呼ばれた気がした
翌日になり、マテリオフィスのヒロさんと合流して、ヒロさんに未来と時間移動について説明する。
すると、物件屋をしているヒロさんは驚くことはなかった。
どうやら、ここのアパートのオーナーも未来に関連したひとだからなのだろう。
そして、部屋の前につき時間移動の準備をして、彼女の部屋の扉の前で深呼吸する。
しかし、そのあと足を前に進めてみてカラトとマユは驚いてしまう。
部屋の前にきても、意識が飛ぶことなく、カギをあけて部屋のなかに入れたからだ。
サークルはどこにいってしまったのだろう。
たしかに野良サークルではあったから、それで突然消えてしまったのか。
部屋のなかには誰も見あたらない
けれど、何か違和感がある。
「メグさんがいるような、そんな気がする」
「どういうこと」
マユはきくがカラトとしても
「よくはわからない」
ただこの部屋に入るその一瞬の時に観たような気がするらしい。
もしかしたら、位相が違うのかもしれない。
そんなことも思うカラトだ。
いや、やはり気のせいなのか。
一度、ドアからでて確かめようとすると声がきこえた。
「カラトさん」
ふりむくとマユが呼んでいる
「どうした」
「これ」
机の上にメモが置いてある。
カラトあてになっている短い手紙の束だ。
みてみるとメグさんの字だ。
「でも、何故ここにおいてあるのかな」
郵便でだしたというわけでもない。
まるで、ここにきてほしかったみたいな手紙の量。
一枚めを手にとってカラトはその場でみてみる。
カラトさん、調査の件ですが、サークルを閉じるのはもう少しあとにします。
もう少し調査してみます。
二枚めを手にとってみてみる。
調査の件で、ききたいことができました。
三枚めを手にとる。
腕輪をした女性は知っていますか。
まだまだ続きそうだが、どうやら調査報告と日記をかいていたみたいだ。
「メグさんはこれをカラトさんが読むつもりでかいていたのかな」
「たぶんあとから見せる気になったのかも」
「調査報告は調査ノートをつくってたよ」
「メグさんは調査ノート以外にこれをヒントにしていたんだね」
「手紙をまとめて読んでみよう」
カラトは手紙を読みはじめる。
マユはほかにもヒントがないかと、部屋のなかを少し見学してみる。
カレンダーや置き時計、飾られたままの洋服などある。
ふとみると、金属加工されたアイテムはないように思う。
普段しまう場所は決まっているのだろうか。
それとも持ち歩いたままなのか。
思い出す。
トケルンはやはり彼女のものかもしれない。
登録名がメグになっていたはず。
ほかには何かヒントはないだろうか。
何か思い出せそうな気もするが、わからない。
ここにいるとなんとなく時間の錯覚を起こしそうになる。
まるで時が止まったように感じるのだ。
それは時計もすべて時間を止めているからなのかもしれない。
トケルンをみてみる。
トケルンはときをきざむ。
カラトはまだ手紙を読んでいる。
手紙の内容も気になるが、部屋にきたときの違和感は消えない。
ヒントや思い出がここにあるような気がするのだ。
けれど、マユにメグさんとの思い出はない。
探しているのはカラトさんのかもしれない。
カレンダーに丸とかきこみがあるのに気づく。
みると今日の日付だ。
カレンダーの日付の下にはカラトとかいてある。
何故……?
今日カラトさんがくることを知っていたようなかきこみだ。
「カラトさん、カレンダーみて」
カラトが近づいてきてみる。
「どういうことだろう。今日の書き込みだね」
「妖精の効果かな。なんとなくそんな気がするよ」
カラトさんはそういった。
カラトさんは、移動を繰り返しおこなううち、妖精の影をみるようになったのかもしれない。
「きっともう少しで妖精と会えるかもしれないのかな」
マユはひとり言のようにつぶやく。
「わからない。けど、もしかしたら、メグさんは近くにいるのかもそんな気がするだけ」
「手紙には何てかいてあったの」
「これまでの調査に関してと、行方不明になる間際の行動があったよ」
「部屋に何かをとりに帰ってきて。それきりなのかもしれないよ」
「そう」
「ただ妖精に関して、何か進展があったみたいだ」
「妖精の声をきいたってかいてある」
「声、じゃホントにいるのかな」
「そうきっと、妖精いるのかもしれないよ」
メグさんが近くに感じられると、カラトさんは子どものようにふるまう時がある。
それをみて少しマユは寂しくなる。
でも妖精に関しては進展があってよかった。
手紙はそこで途切れてしまう。
自動メッセージはやはりメグさんだったようだ。
カラトさんが通るところにヒントを置いていったのかもしれない。
カレンダーもそのひとつなのだろう。
「あとはなさそうかな」
「そうですね」
「そろそろ引き上げで大丈夫ですか」
ヒロさんが聞いてくる。
「そうだね」
「ところで、ヒロさんきいてもいいですか」
「何でしょう」
「ここのアパートのオーナーは、間違いなく未来からのひとですね」
「でも、なぜカギの刻印がテンダーなんですか」
「わたしにはわからない。ただ、カギを渡されるときの手紙に、未来のテンダーによろしくと。そう書いてありました」
「あとAIと会話しながら、ていうことしかわかりません」
AIと会話。
「もしかしたら、VRゴーグルをつけたひとですか」
「姿まではわからないけど」
「すると、カギのマークは未来のわたしがつけたのかもしれない。カギを便利にしたいといわれたら、修理するかもしれない」
「じゃカラトさんは、三年前と、それから先でまたそのひとに会うのかも」
「そうだね」
「ヒロさんありがとう」
「いいえ」
「帰りましょう」
こうして三人して、メグの部屋から帰ることにする。
ふと、呼ばれたような気がして、カラトは部屋をふりかえる。
カラトさん……って言っていたような。
妖精って。
いや、気のせいか。
カラトも部屋をでることにする。
カギもしめた。
このカギは、メグが戻ってきてもいいように、テンダーで預かろう。
しかし、カラトはまたここにくるような気がしている。
なぜだろう。




