ダストテンダー
住所をたよりに向かってみると、古い看板にダストテンダーという文字があるお店があった。
まだこの時間なら、おそらくは営業時間ではないか。
扉を開けて、なかに入ると最新の通信機器やグッズやイヤホンなど、数多くの電化製品やアクセサリーが揃っている。
ショーケースのなかにはみたこともないような機械もある。
どういったお店なのだろう。
買い取ったものだろうか。
「いらっしゃいませ」
と声がかかる。
「錆びつきの修理やメンテナンスですか? デバイスのメンテナンスもやってますよ」
何故錆びつきの金属製品だとわかるのだろうか。
やや不審に思いながら時計をとりだして、店員がいるカウンターにそれをおく。
すると、
「あなたは、拾いもの屋ですか」
と聞かれた。
「拾いもの屋とは、何ですか? よくわからないけど……」
と聞き返す途中に
「いらっしゃいませ」
店員がそう言う。
次のお客さんがきたようだ。
「この前預けたブレスはまだ修理かかりそうかな」
そして、カウンターに近づいてくると
「このひとは、拾いもの屋さんかな」
と同じように質問されてしまった。
仕方なく、
「違います。拾いもの屋って、一体何のことですか?」
すると、時計をみながら対応してくれている店員が問いかけてくる。
「デバイスの初期化、説明からだと時間かかるから、そしたら、先にこちらのお客さまの修理渡すのだけ時間くれるかい」
説明時間かかるから、といわれてしまっては、あきらめて待つことにする。
「いいですよ。先にどうぞ」
答えて待つことにする。
ブレスのお兄さんの説明と対応は十分くらいで終わる。
どうやら説明内容から、修理にはもう少し時間かかるらしいことは、わかる。
「ありがとうございました」
お兄さんは、とりあえずまた次くることにしたらしく、帰っていく。
「あまり知らないみたいだから、デバイスの説明と音声設定の初期化だけするから、あとは、その説明をきいてもわからないなら、あきらめてください」
と何故か冷たくいわれた。
その場で説明をきくと、このスマートウォッチは、時計部分はソーラーで充電二時間、時計機能など通常表示には問題なく使える。
時計をスリープすると、音声から起動か、タップ回数かで選べる。
これには音声起動にして、設定してもらう。
起動は音声に設定のため、元の音声部分を初期化したためデバイスの名前だけ話せば応答するらしい。
持ち帰ってから、名前登録をすると、いいらしい。
時計型デバイスは、本来、本体からそのまま通信利用、データ利用ができるが、スマホやパソコンや通信機能がある機器に近づいて、通信応答させ登録するとスマホも利用できるようになる。
だから本当の使いかたとしては、その時計デバイスの一つで大抵はすむらしい。
音楽も聴けるし、通話もイヤホンと繋いで使える、表示も時計表示から切り替えすると、時計文字部分がタッチスクリーンとなっている。
「これどうやって使うの」
ときくと、いまの流行りの使い方は、ゲームミュージックを流しながら、スクリーンをONにしてスクリーン表示された通信ゲームを対戦したり、電車などでタッチして改札を通って、無人店舗で買いものしたり、寝る寸前まで通信相手と雑談してすごす、ことらしい。
いつの間にスマートフォンやスマートウォッチは、これほど、高機能になっていたのだろうか。
疑問ではあるが、とにかく説明をきいていた。
「何故錆びいりで、壊れかけに見えるのに、そんな高機能で利用できるの」
ときくと、
「やはり、あまり知らないみたいだね。デバイスの修理にこれからもお店使ってくれるなら、指輪型デバイススクリーンを格安で売るよ」
といわれて、指輪型デバイススクリーンを何故か買ってしまった。
指輪の設定の仕方と、簡単な説明をされる。
DTという表示もあり、少し操作をしてしまう。
何の項目だろう。
結果的には、お店をでても何一つよくはわからないが、とりあえずソーラーで充電しながら、錆びに我慢して少し使ってみるかと思い、帰ることになった。
