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トワカ、妖精との出逢い

 トワカは考えていた。

 AI(えーあい)のメグと崩壊をとめるヒントを探して旅をしていて随分経つが、やはりダストテンダーのこと、カラトの過去、そしてメグがヒントになるような気がする。


 けれど、それがどの時間軸でつながるのか。


 コールドタイムを設定してある、あの建ものには、この時間移動を管理するためのサーバーとAIメグの人格要素の一部を管理保存するためのコンピューターを置いてある。


 こうしてAIメグとVRを使って旅できるのも、未来と過去の二ヶ所にサーバーを置き、同時に人格とバックアップを常に更新し続けているからだ。


 しかし、そろそろ戻って、これまでの記録や記憶を整理すべきかもしれない。



 そして、決意して戻ることで、出会うことになった。



 AI(えーあい)のメグにガイドを任せて、トワカは駅の黒いサークルに飛び込み、そして、アパートまで戻ることにした。

 コールドタイムを設定した部屋のうち、一つはテンダーと関わりあるメグの部屋だ。


 なかに、ひとは住んでいないはず。

 なぜなら、メグが行方不明になったからだ。

 だから、部屋を凍結して、いつ戻ってもいいように、この部屋を残すことにした。


 トワカの預言では、いなくなったメグが、この崩壊のカギになるような気がしたからだ。



 そして、メグの部屋の前、ドアのノブをまわすと凍結されているはずの部屋のカギが開いている。

 カギを開けずとも、部屋に(はい)れてしまった。そして、気がついた。


 部屋に誰かいる。


 誰だろう。

 姿を発見し、そして驚いた。

 AIのメグにも予想できなかったことだ。



 部屋には三人いて、一人は探していたメグ本人だ。


「あなた、トワカさんね」

「はじめまして。ようやく会うことができた」


 他の二人は、カラトとマユのようだ。


「驚いた。よくこの部屋に入れたね」

「それどころか、行方不明の本人がここに滞在していたとは」

「あなたが閉じ込めたんじゃないの? トワカさん」

「いや、違うよ」


 だけど、心当たりはあった。


「そうか、あの日追いかけてきたきみは、黒いサークルに触れて、コールドタイムまで追いかけてきたのか。そして、その瞬間に立ち会うことで、位相を越えて、なかに入ってしまったのか。気づかなかったよ」

「位相を越える……そんなことができるの」

(げん)にできた。それが時間移動の可能性さ。でもそうか、これでもう一つヒントをみつけることができたよ」


 カラトが尋ねる。


「はじめまして。もしかして、トワカさんは、ずっと時間崩壊をとめるために、旅しているのですか」

「そうさ。このAIのメグも一緒だよ」


 AIのメグは気づいて、挨拶をする。


 VRではないため、指輪のスクリーンから画像が浮き出して、という姿である。


「みなさんはじめまして。AIメグです。そちらのメグさんは、ひとのメグさんですね。はじめてお会いできて、嬉しいです」

「わたしの性格の(もと)は、あなたの記憶ノートを参考にしています」


 メグがきく。


「はじめまして。AIのメグさん。わたしのノートって」

「そうです。三十年の時を越えて、あなたのノートが発見されて、それをわたしのベースに使いました」

「もしかしたらテンダーに集めていた、調査ノートかな。メグさんが調査依頼をこなすために、手紙のようなノートを作ってくれていたよね」

「ええ、たしかに。でも、カラトさんそんな先まで取って置いたの」

「まさか、わかるわけないよ。未来のことだよ」

「まぁ、そうなんだけど……」


 マユも尋ねてみる。


「わたしたち妖精に会いました。妖精のことは知っていますか」


 すると、AIのメグは驚いている。


「妖精を知っているの。まさか。本当にいるの」

「そうよ。もう少ししたら、買いものから戻ってくるよ」


 すると、トワカまで驚いている。


「そんな。じゃこの空間にみんな集まっているのか。驚いたな」


 そう話していると、トワカが入ってきた玄関から、妖精二人が入ってきた。


「おや、トワカさんお帰りかな。いや、はじめてかな」

「はじめまして、妖精帽子のピピックです」

「はじめまして、妖精ウサギのポテッタです」


 いきなり普通に話しができる妖精をみて、ますますトワカは混乱しているようだ。

 メグはいう。


「おかえりなさい。ピピックとポテッタ」

「二人の言ったとおりになったよ。トワカさんがきたよ」

「そうだよ」


 とピピック。


「そうだね」


 とポテッタがいう。


「これで崩壊からの次のステージだ。妖精ノートに記録しなくては」


 ピピックは妖精ノートを取り出して、書き込みをはじめる。

 代わりにポテッタがいう。


「トワカさん。おかえりなさい。あなたと会えるのを楽しみにしてたよ。コールドタイムから三十一日、早かったね。もう十年はかかると思っていたよ。何か崩壊からのヒントがみつかったね」

