうゆっくりと、ときに素早い動きで確実に落ちていく」
「やっぱりよくわからない」
「ねえ、出口はあるの」
「出口はあっても、入れないよ」
「そう、入れない」
「やっぱりよくわからないよ」
「今日の欲しいものは何」
「買いものだよね?」
どこをどういくのか、妖精たちは毎日買いものして帰ってくる。
「ねえ、お金はきみたちあるの」
「オーナーが持ってるから」
「そう、だから、買いものして持ってくるだけ」
「ねえ、オーナーって誰なの」
「それよりは、欲しいものは?」
「じゃ、トランプでも買ってきて。トランプやろう」
「わかった。あとは、果物でもいるかな」
「買ってくるね」
「いってきます」
妖精帽子がいう。
「いってくるよ」
妖精ウサギがいう。
今日も部屋にひとりの時間ができるが、部屋からはでられない。
掃除やろう。
あと片付け。
あとは帰ってくるのを待つ。
それだけ。
……本当にそれだけ。