店長に報告
ひどい目眩、空間の歪みはもう判別できない。
倒れこむ。
「ここは」
公園のベンチだ。
マユは少しの間、気を落ち着かせる。
トケルンを恐るおそるみる。
DT00の文字だ。
無事現代の7月9日に戻れたらしい。
「よかったぁ!」
けれど、トケルンの表示に、エラーではない何かが点滅している。
トケルンに表示されているメッセージをみようと、タップする。
どうやら、今回移動に複数回使った指輪二号が思ったより、錆びているようだ。
そうか、過負荷のメッセージかも。
「もってくれてよかった」
「ふぅ」
ひとりため息をつく。
無事に戻れたから、店長に報告しよう。
ナガランのスクリーンをみながら、カラトの項目を探して、トケルンをタップして電話をかける。
電話は、トケルンをマイク機能にすれば、音声スピーカー状態で話しができる。
「店長、戻れました」
「もしもし、よかった。危険にはならなかった」
「体調悪いです。少し休んでから、お店いきますね」
「わかった。ゆっくりね」
「通話おわり」
通話終了にする。
報告をするのに、今回のことは、どこまで説明しよう。
ここまで混乱するのなら、店長からもう少し説明がほしかった。
いや、こうなるかはわからないか。
近くに、たしかコンビニがあったはず。
コンビニまで、目眩をこらえながら、少しずつ歩いていく。
中にはいり、不安になりながら、余りの新聞を手にとる。
しっかりと、現時点の7月9日に戻れている。
「よかった」
コンビニをでて、ダストテンダーまでの道のりをいく。
今日移動しながら、何度も出入りした看板のある風景。
しかし、この時間に戻れたのが、こんなに安心するとは、思わなかった。
お店に入る。
「店長、ただいま。帰りました」
カウンターから声をかけてくれる。
「おかえり。ごめん。説明が足りなかったのかもしれないね。いまの気分はどう」
「ひどい頭痛ですが、目眩は収まりました」
「移動を繰り返すと、時間酔いが起こるから、特に頭痛がひどくなるよね」
「早くに言ってください」
「ごめん」
「公園で電話受けとれて、よかった」
「でも、どうして、現時点の店長が電話にでられたのですか?」
「そうだね。それは、きみの前に先に移動をして、公園にいたからになるかな」
「つまり、いまから三年前に、先に移動をしていたから、いまの記憶のある自分がその場にいたんだよ」
「でも、移動した時間がはずれていたら、きっと電話も不審に思ってただろう。ムズカシイ駆け引きになったね。でもありがとう」
「これで、調査おしまいですか。終わりにする前にきいてほしいことが」
「何だい」
「公園から移動した日付で、メッセージを受けとりました。みましたか」
「いや、メッセージは受けとれなかった。どういうもの」
「戻れない。ごめんっていう感じです」
「そうか」
そういうと、店長は黙りこんでしまう。
「あとのこと任せて、休憩してていいですか」
すると
「わかった。ゆっくり休憩してきて。紅茶でも飲んでいてよ」
「わかりました。休憩いってきます」
休憩室となる、お店の裏がわに移動する。
椅子に座りこみ。
「はー、大変」
ひとりつぶやく。
思っていたよりも、時間酔いがひどくなるらしい。
毎回これをするのは、大変だ。
でもメッセージを読みとれたのは、わたしでよかった。
店長は受けとれなかったみたいだから、受けとれてよかった。
「そうだ」
指輪二号がエラー、というか疲労がすごいみたい、あとで確認してもらわなくては。
そう思いながら、椅子に座っていて、机に入れた紅茶を飲んでいたら、眠気におそわれてしまい、気づく間もなく、いつの間にかテーブルに腕をのせて枕にしながら、眠ってしまっていた。