「妖精は何でも知っているね。驚くばかりだ」


 AIのメグは、スクリーンのなかでおおきな動作をしている。

 そういえば、いまのメグの姿は、とても妖精に似ている。


 何か言いたいことがあるみたいだ。


「妖精さん、まずはAIメグの話しを聴いてくれないかな。そのあと、ここから先にある崩壊のとめかたを考えるよ」


 トワカはAIメグに話しかける。


「メグ、妖精に話しがありそうだね。どう考える」

「妖精さん、信じられないことだけど、本当にいたのね。はじめまして」

「トワカの未来の預言について、ずっと話して考えていたの。そして、わたしと一緒に、AR空間で探していたわ。そして、一つひとつ探していくうち、仮説ができたの」


 ピピックがいう。


「そう。ではきかせてほしいな。崩壊がとめられる」

「まだ不明。でも、ポイントはカラトとマユにかかってるみたい」


 カラトとマユは驚いてしまう。


「どうして? どうして、マユさんと自分なんだろう」

「トケルンが、つないでくれたヒントを基に、三人とトワカが協力をしないといけない。そして、ここの妖精さんにも協力を」

「わかった」


 今度はポテッタがいう。


「およそ崩壊が予測されるDT33から先の未来、妖精ノートが失われるよ」

「そう、その記憶ノートを揃えて、未来に送るの。その役割をカラトとマユにお願いしなければ。そこに、メグが妖精たちを連れてくるの」


 今度はメグが驚く。


「わたしが妖精たちを……」

「そして、トワカとAIメグが場所を設定して、未来を特定してくるよ。きっとそこで、妖精の奇跡が起こるんだ」


 ピピックは、真面目に妖精ノートに書き込みをしている。


「でも、何故そこにみんなが必要なんだろうね」


 ピピックがいう。


「何か知っている、ポテッタ」

「もし妖精の奇跡があるなら、それは妖精の花のことかもしれない」

「そうか、妖精ノートを新しく作るんだね。妖精ノートは妖精の花がなければ、完成しない」

「失われるこのノートの続きを記憶ノートから復活させなくちゃいけないのか」

「何どういうこと」


 マユは混乱する。


「妖精ノートの役割は、少し先の未来の道しるべになることなんだ。このノートに妖精が書き込みをするのは、限定された未来を描いてるよ」

「そして、いまみんなが集まったことで、失われるこのノートの続きを(たく)す妖精の花を探すことが、わかったよ」

「そうか、いま未来が限定されたんだね」


 カラトがうなずく。


「妖精が描いた限定された未来を、しっかりとつないでいく役割が必要なんだね」

「それに、カラトとマユが選ばれたよ」

「そして、記憶ノートを管理するのに、メグが最適なんだ。メグの記憶がノートに書き込みされて、未来AIメグの基になるんだよ」

「その記憶ノートを妖精の記憶データバンクから、取り出して、時間移動のデバイス開発を始めたのがトワカなんだね」


 ようやく、トワカは自分の役割に気づくことができた。


「そうか、そういうことか。みんな繋がりがあったのか」

「未来にアクセスした、データバンクは妖精が組み立てた、記憶ノートのデータだったのか。それをもとにAIメグと未来に立ち上げることになったダストタイム社の時間移動デバイスか」

「妖精が管理していた時間と移動に関する未来のデータが、何かの作用で、きみのものになったんだね」

「トワカはやはり、預言者だった。きみが描いた未来デバイスによって、みんな集まることができたよ。ありがとう」

「でも、待って!」


 メグがいう。


「妖精の花は、どうやって見つければいいの」

「大丈夫。いま妖精ノートに書き込みされたよ」


 ピピックがいう。


「未来が限定されたんだ。カラトたちが使う駅に近い、花の咲く丘に、2x54から三年後のメグの日付けにて妖精の花が咲く。目印は記憶ノートに今日記憶される花の名前。AIメグが三種類の時計とともに、再生の祈りをこめると完成する」


 ピピックとポテッタが同時に、話しをする。


「さぁ、再会の花に合うキレイな名前を決めようか。カラトとマユと、そしてメグが揃ったこの場所で、いま約束の話しをしよう」

「……わかった」


 とカラトが返事をする。

 マユが嬉しそうに、


「再会だね」


 という。

 メグは楽しそうに、


「また皆で集まるんだね!」


 という。

 そして、みんなで決めて、記憶ノートに書き込みをした。



 妖精の花の名前、再び集まるための名を。

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