再会の丘と妖精の花
再会の丘は、駅前から三十分ほど歩いたところにある、少し小高い丘だ。
円形でぐるっとまわりながら少しずつ登れる狭い道路が続いている。
進んでいき半分ほどくると、残りは整備された芝生があり、今度は階段が続く。
階段を登りきると最後にはてっぺんにつき、小さいベンチが三つほど、離れておかれているだけの場所だ。
この整備された丘に、妖精の花が咲くという。
三人は、話しながらなんとか階段を登りきり、てっぺんの広い場所にでた。
その先のベンチには、先についていたトワカとAIメグの姿がみえる。
なんとか息を整えつつ、トワカとAIメグの側までたどりつく。
「妖精たちは、まだ来てない」
マユがきく。
「探したけど、会わなかったよ」
「待ち合わせまで、もう少しだね」
トケルンをみると、十五分前だった。
「ここは、なかなか眺めがいい」
カラトもうなずく。
芝生がキレイに広がり、丸い丘のてっぺんに、様々な花が咲いている。
「妖精の花の目印はどういうのだろうか」
トワカがきく。
AIのメグが答える。
「妖精の花は、文献はありません。でも、メグの記憶ノートに、少しだけ書き込みがありました」
「そっか、妖精に聴いたときに、メモを残したよ、たしか」
メグが答える。
「ここの周りには、サークルは一つもできていなかった。きっと、過去からこの時間まで、特別な場所なのかもしれない」
「そっかぁ」
メグがうなずく。
トワカは、ベンチに座りながらメモをとっている。
トワカにしては珍しく手書きだ。
カラトがきく。
「いまは何を書いてるの」
「おそらくあと十五分後に起きることにより、ネットにあげていた預言を書き換えることになるだろう。ここまで、崩壊を拡げてしまった責任がある。最期まで、それを見届けて、それを記録に残さないと」
「AIメグにも、残すようにいってあるよ」
「そうです」
AIメグが返事をする。
マユがいう。
「もう、トワカさんって考えが古いですよ」
「ここまできたら、皆がいます。妖精もきっときます。きっと、ここにいたるまでトワカさんが頑張ってきたから、集まったんですよ」
カラトもうなずいて、
「そう、トワカさんのレポートとトケルンに導いてもらって、ここまで来られたんです。ありがとう」
トワカが返事をした。
「そうか」
「このいい天気のなか、皆集まって、あとは、妖精たちを待つだけ」
メグがいう。
そして、妖精たちのことを話しているうちに、時間がきた。
七月一日、お昼の十二時ちょうど。
マユがトケルンをみて、
「十二時だね」
と話すのと、妖精のピピックとポテッタがくるのは同時だった。
階段から、二人の妖精が上がってくる。
「きたよ」
「きたね」
「集まったね」
「集まれたね」
「よかった。崩壊に間に合ったよ。さあ、妖精の花をみつけよう」
この妖精たちは、すぐに話しだす。
その妖精たちに向かって、メグが走っていく。
「よかったぁ。探したよ」
「メグさん、久しぶりだね」
「久しぶりだ」
「そうだね。トワカさんとAIのメグさんもいるよ」
「みんなきたよ」
妖精ピピックとポテッタがいう。
「そうだね。みんなありがと!」
「ありがとう」
「さぁ、妖精の花を探そう。妖精の花をみつける言葉をみつけてきたよ」
「この言葉を探して、妖精に聴いてまわっていたんだよ。小高い丘に咲く妖精の花。それは再会の花。デバイスをかざして、妖精の名前をいう。記憶ノートをかざして、記憶から風を呼び起こす」
「風のうずまく中心に、その花はみつかる。再び妖精の名前を呼ぶ。呼ばれた妖精がそこに、手を置いた先に、その花はある」
「さぁ、皆やってみよう」
ベンチの側までやってきた、妖精たちをみんなで迎える。
挨拶もあまりなしで、すぐに実行してみる。
カラトと、マユとメグがそれぞれ持っている時計デバイスをみんながみえるように、腕を前にだしてかまえる。
「ピピッポテテププック、ププピタッドポテッタ」
みんなで声を揃えていうと、時計デバイスの表示がコンパスのようになり、記憶ノートを指している。
妖精からうけとり、メグが記憶ノートをひらく。
記憶ノートが、光ってる。
そして、なかの文章を読むように、文字が光っている。
メグがそれを読む。
「妖精の花、それは再会の花」
すると、小高い丘の周りに風が集まってくる。
渦のように集まり、花をゆらす。
「そうか、あの場所にあるんだね。いこう」
トワカとAIのメグがいう。
妖精たちと一緒に、風が集まる場所に移動する。
そして、その中心の風に向かって、ピピックとポテッタが手を繋いで、前にだす。
「ピピッポテテププック、ププピタッドポテッタ」
そう妖精二人がいうと。
二人の手の真下に、小さな花が揺れているのがわかった。