データ利用も時計に設定して利用すれば、できるといわれたが、誰の利用料金に請求されるかわからないため、有効端末を自身のスマホ利用にきりかえてもらえた。
ただし、切り替えのできない機能はある。
それは、そのままで大丈夫そうといわれた。
変わったことが起こり始めたのが、次の日。
錆びに我慢しながら、腕時計を操作し、無線イヤホンから音楽をきいたり、まだ誰も手にしたことないような、指輪スクリーンを起動して、空中に表示させて、得意になっていたところ。
不意に電車で移動した先にいた女性が錆びついたネックレスをしているのに気がついた。
いままでは、そんなものには興味がわかなかったけれど、昨日訪れたダスト屋の話しを思い出し、もしかしたら、ダストテンダーを利用して買ったものではないかとふと思う。
しかし、異様なのはそれではなかった。
その女性と降りる駅が一緒になり階段を下りていき、下りた先の角を回った瞬間、黒いサークルが発生し、その女性はそのなかに入って消えてしまった。
ここにきて、一つの確信をもつことになった。
ダスト屋と消えていくひとと、サークルには何か関係あるのだろう。
そして、それは、すぐにわかることになった。
そのまま自分も歩いていき、その女性が消えてしまったふきんに近づいた瞬間、自分の周りにだけサークルゲートが出現し、あっという間に周りの風景が変わってしまった。
バシバシッと音がして、景色が入れ替わる。
足もとが歪む。
めまい。
意識が瞬間的にとぶ。
なんだこれ。
「うう……もう、何なの」
気づいたら知らない景色、かと思うと、先ほどの駅であることは間違いないようだ。
ただ周りにひとはほとんどいない。
一度、近くのベンチに腰かけて落ち着きを取り戻してみる。
ここは先ほどの駅の場所であることはたしか、だろう。
先ほどの女性はもういない。
パッと時計をみる。
時計は通常のように時をきざみ、先ほどから一分と経っていない時刻。
けれど、時計の錆びだけが少し進んでいるような感じがする。
とにかく電車から降りた駅なのだから、と出口から、外の道路へとでてみる。
駅出口にある時計をみると時間は、腕時計と同じ時間をさしている。
どうやら腕時計が壊れているわけでもない。
なにやらわからないため、とりあえず近くのコンビニにより、飲みものでも買ってみよう、と思い歩きだす。
道のりでも変化はない。
思い過ごしで、前を歩いていた女性を見うしなっただけかも。
コンビニで飲みものをとり、お会計を時計デバイスから、タッチですませて外にでる。
飲みものを飲む前に、レシートをみた。
日付が一日違っている。
この日付は明日の日付だ。
レジが故障しているのか、レジ打ちを間違えたのか。
レシートをしまいこみ、外で飲みものを飲む。
そして、腕時計をみてその表示を何気なくスクロールして日付表示にしてみると、明日の日付がでている。
頭が、飲みものを飲みながらも、時計とレシートとを判別できないほどに混乱してきた。
「えっ何どういうこと」
一体、どういうことだろう。
腕時計が壊れてしまったのか。
もう一度、コンビニに入り、新聞を手にとってようやく実感がわいてきた。
今日の日付のはずが、明日の日付の新聞になっていた。
つまり、日付はあっているのだ。
間違いない、自分が明日に移動してしまったのだ。
思わず先ほどのレジにいき、混乱したままきいてしまう。
「今日の日付ってこの新聞のであってますか」
「もちろん、今日の朝刊です。どうしましたか?」
それには答えないままフラりとコンビニをでて、立ち止まり、冷静になろうとするが、どうにもうまくいかない。
飲みものを飲み、ゴミ箱にいれる。
もう一度、レシートをみる。
みると、財布の中にレシートはコンビニのものともう一つ……
ダストテンダーのレシートだ。
たしか指輪を買ったときのもの。
誰かに話しをきいてもらおうと思い、そして、あのイケメン店員にきくしかないような気持ちがして、あのイケメンに会いにいくために、再び歩いていく。




