まだ話していないこと
夢をみていた。
ネックレスとブレスレットをした女性がいる。
セミロングの髪で、ワンピースの格好だ。
その女性が何か言った。
「記憶をとり戻させて、お願い」
「カラトさん」
「妖精は、いるよ」
記憶……記憶って、何のこと。
カラトさんを呼んでる。
夢から目が覚めた。
「うーん」
「おはよう、いや、もうこんばんはだね」
わたしはのそっと、頭を持ちあげる。
両腕がしびれている。
「痛、腕しびれた」
「けっこう寝ていたね。目が覚めたなら、紅茶でも入れなおそう」
「ありがとうございます」
「いま、夢みてました」
店長が椅子から、立ち上がり、紅茶を入れなおす間に話しをする。
「どんなのだろう」
「ネックレスとブレスレットをした女性がいて、妖精と、それとカラトさん記憶がって……」
ガチャン。
びくっとして、店長のほうを見ると、びっくりした顔をしている。
どうやら、紅茶をいれるカップを台所シンクに、ぶつけてしまったらしい。
「あの……」
「ごめん。びっくりした」
「夢の内容にですか?」
少しの間、店長はだまっている。
そして、口を開いた。
「話したほうが、よさそうだね」
「何のことでしょうか」
紅茶を入れたカップをテーブルにおいてくれる。
「時間移動について、まだ話してないことがあって」
「えーと、エラーのこと?」
「違うね」
「連続して繰り返すと、記憶が曖昧になる」
「もっというと移動エラーと重なると、記憶障害がおこりやすくなり、時間記憶や人物記憶がわからなくなるんだ。そういう、事故が起こったことがある」
「そうなのですか!?」
これには、驚きだ。
「あと、その事故はテンダーもあった。自分のことだよ」
さらに、マユは驚いてしまう。
「そうなんですね」
「もしかしたら、前に調査を担当していた、前任のひとですか」
「そう。その彼女は、行方しれずなんだ」
「あの公園サークルに入り、途中から連絡できなくなった。君が自動メッセージを受信したのには、驚いた」
「試したときには、なにも起きなかったから。もう何度もあの公園には、いっているんだよ」
「そう」
今度は、わたしがだまっている。
「ごめん。危険だといったのに、話ししていなくて」
「もしかしたら、話しするのが怖かったのかもしれないね」
マユはだまったまま考えてみる。
カラトさんが話しをしなかったのは、余計に不安にさせないためだろう。
でも、記憶なんて。
カラトさんはそれで調査をしているのかな。
いろんな考えがでてくる。
夢でみたことで、こんなに動揺するとは思わなかった。
時間移動と夢にも、何か関わりがあるのか。
いや、気のせいなのかもしれない。
そういえば、以前妖精の夢をみたような、そんな気がする。
「今日は、店を閉店したから、明日にするかい」
「いえ、いまきかせてください。聴きたいです」
「わかった。自分のも紅茶を入れよう」
また立ち上がり、店長は自分の分も暖かい紅茶を入れる。
台所から、戻る間、わたしも紅茶を飲む。
まだ少し熱い。
紅茶をテーブルにおいて、店長も座る。
「いまから、一年前に一年間ほどここで雇っていた」
それから、話しが始まる。
前任者で、いまは行方しれずな、彼女の話し。




