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過去一年前から戻れない

  深呼吸をして、現状を把握(はあく)しようと、まずは、公園近くにある自販機で飲みものを購入する。

 購入したアイスティーで、薬を飲むことにする。


 持ち歩いている頭痛薬だ。


 ベンチに戻りつつ、アイスティーで薬を飲む。

 ただ、薬を飲み落ちついてみると、ふと、何故メッセージはベンチふきんにだけなんだろう。


 どういうことか、と疑問に思う。

 試しにベンチを少し調べてみる。

 すると、ベンチ裏かわに何か貼りついてみえる。

 腕を伸ばして、それをはがす。


「ナガランみたい」


 どうやら、ナガランのような指輪にみえる。

 持ち帰ろうか。

 しかし、時間移動に関わるかもしれない。

 また、丁寧に貼りつけておこう。


 しかし、もう古い指輪だ。

 そのうち錆びていき、直に消えてしまうかもしれない。


 ここが過去一年前だとすると、またこの公園サークルに入ってしまうのは、正しい判断だろうか。

 さらに過去に飛ばされたりはしないか。


 謎のメッセージの文面から、この事象が店長とつながっているとは、飛躍しすぎかもしれない、とも考えてみる。

 けれど、冷静に行動するには、一年前の店長に会うしか方法はないか。

 しかしこれも、一年前であることを考えてみると、会ったこともないひとに、いきなり店長、と呼びかけられることに、不審を抱かれるかもしれない。


 もう一度トケルンをみる。


 タップして、表示や機能に問題はなさそうで、指輪二号も壊れてはいない。

 指輪の錆びが増えただけだ。

 公園サークルは利用しないで、駅出口にあるサークルから、DT00時間まで戻るほうが適切かもしれない。

 そう考えて、駅まで移動することにする。

 ここから、三十分ほど歩きだ。



 (から)の容器をゴミ箱にすてて、移動する。

 移動しながらトケルンをみると、自動メッセージはすでに消えている。


 けれど、文面は覚えている。

 戻れないが、ケガをして戻れないのか、それともやはり時間移動に関係しているのか、不安になる。

 やはり、ダストテンダーに向かうべきだろうか。

 けれど、無理をしたあとで何か起こるのが、怖い。

 怖さが勝ってしまい、駅までの移動を選ぶ。



 三十分かけて、近くの駅まで移動した。

 トケルンの設定をDT00に設定し、さぁと、駅出口にあるサークルに飛び込む。


 バシバシッ。

 音と光。

 目眩や立ちくらみ。

 空間が歪み、意識がとぶ。



 駅で倒れこみ、ベンチによりかかったようだ。

 ここまでくると、目眩ではなくて、息ぎれもしている。

 ふーっと息を整えていき


「落ち着け」


 と自分にいってみる。

 トケルンをみる。

 またしてもエラーの表示がでる。

 点滅して、次に映ったのはDBT01の表示だ。

 設定した00時間に戻れていない。


「はー」


 ため息をついて、そして


「どうしよう」


 と思う。

 何が起こったのか、どうするか。

 とにかく、この一年前から移動できなくなってしまった。

 頭痛が、さらにひどくなる。

 さっき薬を飲んだばかりだからか、あまり効かない。



 しかし、考えても頼りにできるのは店長だけだ。

 移動する前に、店長に電話をかけてみようか。

 けれど、どうしても店長の顔が見たくなり、ダルい身体を起こして、十五分の道程(みちのり)を歩く。

 ここからなら、お店は十五分だ。



 十五分後、ダストテンダーと書かれた看板の前につく。

 迷わずに扉を開けようとする。

 しかし、扉は開かなかった。

 思わず扉に背をつけて、座りこむ。


「そんな、カラトさんどこいるのよ」

「カギとか、先にきいておけばよかった」


 ひとりごとになってしまう。

 もしかしたら、繋がらないのでは、という恐怖もあるがトケルンから、カラトのメモリを呼びだして、店長に電話をかける。


「カラトさん繋がって……」

「……もし」

「繋がった。よかった」

「店長わたし、その」


 慌ててしまう。


「この電話はきみだね」

「えと、わたし、一年後にあなたに雇われて」


 説明しようとすると


「いや、事情はわかるよ。2x21年の時間の店長だよ」

「何故? ここは、一年前なのに」

「先に、ここについていたのは、こちらが先だよ」

「でも、ギリギリだね、今は公園のサークルに入るところだったんだ」

「何……どういうことなの」

「そうか、説明がなかったね。過去時間にいる間は、その時間の自分と行動が重なる。けれど、記憶が上書きされるから、その時点で未来の記憶になるんだよ。けれど、サークルに入ると、元に戻るだろう」

「未来からの自身が消えてしまうと、記憶だけになるからね。それで、まだ指輪は稼働できるかい」

「みてみます。うん、大丈夫そう」

「そしたら、約束があるから、先に戻るけれど、きみも順番にとんでくれ。おそらく、三年前まで戻ると、あとは自然と元に戻るはず」


 ここで、通話がきれてしまう。

 納得できたわけではない。

 けれど、店長のあとを追いかけるように、三十分かけて公園に戻る。



 公園サークルからDBT03に設定して、思いきって飛び込む。



 バシバシッ。

 音と光のうず。

 目眩、熱、空間の歪み、ひどいものだ。



 気を失って、目を覚ましてみると、公園のベンチだ。

 しばらく動けない。

 頭痛がひどくなっている。


「これでは、もう一回が限度だよ」


 トケルンをみると、エラーにはならずに、無事にDBT03になっている。


「はー、きつい」


 でも、エラーでないなら、次には元に戻るはず。

 少し気を落ち着かせてみる。

 電話をかけてみようか。

 けれど、もう先にカラトさんは移動をしているかも。

 信じて、次の移動をしてみよう。



 周りにひとがいなくなるのを少し待ち、そして、トケルンを再度、DT00に設定した。


「トケルン、お願いね」


 そして、公園サークルに飛び込んだ。

 バシバシッと、光と音のうずに巻き込まれていく。

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