風が去っていく。
カラトとマユがしゃがみこみ、その花の名前を呼びかけた。
「リリラリルム リミルレレルラ」
すると、その小さな花は開きはじめる。
「これが妖精の花なんだね」
「妖精の花だ」
すると、その小さなの花は足元に集まるように、地面から延びていき、次々に花をひらいていく。
丘一面が妖精の花で埋められていく。
「わー、すごい!」
マユがいう。
「まるで、魔法だね」
丘に拡がった妖精の花。
その花を一つだけ、摘みとった。
「これが妖精の花だね」
ポテッタがいう。
「そうだね」
ピピックがいう。
「話しの通りだね。みんなありがとう」
「これで、妖精ノートが再生できるよ」
「その花はどうやって使うのですか」
AIのメグが記録に残そうと、きいてみた。
「妖精ノートは、ノートにデバイスを埋めこんで、過去と未来をつなぐよ。でも、それだけじゃダメで、この妖精の花で作った少量のインクで、持ち主の名前を描くんだよ」
「すると、時間とのつながりを再生して、妖精ノートになるよ」
「そうなんだ」
「メグ、そしてみんな本当にありがとう。この妖精ノートと記憶ノートが未来をつなぐよ」
「預言者のトワカ、もう安心していいよ」
「未来が進んだ。妖精ノートが滅ぶ危険はなくなった。これで預言者の預言は、はずれたんだ」
「よかった」
トワカがいう。
「預言者の預言は、はずれてこそ、やりがいになる。また、次の幸せな預言を創ってみせるよ。そうだろう、メグ」
AIのメグが返事をする。
「トワカは、いま幸せですか?」
「ああ、この一面に咲く妖精の花が観られて、それで満足だよ。時間移動を繰り返して、コールドタイムをして、残したい風景がみつかった」
メグがいう。
「わたしこの花、みたことある」
「わたしの部屋に飾ってある絵があるの」
「ねえ、カラトさん、あの絵だよ」
カラトは、うなずく。
「たしかに、そうだ」
マユは不思議に思う。
「なぜ、カラトさんはその絵を持っていたの」
カラトは思いだす。
「あれはテンダーを開店させるときに、受け取ったものだ。それをきみが気にいったから、あげたんだね」
「開店祝いとなっていたけど、いま考えれば、妖精がくれたのかもしれないね」
ピピックとポテッタがうなずいている。
「妖精のなかには、時間移動の管理に疲れて、花を探してまわる者もいる。きっと絵が描きたくなって、それを気にいったカラトにあげたのかも」
「そうだったのか」
カラトはうなずく。
「その妖精にも会えるといいなぁ」
マユがいう。
「テンダーで、待ちましょう。きっとまたお店にくるよ」
メグがいう。
「そうだね。二号店もできるし、はりきらなくちゃ。さっきのベンチに戻ろう。もう少し、この景色をみていよう」
心地いい風は、どこかにいき、もう夏の日差しがあり、暑くなってきている。
ポテッタがいう。
「手に持っているのはサンドイッチだよ。ここで、みんなで食べよう」
手に持っていたバックから、サンドイッチと飲みものをだしてくる。
「じゃベンチに集まって、みんなでね」
メグがみんなにかけ声をかける。
ベンチの周りに集まって、みんなでサンドイッチを食べて、飲みものを飲み、そして、この光景を忘れないように、しっかりと心に留めておく。
先にピピックとポテッタが、お別れをいいながら、みんながいるこの場から離れていく。
「再会の花。またみんなでここで集まろう」
次にトワカとAIのメグが、お別れをいう。
「サンドイッチおいしかったね。飲みものも。またみんなで集まろう」
「もう少しこのメグと旅をして、エラーを治していきたいんだ。安定させて、そしたら、次の預言を描くよ。じゃまただね」
残された、サンドイッチと飲みものを最後まで食べて、カラトとマユとメグは、
「忘れものはない」
と声をかけあう。
「ゴミももったよ。このバックどうしよう」
「とっておいて、次会うときに、妖精たちに返そう」
「そうだね」
「本当に、この景色いいなぁ」
マユは、ようやく言えそうな言葉を思いきっていってみる。
「カラトさん、今度デートしてください」
カラトはいう。
「わかった。マユさんありがとう。返事少し待ってもらっていい? メグさんのこと解決できてよかった。でもお店の二号店考えてるし、オープンくらいまで、忙しい」
「わかりました。待ちます。メグさんもオープンまで忙しいけど、まだテンダーでできそう」
「大丈夫です。カラトさんは心配事ばかりだなぁ」
三人して笑いあう。
「妖精の花、キレイだね」
カラトはいう。
「これはいつか、きっといつでも思いだす、最高な思い出だ」
メグはいう。
「また来よう」
マユがいう。
「それまで、お別れだね」
「じゃ、またね。妖精の花」




